第30話
「師匠は簡単に新しい魔法を作るよな。難しいって言う割に」
熊の魔物を倒した魔法を見たクリスが呆れた表情で俺にそう言った。
「あっさりって言うけど。10年間の下地があるからこそだからね?」
10年間、魔法陣に関して独自に勉強してきたからこそ、こうやって魔法をいくつも作れてるんだ。
勉強も何もせずにポンと新しい魔法を作れている訳じゃない。
「そっかー」
まぁ、そう見えてしまうのも仕方ないと思うけど。
「さてと。熊も倒した事だし先に進もう」
俺たちの目的は粘土を採集することなので、何時までもここでのんびりしている訳には行かない。
この後も、魔物に襲撃されては返り討ちにすると言うのを繰り返しながら未開拓領域を歩く。
定期的にカレアが地面を掘って粘土層が無いか確認しているけど、今のところ当たりを引く事が出来ていない。
魔物の素材は集まっていくんだけどね。
スレイさんが1級魔導師である事を証明する懐中時計を持ってきた時に買い取ってもらおうかな。
「師匠!あれ!スパイスカリブー!角が色んな食材を何段階も美味しくするスパイスになるんだ」
立派な角の生えたトナカイを見てクリスが大声を上げる。
スパイスカリブーは直ぐに背を向けて逃げていく。
それにしても想像以上に速度が速い。
これは逃げられるかなと思った瞬間スパイスカリブーの胴体に氷柱が突き刺さる。
フェンリルの方を見るとドヤ顔をしていた。
「流石フェンリルだ」
そう言って頭を撫でて上げる。
神獣と言っても意外と人懐っこい所もあってフェンリルは撫でられるのが好きだったりする。
かと言って俺以外が撫でようとするとブチギレるけどね。
撫でられるのは好きだけど。認めた存在以外
に撫でられるのは嫌って訳だ。
「逃げに入ったスパイスカリブーを罠も無しに仕留めるのは凄い大変なのに。流石フェンリルだな」
クリスのテンションが物凄く高い。
「スパイスカリブーの角を使ったスパイスはそんなに美味しいの?」
「はい、ご主人様。料理にふりかけるだけでその料理の味を1段階上げてくれると言われる程です」
クリス程ではないけどカレアも楽しみにしている感じがする。
そうなると俺も楽しみになってきたな。
スパイスカリブーを〈影収納〉にしまう。
「ご主人様。あの地割れが起きてる場所。粘土層が有ります」
運のいい事は意外と重なるものらしい。
粘土層を発見したらしい。
〈影収納〉からシャベルと言うか鋤を人数分取り出して粘土の採集を始める。
結構な量が必要だからな。
今日中には必要な量を採集しきるのは無理だけど。出来るだけ採集していこう。
フェンリルに防衛を任せて必死に粘土を採集して暗くなる前に開拓地に帰還した。
「おう。おかえり。粘土は見つかったか?」
「ええ。見つかりましたよ。それにスパイスカリブーも仕留めましたよ」
「スパイスカリブーってまじかよ!」
疾風迅雷のメンバーからしても、そんな反応する程のものなのか、スパイスカリブーの角から作るスパイスってやつは。
「見かけるのも稀で逃げ足もかなり速いスパイスカリブーを仕留めるとは流石だな」
「まぁ、倒したのはフェンリルだけどね」
フェンリルがいなかったら確実に逃げられていただろう。
「後は、これとかこれも倒したけど。どんな使い道が有るか知ってたりする?」
アサシンオウルにマーダーベアー、フクロウと熊の魔物。名前だけはカレアから聞いたけど。何に使えるのかまでは知らないみたいだったからな。
「おぉ。中々ごつい魔物を仕留めて来たんだな。アサシンオウルはアレだ帰還の翼の素材になるぞ。他にも使い道はあるが一番高いのは帰還の翼だろうな。マーダーベアーは胆汁が薬の材料になったり毛皮。肉も下処理は大変だが食用にもなる。ほとんどの部位が素材や食料として使い道がある」
なるほどね。アサシンオウルが予想通り帰還の翼の素材として使えるのは嬉しい。
スパイスカリブーの角から作ったスパイスを今晩から使いたいと言う事で角をノコギリを使って切り落とす。
切り落とした角をハンマーである程度砕いだら、すりこぎとすり鉢を使って更に細かくする。
粉からスパイシーな匂いとかはしてこないんだけど……ホントに料理を絶品にしてくれる
スパイスになるのかな?
俺以外の人達が言うにはお湯に入れるだけでも美味しいスープになるって話だけど。
俺に嘘をつく理由がないし嘘じゃ無いんだろうけど。料理に使えば分かることか。
角がしっかりと粉になったら、それを持って竈のある場所に向かう。
既に料理を始めている筈だからな。
たどり着くと、野菜と肉がたっぷり入ったスープが作られている。
塩で最低限の味付けはされているみたいで開拓地で出てくる料理としては既に上等なものだと俺は思うけど。
みんなが楽しみにしているスパイスカリブー
角から作ったスパイス。
いったいどれ程のものなのか実力を見せて貰おうじゃないか。
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