第14話 唐突な静けさが私を包む。
シューベルトは、レイカのことを見つめる。
「……あいつらは、たぶんこの戦いで僕に死んでほしいと思っているんじゃないかな? ホント、怖いねぇ……」
彼女は自らの拳を握りしめた。
「シューベルト様、どうして彼らに従うんですか……? 」
「……そりゃあ、今から来るであろう使者を殺すことなんて簡単にできるよ。でも、それじゃあストーリック王国に戦いの勝利は訪れない。あくまで僕は、この国を救うために何もかも犠牲にしてきたのだから」
彼は、少し長い灰色のコートを着てレイカに歩み寄った。
「……レイカちゃんは、何も関係ないよ。前にも言ったけど、軍の司令官として提言をしたのは僕だから。君じゃない」
彼女の顔には、影がかかっている。
「…………シューベルト様の持っていく食料品の準備をしてきます」
そういって彼女は足早に去っていった。
その後ろ姿を、シューベルトは黙って見つめる。
「これは、定められた運命だったのかな……」
小さな彼の声が、誰かに届くことはなかった。
「お前がバルレック・シューベルト司令官であっているな、この城の周りの状況はどうゆうことなんだ、説明してくれ」
カセルダーンが派遣した『使いの者』が、彼に聞く。
心底つまらなそうなシューベルトは、そっけなく言った。
「…………軍の本部に出した手紙に書いてあるので。手間が増えます」
明らかに顔がしかまっていたが、その『使いの者』である数人は何も言わずに馬車に彼を載せようとする。
その瞬間、彼はレイカの方に小走りで向かった。
「……シューベルト様、本当にいいのですか? 」
彼は、何も言わずにレイカの手に紙切れを渡す。
「…………僕は、君のもとへ戻ってくるから。その時は、お茶会でもしよう」
シューベルトは彼女に向かった笑う。
しかし、レイカが視線をあげることはなかった。
彼は数人に連れられながら、馬車に乗る。
カーテンは閉められ、レイカが窓越しに彼の顔を見ることはできなかった。
レイカが立ち尽くしていると、あっというまに『使いの者』はいくつかの馬車に乗り込み、転がる死体と最悪な状況の道を避けながら森を抜けていった。
彼女はもう見えなくなった馬車に深くお辞儀をしながら、先程シューベルトが渡した手紙を強く握る。
そこには、こう書かれていた。
レイカちゃんには、謝らなくちゃいけないね。
君の命さえも危険にさらしてしまったから。
あのとき、世界を敵に回した僕のメイドをしてくれて、ありがとう。
この城は色々と危ないから、僕が所有しているアパートを仮住まいにしてね。
セリンヴァ路地の452番地、ホルメンアパートの003号室。
そこで、待っていてほしい。
必ず、僕が会いに行くから。
絶対に。 シューベルトより
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