第14話

「俺たちがアンタらと一緒に先発隊として未開拓領域に向かうことになった。冒険者パーティー『疾風迅雷』だ。そして俺がリーダーのダルクル宜しくな」


スレイさんに連れられて向かった場所には6人の冒険者が既に待機していた。

どうやらこの人たちが俺たちと一緒に未開拓領域に向かうメンバーのようだ。


「紹介有難うございます。この度皆さんと一緒に未開拓領域に向かう事になりましたシャンです。未開拓領域どころか長期間の移動をする事自体、初めてのことなのでところどころご迷惑をおかけしてしまうと思いますが。宜しくお願いします。後、後ろの2人はカレアとクリスです。護衛と弟子として同行します」


「「よろしくお願いします」」


2人が俺の紹介に合わせてお辞儀をする。


「最低限の自己紹介は終わりましたね。申し訳無いのですが。続きは移動しながらでお願いします。それとシャン殿にはこちらを」


そう言ってスレイさんから銀で作られた懐中時計を渡される。


「シャン殿は知っていると思いますが。これは2級魔導師として国が身分を証明する物です」


確かに知識としては知っている。魔導師と言うのはこの国における優秀な魔法使いに与えられる役職だな。


2級、1級、特急とランクがあって2級の時点で男爵家当主相当の身分を保証される。


その分、戦争時の参戦が義務付けられたりするし。2級だろうと簡単になる事は出来ない。

俺って冒険者ですら無かったから身分を証明する手段が無かったし。有難く受け取っておこう。

月の女神神殿とのツテは持っているけど。

月の女神神殿が俺の身分を証明してくれるようなものは受け取ってないし。

いやまぁ、掌にある聖痕を見せれば良いのかも知れないけど。それだと、一々騒ぎになりそうだし。


……なんというか、このまま国とズブズブになっていく気がするけど。

ここまで来たらもういっそのこと特級魔導師を目指した方が良いだろう。


特級魔導師ともなると1人で戦争の勝敗を決める事も出来るとされている。

その為、身分としては伯爵家当主相当とされているが実際には王族であっても気を使う。


無理を言って他国に逃げられたらたまったものじゃないからな。


特級魔導師が調子に乗りすぎた場合は当然消されるようだけど。


いくら魔法の腕が凄くても人なら殺すチャンスはいくらでも有るからね。


まぁ、とにかく特級魔導師になれば権力に組み込まれはするけど。ある程度自由に行動出来る。


現実的なラインとしては1番自由に暮らせるんじゃないかな?


権力者と一切関わらない強大な力を持ってる存在って不確定要素すぎるからって色んなところから襲撃とか受けそうだし。


「有難うございます。ところで目の前の3台ある幌馬車は全部未開拓領域に向かう俺たちのものって事で良いですか?」


物資を沢山用意してくれるのは嬉しいけど。

計9人で3台の幌馬車を使って未開拓領域に向かうのは大変すぎやしないか?


いや、馬が繋がれているのは1台のみ。


つまり残りの2台は俺が影収納で持っていけって事か。

予備はあった方が良いだろうし。

当然中に物資がギチギチに詰め込まれている。



「はい。お気付きだと思われますが。2台はシャン殿の影収納で運んで下さい。車軸が壊れてしまった時に修理するのではなく、新しいものを用意できるのならその方が早いでしょう」


確かにね。吸魔を発動しながら拡張した影収納の容量なら馬車3台全部収納するのも余裕だけど。

移動中に休憩出来る場所としても1台は馬たちに引いてもらった方が良いだろう。


俺が8人分影狼を用意出来るなら良いけど。

俺が影狼の維持以外何も出来なくなって良いなら3体だからな。


「それじゃ、馬が繋がれてない馬車は収納しちゃうよ〈影収納〉」


馬車を2台影に収納すると、疾風迅雷の皆さんが驚いた声を上げる。


「なるほど。これは凄いな。魔導具の収納袋じゃ、馬車1台でも丸ごと収納出来ないんだが……興味本位での質問なんだが。シャン殿のその魔法は、馬車換算で何台ぐらい入るんだ?」


「うーん。この馬車なら200台ぐらいは同時に仕舞っておける感じですかね?」


長い時間部屋から1歩も出れなかったからな。魔法陣の作成、発動するかの軽い確認以外の時間は魔力操作や魔法制御の練習の為に吸魔と影収納を同時に発動させてずっと影収納の収納量を増やしてたからな。


実際は今収納した馬車のサイズなら2000台ぐらいは収納出来る容量が有るんだけど。

正直に話す必要は無いからな。


200台収納出来るって時点で正直信じられない容量してるし。

それ以上入ると考える人なんていないだろう。

さっきダルクルさんが言ってた収納袋って魔導具が馬車1台すら丸々収納できないんだから。


それに収納袋は魔導具士と言われる職人が作成する事が出来るが年に1回作成者にメンテナンスして貰わないと少しづつ収納容量が少なくなり最終的にただの巾着袋になってしまう。


それに魔導具なので、燃料として魔石が必要で物を出し入れする時に魔石を消費する。

物を収納している間は常時魔石を消費するよりはマシだろうけど。


こう考えると、影収納ってマジでチート魔法だな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んでいただきありがとうございます。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る