第3話 バスケ部のワイバーンは人気者!③
「空知くん!
試合終わったよ!」
「うん……」
最強チームの完敗に、凍り付く客席。
呆然としたまま席から立てない空知を、
煌の目から見る空知の顔は、放心状態だ。
「ほら、立ち上がろうよ。
チームの作戦がうまくいかなかったんだから、勝てなくて当然だよ」
「
「バスケのこと、何も知らないけど、それでも思ったよ。
勇斗先輩に、全てを任せすぎ……」
煌は、そこで言葉を止めた。
横目に見えたコートで、勇斗が風間を睨みつけ、ユニフォームを掴んで
「空知くん。
マジで喧嘩になりそうだよ!」
「最後、勇斗先輩がブチ切れたからね。
点数が離れていって、どんどんストレスが溜まっていったんじゃない?」
「第3クォーターまで何があったか、俺たちは見てないけどさ。
それでも、チームメートに八つ当たりするのはおかしいと思う」
「神門くんの言う通り……」
喧嘩になりそうだった二人が、顧問の安東に手招きされ、コートから退く。
それでも、2年の勇斗の目は、3年の風間を高いところから見下ろしていた。
「勇斗先輩は、バスケの腕はすごいのに、どうしてあんなこと言うんだろう。
俺に対しても、バスケ部を諦めろって言うくらいだし……」
「勇斗先輩だけが強すぎるっていうのもあるのかな」
「やっぱり、レベルの差か……。
こんなギクシャクしたチームじゃ、いつか本当にバラバラになっちゃうかも知れない。
俺、チームにそう言いたいよ」
煌のため息が、アリーナの中を駆け巡る。
「ほとんど経験のない神門くんが言ったって、笑われるだけだよ」
「だよな……」
ようやく空知も席を立ち、二人はアリーナ席の出口へと向かう。
空知が何か考えるしぐさを浮かべて、それから首を横に振った。
「本当は今日、神門くんに相談したいことがあったんだけど……。
なんか、それどころじゃなくなった。
僕はバスケ部に入るけど、先が心配だよ」
「勇斗先輩に憧れがあったもんな……。
相談事だったら、俺、いつでも聞くから!」
「神門くん……」
煌は、空知の目的を考え始めたとき、バッグに入っていたスマホが鳴った。
秋葉から、個別のLINEメッセージだ。
「なんだろう。
俺に何か用があるのか?」
名前をタップした煌は、メッセージと画像を見た瞬間に息を飲み込んだ。
「マジかよ……!」
煌は、すぐさまバッグの中に手を突っ込み、ミラーストーンを探す。
「どうしたの、神門くん」
「俺がいない間に、領家の河川敷で巨大ユニコーンが暴れ出したんだ。
たぶん、バフォメット……、という悪のアカウントの仕業。
俺、戦うから。ごめん、先に帰ってて」
「分かった……。
今度は、僕がバーニングカイザーを応援する番だね!」
「ありがとう」
空知に肩を叩かれた煌は、日の当たる場所を目で探す。
だが、ガラスのあるほうは、ちょうど日陰だ。
煌は、観客の流れをかいくぐりながら階段を駆け降り、外に飛び出した。
そこで、ミラーストーンを高くかざす。
「アルターソウル、
ミラーストーンが眩しい光に包まれ、その光に向かって煌が叫ぶ。
「バーニングカイザー! ゴオオオオオオ・ファイアアアアアアア!!!!」
ミラーストーンの眩しい光が反射した方向へ、煌の体が吸い込まれた。
光の中から、バーニングカイザーのシルエットが現れ、煌の目の前に迫る。
その胸に描かれた炎のエンブレムに、煌の体が正面から衝突。
同時に、金属のようなものに体が突き上げられた。
「ソウルアップ・コンプリート!」
熱き心を胸に燃やし 輝く炎のエンブレム
拳に勇気の火を
燃え上がるは正義の魂 炎の皇帝、ここに立つ!
「灼熱の勇者、バーニングカイザー!」
上下に弾けた光に誘われ、河川敷に降り立ったバーニングカイザー。
ユニコーンに、早くも右の手のひらを向ける。
「俺のいない間に、街を襲うなんて許さない!」
「フッ……。
河川敷にいる人間どもを串刺しにする前に、察して現れるとは、さすがはバーニングカイザー。
だが、お前でさえも、このスクリューユニコーンが角で全てを破壊する!」
先の鋭い角をドリルのように回し始める、スクリューユニコーン。
河川敷に高い音を響かせながら、バーニングカイザーに突進する。
「フレイム……、フィンガアアアアアアア!」
スクリューユニコーンの動きを止めようと、両手に炎を燃やすバーニングカイザー。
だが、相手は全く怯まない。
回転する角を正面に向け、炎のエンブレム目がけてジャンプ!
