第29話

「なるほど。質は下がるけど、粘土を混ぜてかさ増しするのか」


「粘土5、ストーンアント4、水1、これが質と量のバランスが1番良いと言われている比率だな」


と言う事らしい。足りないなら混ぜ物をして増やすのは確かに有効だよな。

なんでも混ぜ物をすれば良いって話しじゃ無いけどね。


ーーー次の日ーーー


今日はストーンアントの解体する組と粘土を採集する組、木材加工をする組で別れて作業する。


〈影収納〉を所持している俺は確定で粘土組なので、粘土組は俺、カレア、クリスの3人だ。当然フェンリルも着いてきてくれる。


川沿いでも見つかりそうだけど。ここら辺はどちらかと言うと上流側だし山の方に向かって歩いて行こう。


どんなのが粘土なのかとか俺には判断出来ないけど。カレアは黒狼族の集落で暮らしていた時は陶磁器を作る為の粘土採集を何度か手伝った事が有るみたいなので、今回はカレアが頼りだ。


「今回は開拓地周辺よりは魔力濃度が高い場所に向かうから。注意しないと」


開拓地周辺ではゴブリンとか魔猪等かなり弱い部類の魔物しか出現しないけど。


粘土探しの為に向かうポイントは開拓地周辺より魔力濃度が高い場所なので、今まで戦った魔物より強い魔物が出現するので注意が必要だ。


フェンリルがいるから心配する必要はないっちゃ無いけど。


「はい!ですが。ご主人様は私が守りますので、ご心配なさらず」


カレアは朝からハイテンションだな。


まぁ、俺自身も戦えない訳じゃ無いけど。カレアやフェンリルみたいな索敵能力は持ってないからな。


俺一人で森に入って行ったら、魔物とか気性の荒い野生生物に不意打ちされると思う。

魔法が使えると言っても防御力は普通の人間。

不意打ち何て食らったら一撃で死んじゃうだろうし。

なるべく一人で森には入っていかないようにしないと。


鍛えれば多少は索敵能力を上げられるんだろうけど。

鍛えたところで人間の俺より五感が優れているカレアとフェンリルレベルまで索敵能力を鍛えるのは無理だろうし。そこまでやる気にならないんだよね。


なんか索敵用の魔法でも考えてみようかな。

魂を可視化する感じにすれば生物を感知する事は出来そうだし何とかなるかな。


〈影の狼王〉〈影の蛇王〉で魂を意味するルーン文字の組み合わせは分かっているからな。

魂に直接何かするような魔法を作ろうとしたら物凄く難易度が高いだろうけど。可視化する程度だったら幾らか難易度は下がるだろう。


「ご主人様大丈夫ですか?」


「あ〜ゴメンゴメン。ちょっと考え事してた」


粘土が直ぐに見つかるとも限らないので、あんまりのんびりしている時間も無いからな。


探知魔法については一旦忘れて、粘土が有りそうとアタリをつけた場所に向かって移動を始めた。


「ご主人様、止まって下さい」


カレアに止まれと言われたので止まると、俺の目の前を黒い影が高速で横切る。

全く音がしなかったぞ?

やっぱり俺一人でこの未開拓領域を歩くのは危ないな。

黒い影が通った高さ的にカレアに止められて無ければ、首チョンパされてたはず。


「成程。フクロウね……」


フェンリルが木に向かって氷柱を飛ばしたと思うと、氷柱が突き刺さったフクロウが落ちてきた。


飛ぶ時に羽ばたき音がせずに隠密に向いているイメージが有るもんなフクロウって。


むしろカレアはよく気づいたな。


「ありがとうカレア助かった」


「私はご主人様の護衛ですので。あのくらい出来て当然です」


それにしてもフクロウ……こいつの風切羽なら帰還の翼の素材として使えるかな。


持って帰って疾風迅雷に聞けば分かるか。

〈影収納〉が有るから、持ち帰るのに苦労しない訳だし。


フクロウの魔物を〈影収納〉に仕舞い、移動を再開させる。


「少し魔力濃度が高くなっただけでコレだもんな。やっぱり未開拓領域って魔境だね」


突然、木の密集度が低くなって幹に爪でつけられたであろう傷が木が沢山あるなと思ったら。

身長4mは余裕であるクマのナワバリだったらしく戦闘が始まってしまった。


立ち上がって威嚇する姿は中々迫力がある。


まぁ、力は強そうだし、スピードも早いだろうけど。

不意打ちじゃなければ、問題ない。


クマがこちらに向かって突進して来たタイミングで影の茨を操って後ろ足に巻き付かせる。


クマはバランスを崩してズザザァって感じで地面を滑って俺たちの方に突っ込んでくる。


「〈エクスキューショナー〉」


木に激突して止まったクマの頭上に影で作られた大鎌が現れクマの首を斬り落とした。


「火力の高い単体攻撃をと思って作ってみた魔法だけど。予想通りの火力が出てるみたいだし。成功かな」


個人的にはもうちょっと魔法陣を最適化したいところだけど。

最初から完璧な魔法陣を作るとか無理出し、使って最適化を繰り返していくしかないな。


それにしても、このクマって食べれるのかな?


食べれるならかなりの量の肉が手に入った事になるけど……


熊肉って処理に時間がかかるイメージだし。

食べれたとしても〈影収納〉内に当分放置かなぁ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでいただきありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る