第7話


「お待たせしました。今日泊まって貰う部屋の用意が出来たので、部屋に案内する。色々と話もあるが。限界そうだし明日にした方が良さそうだ」


エラルド殿下が帰ってからスレイさんが直ぐに帰ってくる。

スレイさんはエラルド殿下つきの近衛騎士なのかな?


タイミング的にはそんな感じっぽいけど……


もう、眠気が限界だし。スレイさんの言う通り話は明日聞くことにしよう。


エラルド殿下が現れた時点で分かりきっていたけど。ここは王城だったようだ。

さっきまでいたのは近衛騎士団の為のスペースにある一室だったようだ。


スレイさんの案内で客室に案内されて、部屋に用意してあった寝間着に着替えてベットに横になると直ぐに意識を手放し眠りについた。



ーーー


「んっ〜今何時だ?」


客室に設置してある置時計で時間を確認すると既にお昼をすぎていた。


昨日は色々大変だったし、寝るのは遅かったから仕方ないとは思うけど。

流石に寝坊だな。


ベットから体を起こすと着替えが用意してあったので、部屋についてるシャワー室で体を洗ってから着替える。

流石王城。客室にも魔導具を惜しみなく使っている。


魔導具を1つ作るのにそこそこ珍しい素材が必要になるのでお金がかかる。

メンテナンスも必要だし燃料として魔石が必要だし。

維持費もかかる。地球の家電より便利な物も多いけど。

その分お金もかかる。


「さて。俺はどうすれば良いんだろう?」


起きて着替えたのは良いけど。ここから何をすれば良いのか分からない。


俺がこんな時間に起きたのが悪いんだけど、勝手に部屋から出て動き回る訳には行かないし……


あぁ、このベルを鳴らせばメイドさんが来てくれるかな。

確かこのベルは2つで1組になっていて片方を鳴らすともう片方も鳴ると言う魔導具だったはず。


だからこれを鳴らせば、メイドさんが部屋まで来てくれる……はず。


ベルをチリンチリンと鳴らして数分待つとメイドさん……では無くスレイさんが現れた。



「体調はどうですか?」


「昼過ぎまで寝たのでバッチリです」


「それは良かった。では、早速話を始めましょう。途中で食事も運ばれて来るので安心してください」


早速か、と思わなくも無いけど。俺も気になることいっぱいだし大人しく話を聞こう。


「それでは最初に結論から言わせて頂きますと、マエル第8王女が行なう未開拓領域の開拓を手伝って頂きたいのです」


色々と想定外。

未開拓領域と言うのは、人の手が一切加えられていない魔物たちの領域の事だ。


未開拓領域内はどこからでも魔物が湧いてくる。

だからこそ今まで開拓されて来なかったわけだけど……

開拓村を作ったとしても、その村の中で魔物が湧いたりするわけだからな。


「魔物の出現を抑制する方法でも開発されたんですか?」


「いいえ全く。それが出来るとしたら貴方だけでしょう。だからこそこの話をしているのです」


魔物が自然湧きする条件は大気中の魔力濃度が一定以上である事。これだけだ。


なので、人が暮らす場所は魔力濃度が低い場所に作られる。


しかし、魔力濃度が低い場所と言うのは以外に少なく。

現状、土地は余っていても人の住める場所と言うのは殆ど無い。


だからこそ人為的に魔力濃度を調整する研究と言うのはどこの国でも研究されている。


確か瞬間的に魔力濃度を上昇させる事は出来るけど。直ぐに元通りになるし、そもそも魔力濃度上昇させちゃ魔物が出現するようになっちゃうからね?


スレイさんが出来るとしたら俺だけと言った事から、これ以上研究が進んでいる事は無いだろう。


俺の吸魔は大気中の魔力を吸収して自分の魔力を回復したり魔法を維持する為の魔力として利用している。


使用しているんだからその分、魔力濃度は下がっているはず。

吸魔の魔法を上手く使えば、未開拓領域でも魔物が湧かない空間を作る事が出来ると考えているのだろう。


まぁ、無理だけど。

正直、俺1人分の魔力の回復とか影狼の維持に必要な魔力を吸魔で大気中から吸収したところで魔力濃度は1%も減らないだろう。

濃い場所なら尚更。


「現状では絶対に無理ですね。未開拓領域の魔力濃度を魔物が湧かない濃度まで下げるなんて」


「それでも可能性として1番高いのは貴方です」


「新しい魔法を開発するとして、どれぐらい待てますか?」


「最長で1ヶ月です」


巫山戯てんのか?と言いたいところだけど。

脱出ほぼ完成ってところまで研究して。

この魔法より先に戦闘に使えるような魔法の研究をしないと廃嫡された後に生き残れないって中断している魔法の研究がある。


それが丁度、魔力濃度を下げるのに役立ちそうではあるんだよね。


なので、1ヶ月と言う期間でも割と何とかなる。


「無理を言っている自覚は有りますよね?」


「はい。ですがマエル王女が未開拓領域の開拓に向かうのは決定事項。成功させるには貴方に賭けるしか残されていないのです」


一体全体どうしてそんな事になっているのか知らないけど。そんなことになっているって事を考えると発言力はなさそうだけど、王族に大きな恩を売れるってのは悪くないか。


第1王子とも上手くやれそうでは有るけど。

あの人は発言力が高い分制約が色々生まれてしまいそうだからな。


発言力が低いからこそ、こっちも自由に出来る余地が存在する訳だ。



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読んでいただきありがとうございます。


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