針葉樹と広葉樹

 先週末は九州のくじゅう連山に行ってきました。くじゅうといえば見どころは初夏のミヤマキリシマと秋の紅葉です。ミヤマキリシマはなじみ深い名前に言いかえればツツジの一種です。しかしそれなりに標高の高いところに自生しているので、街中でよくみかけるツツジの花とはちょっと趣が違います。


 このくじゅうのミヤマキリシマは虫による被害で、当たり年と外れ年とがあります。残念ながら今年は外れ年と言われているんですが、それでも比較的被害が少ないと言われている立中山という所に登りました。まぁそれは素晴らしい風景だったんですが、この文の主題とはちょっと違います。


 最近の凄まじい豪雨は山でも被害をもたらしています。もしかすると100年以上そこに生えていたであろう樹木が根こそぎ流されていたり、がけ状の部分は崩れたり柔らかな土を流して深い地割れの様になっているところもあります。くじゅうでもそれは例外ではなく、マイナーコースですが特に南側からの登山道で麓付近はひどいものでした。


 山に登らない人にはピンと来ないかもしれませんが、九州の元々の植生は広葉樹、特に葉の厚い照葉樹がメインの雑木林です。杉やヒノキなどの針葉樹は、あとから人間が植えたものです。人間がなかなか切りだせないような標高の高い部分は、植林が及ばず従来の生態系が残されています。


 どうして元あった広葉樹を伐採して、杉やヒノキを植えるかと言えばそれは建材にするためです。針葉樹はまっすぐ上に伸びるので、建材としては非常に使いやすいわけです。特に杉は成長も早いのでどこもかしこも杉だらけになりました。ただ同じ時期に固まって植林してしまったことで、土の中には層のようなものが出来上がってしまっているような気がします。大きい団地が、出来上がった時には一斉に若い夫婦と子供が移り住んできたのに、子供は巣立って一斉に歳をとって老人だらけになってしまうのと似てますね。多様性というのは何も人間に限った話ではなくて、植生にも大切な事だと思います。複雑に根が絡み合って堅牢な地盤になると思います。


 このところの豪雨で被害を受けている場所は、くじゅうに限らず針葉樹が植えられてる付近に多いように感じます。それはつまり麓の比較的人里に近い部分という事にもなるので、場所によっては民家にも被害が及ぶわけです。


 今、花粉症対策で杉などは花粉の飛ばない品種に植え替えて行こうという国の方針の様ですが、これから人口も減れば住宅の着工件数も減っていきます。国産木材の需要が頭打ちになるのは見えているので、植え替えるなら同じ杉ではなくて広葉樹にしていった方がいいんじゃないかと個人的には思っています。そういった運動をしている団体もあるようですね。


 登山道を歩いていても針葉樹林は単調で面白くありません。雑木林はいいですよ。様々な表情を持っていて見飽きません。まぁそれはまた別の話ではありますが…。

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