「まともに受けたら、手がぶっ飛ぶ!」
飛びかかってきたスクリューユニコーンを、バーニングカイザーがひらりと交わし、後ろに追いやる。
スクリューユニコーンが、すぐに体の向きを変え、再び飛びかかってきた。
これまでの相手のように、手で直接焼くのは厳しそうだ。
「くっ!」
スクリューユニコーンの突進を再びかわし、すぐに体の向きを翻すバーニングカイザー。
すぐさま両肩に力を入れ、両肩に刻まれた三つの発射口を熱く燃やす!
「フレイム……、バスタアアアアアアア!」
体の向きを変えるスクリューユニコーンに、一気に襲いかかる火炎砲。
走り出したスクリューユニコーンの背に炎が直撃する。
体を震わせ、スクリューユニコーンが一旦遠ざかった。
「とどめだ!」
燃え上がる右手を前に伸ばし、指を軽く丸めたバーニングカイザー。
勇者の力の証を呼ぶ煌の声が、空気を裂く!
「バーニングソード! ブレイズアップ!」
バーニングカイザーの左腕を覆う、先の尖った四重の装甲、そして金色の
格納された柄とともに、肩から前に押し出される。
四重の装甲が、燃え上がるように1段1段前に伸び、1本の長い剣が出現。
カーブを描きながら、柄がバーニングカイザーの右手に吸い込まれ、炎に満ちたその手でがっしりと掴む。
「燃え上がれえええええええ!」
手に宿った熱で、鍔から上がる激しい炎。
あっという間に、バーニングソードのブレードを炎で包みこんだ。
だが、スクリューユニコーンが、鋭い角の回転をさらに速めていく。
「そんな剣など、角で斬り裂いてやる!」
剣先を高く伸ばしたバーニングソードに向かって、スクリューユニコーンが一気にジャンプ。
炎の剣と、鋭い角が、空中で音を立てて交錯する。
ガリガリガリ……と重い音が両者の間に響く。
「バーニングソードが……、削られていく!」
炎で熱くなっているとは言え、スクリューユニコーンの角は熱さを気にしない。
バーニングカイザーが、いったん剣を角から離した。
「うおおおおおお!」
勢いをつけて、スクリューユニコーンの角に剣をぶつけるバーニングカイザー。
今度は、相手の角を右へ押しやる。
そして、左手も柄を掴み、バーニングソードの火力を一気に上げる!
「バースト……、ブレイカアアアアアアアアア!」
力強い叫びとともに現れる、バーニングソードの最大火力!
両手でがっしりと構えたバーニングカイザーが、再び襲いかかってきたスクリューユニコーンの体に振り下ろした!
「グアアアアア!」
斬り裂かれた体に、一気に火が回る。
そして、激しい爆音を立てて、スクリューユニコーンの体が砕け散った!
爆発した相手を前に、バーニングカイザーが剣先をかざす。
剣の炎は、まだ燃え上がっていた。
「……って、バーニングソード、削られたけど大丈夫かな。
一番強い武器なのに……」
そう言い残し、熱き勇者は河川敷から姿を消した。
~~~~~~~~
白い光が煌の前から姿を消えた瞬間、バスケ部の黄色のユニフォームが煌の顔面に直撃した。
「え……?」
煌は、思わず後ろにジャンプしたが、今度は別の部員の体に背中が当たる。
煌が振り向いた瞬間、一番後ろにいた勇斗と目が合った。
「す……、すいません!」
バスケ部のミーティング中のようだ。
煌は、一目散に輪から逃げ出す。
だが、安東の声が、煌の足さえも止めた。
「というわけで、
君は、バスケ部のレギュラーから外れてもらいます。
ただ、君に憧れる新入生が多数いる以上、退部は認めません」
「じゃあ、どうしろって言うんだ!」
煌が勇斗の声に振り向く。
勇斗の顔は試合のとき以上に殺気立っていた。
「どうすればレギュラーに戻れるか、考えて下さい。
私は、君のバスケの才能まで否定しているわけではありません」
「こんな、実力のない連中ばっかり集まった部なんて……!」
背後から次々と聞こえる声。
体が震え、足も
「勇斗先輩のいないチームなんてあり得ない……」
~~~~~~~~
【今週のアルターソウル】
スクリューユニコーン
バフォメットによって放たれたユニコーン。
煌の外出を見計らって、領家の街を襲った。
回転する角でなりふり構わず相手を攻撃するのが得意。その強さは、金属をも削るほど凄まじい。
【次回予告】
俺、伴 勇斗。
俺に、ワイバーンのアルターソウルが宿っていると言われた。
本物のワイバーンにソウルアップすること。
それは、バスケ部のレギュラーを外された俺がいまできる、最前線の戦いだ。
次回、灼熱の勇者バーニングカイザー。
「
今度こそ、俺の力を認めて欲しい……!
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