第2話
「サドルも一緒に作り出して正解だったな」
サドルなしで騎乗していたら長時間移動するのは難しかったろうな。
落ちないように速度も今よりゆっくりにする必要があったし。
大気中の魔力を吸収して俺からの魔力供給無しで動き続ける機能も上手く機能してくれて助かった。
俺の魔力量は属性魔法を使える人間全体で考えたら少ない訳では無いけど。
貴族と比べると少ないからな。
自前の魔力だけで一日中ゴーレムを動かす事は出来ない。
だから大気の魔力を吸収する効果〈吸魔〉の効果を発動する魔法陣を作成。
これに関しては割と早い段階で完成した。
これに関しては俺が天才なんじゃなくて、ルーン文字が優秀すぎるおかげだな。
だけど。ゴーレムが大気中の魔力を吸収出来るようにするため〈影狼〉の魔法陣に〈吸魔〉の魔法陣を重ねて新しい魔法陣を作り出す作業。これが大変だった。
魔法陣は文字や図形のバランスがかなり重要で、適当に魔法陣を重ねれば2つの魔法陣の効果を1つの魔法陣に纏められる訳じゃない。
サイズを変えたりあえて形を崩したり、根本的に図形や文字の配置を変更したり……この作業はかなり大変だった。
廃嫡される直前に何とか形にする事が出来たけど。
ほぼほぼぶっつけ本番だったので、想定通りの性能を発揮してくれて本当に良かった。
〈影狼〉と〈吸魔〉を別々に発動する方法も無くはない。
〈吸魔〉で自分の魔力を回復させて〈影狼〉に魔力を供給し続けると言う事だな。
まぁ、出来なくは無いけど。2つの魔法陣を同時に展開、維持するのは意外と集中しないと行けない。
前世を含め生き物に騎乗した事は無いので、魔法陣の展開、維持に集中しすぎると騎乗中にバランスを崩して落ちるかもしれない。
まぁ、今乗っているのは生き物じゃなくてゴーレムだけど狼をモデルに作っているからな。
動きはほぼ生き物だ。騎乗している感覚は生き物に騎乗しているのと変わらない。
実際、〈吸魔〉の特性を追加した〈影狼〉の魔法陣を1つ発動しながら騎乗しているだけで、何度かバランスを崩して落ちかけたからな。
魔法陣を2つ発動しながらだと確実にゴーレムから落ちてただろう。
そう考えると割と綱渡りしてるよな俺。
そんな事よりそろそろ辺りが暗くなってくる。今までは速度重視で街道を進んでいたけど、野営の準備を始める為に街道から外れて森の中に入っていく。
見晴らしの良いで野営をすると目立つからな。
その分、追っ手の接近の警戒もし易いだろうけど。
寝てるタイミングは、どれだけ見晴らしが良くても警戒なんて出来ないし。
それなら隠れる事が出来る森の中で野営する方が安全という事だ。
と言うわけで森の中を進み野営するのに丁度良さそうな場所を探す。
「やっぱり魔物は出てくるよね。まあ、魔物の死骸は売ればお金になるし。元実家からくすねて来た食料が尽きた時の非常食にもなる。遠慮なく狩らせて貰おう」
この世界は剣と魔法のファンタジー世界。当然のように魔物も存在する。
街道沿い等は冒険者や貴族に雇われている兵士等によって討伐されているので魔物と遭遇することは少ないが。
街道沿いから外れて森などに入ると魔物に襲われるようになる。
魔物は食料になったり武器とか防具とか色んな物を作る材料になるのでいいお金になる。
「〈影の茨〉」
魔法陣を作り出し新しい魔法を発動する。
自分の影から黒い茨が魔物に向かって飛んでいく。
イノシシ型の魔物。魔猪に黒い茨が絡みつき締め付けて拘束する。
拘束に参加していなかった黒い茨が魔猪の頭部を貫いてトドメを刺す。
血抜きの事を考えるなら首を切り落とした方が良かったな。
まぁ、あんまり一箇所に固まっていると次から次へと好戦的な魔物が襲いかかって来るだろうし。
魔猪の死体を収納してさっさと先に進もう。
「〈影収納〉」
影の茨を解除して影の中に物を収納する事の出来る魔法を発動する。
結構複雑な魔法陣を作らなけ行けないので発動するのは結構疲れる。
影の中の収納スペースは魔力を消費して広げる感じなので、〈吸魔〉が無ければ折角の収納系魔法なのに少しの手荷物しか入らない残念魔法になるところだった。
家に軟禁されていたからな。複雑な魔法陣を早く正確に作り出す練習がてら収納スペースを広げまくったので、結構な量の物を収納することができる。
影収納の収納スペースは一度広げたら狭くなったりしないので、広げれば広げる程お得だ。
不思議なことにスペースが広がっても発動に必要な魔力量が増えたりはしないし。
〈影収納〉には〈吸魔〉の効果を組み込めていないので〈影収納〉と〈吸魔〉2つの魔法陣を同時に発動して維持しなきゃいけなかったので、複数の魔法を同時に制御するいい練習にもなったし一石二鳥のいい練習だった。
目標としては俺が作り出した魔法全てに吸魔の効果を組み込みたいんだけど。
そう簡単には行かないからな。
焦っても上手くいかないだろうし。ゆっくり
魔法陣を作って行こう。
まぁ、現状そのゆっくり魔法陣の制作が出来る環境の確保が出来ないんだけどね。
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