第33話
「アレですね?ご主人様に毒が塗ってあるナイフを投げたのは」
ゴミを見るような目をして刺客を見ながら確認を取ってくるカレア。
「そうなんだけど、どうしよっかな…」
「どうしようとは?」
「いやさぁ、折角生け捕りしたんだけど。牢屋とかないし結局ここで処分するしかないかなと思ってさ」
カレアと喋る前まではこの後サンドバッグにでもしてやろうと思ってたけど。
今はそんな気1mmもないし、さっさと処分して開拓地に帰るか。
「あぁ、それなら開拓地にスレイさんが来ているので、スレイさんに引き渡せば良いと思います」
拷問にかけたところで重要な事を知っているとは思わないし、意味無いと思うけど。
スレイさんに後始末を丸投げするって意味ではありかもな。
「念の為、顔を確認しておくか」
「それでは私がアレを仰向けの状態にします」
刺客はうつ伏せの状態で倒れているし。仮面で顔を隠しているので。まだ顔を確認してなかったんだよね。
「……俺の事を確実に殺せる自信があったのか。まさかメイドとして働かせている女を刺客として送って来るか?普通」
カレアがうつ伏せに倒れている刺客を警戒しながら仰向けにして仮面を外すと、フィレーム家の屋敷で働くメイドの顔が現れた。
ある意味、大変お世話になったのでこの女の顔を忘れることはないので間違いない。
「はぁ。やな事思い出しちゃったよ」
この女には死なない程度の毒が入った料理を食べさせられたりしたからな。
今ここで復讐……はしなくていいや。
スレイさんに渡せばそれ相応の報いを受けることになるだろうし。
「じゃ、フェンリル。それ開拓地まで運んでスレイさんに渡しといて」
フェンリルを再召喚して刺客をスレイさんのところに運ぶようにお願いする。
先程の件はそこまで怒っていないようで普通に言うことを聞いてくれた。
スパイスカリブーの角を粉状に加工したスパイスを、それなりの量上げる事になってしまったけど。
元々スパイスカリブーを仕留めたのはフェンリルだしな。
「スレイさんが待ってる訳だし。俺達も急いで帰ろう」
カレアとクリスを奴隷から解放するのに、帰還の翼を使って王都に帰る時同行させて貰う必要があるし。そもそもスレイさんが開拓地に来た理由は俺に用が有るからだろうしね。
「残念ですが。ご主人様の言う通りですね」
何が残念なのかよく分からないけど。詳しく聞かない方がいい気がしたので追求せずに開拓地に向かって急いだ。
「シャン殿。この女はシャン殿に襲いかかって来た刺客何だろうなって予想はつきますが。しっかりと説明していただいてよろしいでしょうか?」
開拓地に戻ると挨拶をすっ飛ばして、フェンリルに運ばせた女について説明を求められた。
まぁ、仕方ないか。
念の為証拠品になるかなと思って拾って来た毒の塗ってあるナイフを見せながら、何があったのか一から説明した。
「成程。そのナイフも証拠品として預からせて頂きますね」
「お願いします。で、スレイさんはどんな御用でこんなところに?」
「1つは例の懐中時計をシャン殿渡しに。それともう1つ1級魔導師であるシャン殿に国王陛下から建国300年記念を祝う建国祭にて開催される闘技大会に出場せよとの命をお伝えする為です」
建国祭か。そう言えばそんなお祭りもあったね。
確か一ヶ月後ぐらいだったっけ開催日は。
「闘気使いの有利な闘技大会に出場しろですか……まぁ王命と有れば喜んで参加させて頂きますが」
闘技大会ってのは決められた舞台の上でお互い向かい合ってよーいドンで戦闘を始める。
当然、魔法使いは戦闘が始まる前に魔法陣を作成して。戦闘が始まった瞬間使用するなんてことは出来ない。
なので、魔法使い限定の闘技大会でもなければ基本魔法使いが闘技大会に出場する事はない。
いったいどんな意図があって魔法使いである俺を闘技大会に参加させるのか……
国王は俺に恥をかかせたいとか?
流石にそれは無いか。
どちらかと言うと、俺の実力を図る為か……
まぁ、国王の考えなんてどうでも良いや。
折角闘技大会に出場するなら目指せ優勝だな。
新しい魔法を色々開発しておかないとな。
「ちょうど王都に用事があったし。そのついでに闘技大会で優勝しちゃおう。って訳でカレア、クリス王都に行くよ」
「ご主人様、当然のように優勝するつもりなんですね」
「そりゃ当然。出場する以上目指すのは優勝だよ。簡単に優勝出来るとは思ってないけどね。そう言えばその闘技大会賭けって行なわれるんですか?」
「行われますが?」
「カレア。お金上げるから俺の優勝に一点掛けしよう。借金一気に返せるかもよ」
元々解放するつもりだったから俺が払っても良いんだけど。
自分たちで稼ぐ機会があるなら稼がせた方が俺に負い目を感じたりしなくて済むだろうし。
「優勝一点掛けなら倍率は相当高いでしょうね」
まぁ、魔法使いだからね。優勝するとは思われ無いだろう。
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