遺伝子交換
もう随分と昔の話になりますが、独立して事務所を構えたときに当時のクライアントが観葉植物をプレゼントしてくれました。それは今まで枯れることもなくすくすくと育ってくれたんですが、育ち過ぎて天井にぶつかるぐらいに伸びてしまいました。
そういう種類なんだと思いますが、肝心の眺めるための葉は上の方にしか生えていません。天井にぶつかりそうなうえに観葉植物としてはどうにも不格好なので、この春思い切って幹の下の方でカットしました。切り離した上部は土に植えました。
で、どうなったかと言えば上部は根が出る前に枯れてしまって、下部の方も切り口から芽が出る気配は一向にありません。ああこれでこいつとはサヨナラなのかと思っていたら、切り口よりもっと下の出っ張りのようなところから、二か所芽が出てきました。
植物は凄いですね。自分の置かれた状況や環境に合わせて、体の細胞が必要なものに変化していきます。人間でもIPS細胞というものがあります。これは自分の細胞に特定の遺伝子を導入することで、分化前の初期状態にリセットした代物です。確かにうまく誘導すればそこから体のどの部分でも作れる様になるでしょう。しかしIPS細胞の作成にも、そこから狙った部位を造るのにも結構な手間がかかります。それを植物は自分自身でやってのけてしまうんだから大したもんです。
もしかしてこの機序が動物にも起こることは無いのかちょっと考えてみました。現在では異種生物間でも、ウィルスを媒介として遺伝子の交換が起きることは広く知られています。ウィルス進化論というやつですね。これは太古には動植物間でも起きていたと言われています。例えば動物が持つ『見る』という能力ですが、それは植物の光を感じるという能力に由来しているそうです。
であれば動物と植物の両方に感染しうるウィルスが存在すれば、今でも同じことが起きる可能性はあるような気がします。そこでネットで調べてみましたが、今の所そう言ったウィルスと現象は、疑いはあってもしっかりとは確認されていないそうです。もちろん植物に感染するウィルスはかなりの種類が発見されています。しかしそれを動物にも感染させる実験では成功例が無いそうです。半ば動物と植物とでは同じウィルスに感染しないという事が、生物学の世界では常識の様になってるそうです。ただ実験が行われているという事は、もちろんそこに着目して研究している方々が少なからずいらっしゃるという事なので、将来的には発見される可能性はゼロではないと思います。
動物と植物の間で遺伝子の交換が起こったら、面白いような怖いような不思議な感じですね。自分の足で動く植物とか、光合成できる動物とかが何億年か先の世界には存在しているかもしれません。
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