第6話 I WANT TO GO HOME



「処刑じゃなくて処遇ですよ」騎士団長さんはキレイに言い直してくれる。

「わかりました、明日学園に行く前に出頭いたしますので失礼します」とりあえず帰って逃走準備だ、荷物まとめて城郭抜けて夜通し歩こう。


「わかったわかった、お前たちで処遇とやらを検討しといてくれ俺はコレ送り届けて明日また騎士団に連れてくる」おお〜話わかるじゃんマック隊長!夜中に逃走すれば完璧プランだな!


 お二人はやや不服そうだ、完璧プランに水を差さないでくださいよ。

「逃したりしねぇからよ」おっと逃げたらマック隊長の査定が下がるのかな?申し訳ないけど処刑は避けたいから逃走先で落ち着いたらお酒とか送ろう。


「手短に済ませますので、来歴と家系図だけお願いできませんか?」そっちで調べたらどう?学園の資料にあるぞ!入学の時たくさん書いたよ、今頃教会はマリーがご立腹してるな、最年少者が空腹で泣き始める頃だよ、騎士団長さん、お前さんのガキじゃなかったお子さんもパパ遅いって侍女や執事にこぼしてると思うよ。


 あぁマリーに会いたいなんて思う日が来るなんて一生絶対ないと思ってたのに!


 ハイスピードで来歴経歴家族構成など話して学園にも資料あるはずですと言って解放してもらえた、騎士団長は扉を開けてくれた「お前いちいち紳士だな」マック隊長と仲良いのね。


 逃走失敗して明日も会うことになるならこれだけ言っておこう。

「今日は遅くなってすみませんでした、お子さん待ってるだろうに」


 微笑みながら固まってる騎士団長さんの横を過ぎて部屋を出る「こいつ子供なんていねーぞ」マック隊長からフォローが入る。


そうなのね「ちょっと混乱して」まだなのか!


そっかまだ生まれてないんだな!妻は身重だな!


 今までいた棟はセレアシャトン王立聖騎士団の中の主に武器で魔物に対処するマック隊長が所属する正騎士団の所有の棟だった。


 なんでこんな建物に入ることになったのだろうか?ホントに思えば遠くに来たものだ。


 遅ればせながら私は元いた世界から召喚魔法陣によって魔法国家に異世界転送された。そこでは渡り魔女と謂れている。

 魔法国家は古の契約により各国に魔法使いを派遣しなければいけないのだけれどユートピア的ディストピアの暮らしを捨てたい者はいなかった。

 生活の雑務は全て魔法で国民は余暇を楽しむだけの暮らしだ、有り余る時間を駆使して魔法研究がなされ異世界から派遣に遣わせる魔法使いを召喚することに成功した。

 異世界から来ることにより魔力を得られることは確証されていたし召喚先の世界に干渉して召喚者を選ぶことにも成功した。

 私は家にいる時間を減らしたくて休みの日も図書館でボランティアをしていた。一人で書庫の整理を任されいた時に表紙にも背表紙にも何も書かれていない本を見つけて開いてみた、開くと白い紙に文字が浮かび上がり新種のガジェットなのかと思って浮き出る文字を追った。


 家に居たくないのは家が全く安らげないからだった。

 愛した人は一緒に暮らし始めると冷たく豹変してしまって唯一相談できた肉親もお星様になってしまった。

 心の拠り所を見失ってそれでも勇気や希望は本に映画にゲームからいただいた過去があったのでお金も乏しいことから図書館に居座った。そのうちボランティアを紹介されて古い本の整理を任された。


 浮き出た文字はYESorNO又はQ&A方式で質問してきた!

 生活全般から政治や経済の知識などがあり思考の傾向の質問では五段階で答える様式になっていた。


『人の役に立ちたい』という質問に"非常にそう思う"を選択し『魔法を使いたいとは思わない』には"全くそう思わない"にして『今いるところから別の世界に行きたい』にも"非常にそう思う"を選択した。


 何が決め手になったのか詳しく教えてもらってないし総合的な評価かもしれないけどたくさんの質問に答え終わると足元から魔法陣に包まれた。

 長いような短いような宇宙のような深海みたいな空間を移動していった薔薇色の瞳は指定されていて髪色は選択できたのでピンクだと同系色すぎるから水色にした。後から思ったけどせめて髪色の人口比率を提示して欲しかったな、アンケートを取って次回に役立ててほしい。


 そして私は魔力を身につけて異世界に召喚された。何かしらのバグが出るらしくて私の場合は肉体が7歳になっていた。


 見た目は子供!頭脳は…というやつだ!


 魔法国家に長く生活させるとこの国から出たくなくなるからと基本的な言語プログラム等を履修してから直ぐ国から出された。

 異世界から召喚されたことなどは秘密保持契約させられて碌な説明もなく船で"トレバス国に届け物に行く使節団に選ばれたから行ってきてね"と。

 あれれ〜と子供ぶりっ子しようにも使節団は事情を知ってる魔法使いばかりなので小さな探偵ごっこはできなかった。


 私は渡り魔女でありながら派遣魔女になった。


 そしてそれから10年経って当初の派遣先と違う国に来ているけど魔法国家からはなんのコンタクトもないし学園を卒業したら定職みつけて生活するしかないな。

 生活するのに魔法は便利だし困ってる人を出来る範囲だけでも助けて生きて行こうと思っている。

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