第4話 上層部の、楽しい会議。

 重々しい雰囲気の中、会議は幕を開けた。

「しきたりということで、改めてわれのことを紹介させてもらおう。ストーリック王国軍最高司令官のカセルダーンだ。ここでは、先程も言ったように今後の軍の対応について話し合わなくてはいけない」

彼の実年齢こそ知らないが、やはり最年長のようでなんともいえない気配を感じさせる。しかし、シューベルトはまるで気にする様子もなく、後ろに鎮座している国旗を眺めていた。

「まず、二つの魔術を使用できる魔術師についてだ。意見があるものは手をあげよ」

我先にと手をあげるものはいなかった。ここにいる者は、ほとんどが慌ただしい現場での勘違いだと考えているようだ。

「あ、ちょっといいですか。僕、言いたいことがあるんですけど……」

あからさまな舌打ちが複数聞こえたが、彼は上げた右手をさげなかった。

「……言いなさい」

カセルダーンは、あくまで表情を変えずに彼を目線で指名した。

「はい、えっとですね〜今回の魔術が二つ使えるかもしれない、という報告書に関しては真実だと捉えていいかと。現場の混乱で嘘を書いていたと考える方もいるかもしれませんが、これは複数の軍隊員が書いてるものですし、可能性的には低いと思います」

そこまで言ったところで、円卓を囲む一人が言った。

「笑わせてくれるな。魔術が二つ使えるなんて、伝説上の話をここでするのか? 」

シューベルトは、口角の端をあげた。

「そんなそんな、伝説じゃあありませんよ。マスティック国は、この国と比べても他の国を比べても科学技術が異常なほどに発達している。、もしかしたらマスティック国で人体実験でもしていたのではないかと考えています」

会場がどよめいた。

しかし、そのどよめきの中には批判的な言葉がほとんどだ。

カセルダーンは静粛にするように呼びかけ、少しざわめきが小さくなったところでシューベルトは言葉を続けた。

「皆様は、覚えていらっしゃいますか? 約五年前の話にはなりますが、マスティック国から流れるグルスタン川で複数の変死体が見つかった事件です。当時は巷を騒がせましたが、そのまま事件自体が風化していってしまいました」

この場にいる多くの人は、眉がしかまったまま彼を睨んでいる。

「こちら側で死体の調査をしたところ、全員がいわゆる『低級魔術師』でした。手の紋章がまだ完全ではなかったと、当時の調査票に書かれています。また、その死体について人体実験をしていたであろう痕跡も見つかっています」

まあ、これは極秘文書ですから情報は一般の人におおやけになってはいませんが……と言ってから、彼はカセルダーンを見つめた。

「言いたいことは分かりますよね? マスティック国は、国際魔術法に違反している可能性が極めて高いのです。国際魔術取締本部に電話で確認しましたので、間違いありませんよ」

場が静まり返った。

「私達の力だけで人体実験が行われていることを証明することは極めて難しいですが、マスティック国は今日に至るまでかなりの敵をつくってきました。国際魔術取締本部長は、現在我が国と友好関係にあるスミラー島の出身ですから、国への対処をお願いすれば快く引き受けてくれるでしょう」

話を聞いていた誰かが言った。

「……ではどうするんだ? 仮にお前の言っていることが正しいとして、二つの魔術が使える魔術師とどうやって戦うんだ! 」

そうですね……と言いかけたところで、カセルダーンはシューベルトを制止する。

「最近復帰した、『地』の高度魔術を使用する者を複数派遣し、戦わせよう。マスティック国の社会的制裁は逃れなれないのだから、それまでの辛抱じゃ」

周りの物は、彼の言葉に動揺した。

「……しかし、こいつの言っていることが正しいとは分からないのでは? 」

その時、黒服を着て端に立っていた男がカセルダーンに耳打ちをし、そしてゆっくりと先程の提言者の顔を指した。

「先程、国際魔術取締本部から電話があったようだ。この件について、迅速に対処する、らしい」


シューベルトは肘を机につき、両手を組んだ。

顔には微笑みだけが浮かんでいた。

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