第4話 王宮で測定


 編入から数日経ち今日は午後から王宮で魔力測定だそうだ。新入生が全員終わってからで最後の最後なので午後の授業が終わってから担任教諭と向かうことになった。


 これは言わば確認作業のようなもので、どのような属性の魔力か調べて登録して魔力量の測定もするらしい。

 通行証を掲示して王宮に入った途端今まで感じたことのない感覚に包まれる。言わばパワースポットを体感してるような感じ?

 王宮は王城から騎士団の訓練所、宿舎はもとより各省庁とさまざまな施設が混在している大きな場所だ、城壁に囲まれ、王城は二つ目の城壁の中だ。

この広大な土地に守りの結界まで張ってあるのだから桁違いの魔法使いがいるのかな?大勢の聖女さまの祈りかな?


 身体の奥から力が湧き出せることができる感覚がする、そのかわりに制約もあるのがわかる、見た目を偽ったり、ロックを外したりする系統だ、人目につかないように魔法使うときの探知魔法も感度が悪い。精神感応する系もきっとダメだろうこの辺りの魔法は適性がないのでわからんけどね。


 新入生が終わったらしく私の番が来て扉を開いて中に入る「失礼します」


 部屋の奥に菱形の大きなクリスタルが透明に聳えている、いつからそこにあるのか人の世では量れない超然とした存在感を放っている。


 事前に聞いていた通り中は三人だけでクリップボードを持ってローブを着た記録係の職員と豪奢なローブ着た魔術師団長、騎士服の騎士団長が居た。


 魔術師団長は黒髪、濃紺の瞳で長身長髪ワンレン眼鏡!年齢不詳。

 黒髪は馴染み深いのか見かけるとドキリとするけれどネイビーの瞳は遠いところに来てしまったもんだと感慨深くなる。そしてなんとなく彼はきっと鬼畜眼鏡!

 美形なんだけど内側から滲み出るもののせいであまりお近づきになりたくないタイプだ、きっと三度のご飯や美女より魔法が好き。


 騎士団長は長身銀髪で黎明の空の夜寄りのとても綺麗な紫電の瞳をしていた。


 白皙の貴公子だ!美形でビビる。

 しかもなぜか学園の殿下に似てる。


 こういう人は好意を寄せられることにうんざりしてるだろうからシャットアウトしておこう。

 地位もあって美形だとあからさまに近づく人、興味ないフリしてチラチラ見てくる人どちらにもなりたくない。


 この二人の分析は0.5秒間に行われた。


 その騎士団長から「どうぞクリスタルのところまで進んでください、魔術師団長から測定の説明があります」物腰柔らかくて美声だったよチクショー、わかりましたとクリスタルまで進む。

 んーきっと20代前半だろうから結婚してるよね、びっくりするくらい綺麗な妖精みたいな妻がいて、ふわふわ銀髪のかわいい娘がいるんだ!2歳くらかな?今日は早く帰ってきてねって朝にお見送りされて来たんだろな?

 サクッと測定して早く返してやるよ。


「この子で終わりだねー?はぁいじゃあクリスタルを両手で触ってみて」

 見た目に合わずテンション高めの魔術師団長から指示される、コレ終わったらハイタッチでノリノリで返してもらえそう。

 クリスタルは冷んやりするかと思ったら両手が沈んだ!虹色にクリスタルが輝き光が収束しだしてマーブルの様に自分の瞳の色と同じ薔薇色がクリスタルを渦巻き全体が薔薇色に変わる。

 数秒待っても変化がないのでこれで終わりなのだろう、特に指示もないけどクリスタルから手を抜いた。

 魔術師団長が目を見開いてる、そっか薔薇色は珍しいよね?似た色はあるけれどもまだ私も自分と同じ瞳の人見たことないやい。


 指示はないので帰ろう。

 パパの帰りを待ってるだろうし。


「失礼します」サクッと礼をして出口へ向かう。


「ちょっと待った」復活した眼鏡からお声が掛かる「攻撃魔法も勿論できるでしょ?次はクリスタルから模擬魔物が出るから攻撃してみて!」


 はっ?攻撃魔法?


 ファイヤボールみたいなのかな?火炎つくって投げるのは出来そうだけど実践したことない、トレバスは魔物ゼロだったからね謝って帰ろう。

「すみません攻撃魔法はしたことなくて、これにて失礼します」最後の方の新入生の次に並んでたけどサクサクと進行してたからもう終わりよね?何個も検査するなんて聞いてないし。


「いやいやいや待てい!あ、おいグレン逃すなよ」

 眼鏡が騎士団長に捕獲命令をだした。


「怖がりますよ丁寧に検査しましょうよ」

 騎士団長さんは同僚にも丁寧語なのね、ホント好感度高いわ私の。


 仕方ないので眼鏡に向き合って指示を頂こう。

「じゃあ今度はそこからでいいからクリスタルに片手をかざして魔力流してみてね魔力に見合ったクリスタルに刻まれた魔物が出てくるから攻撃する、それだけ」


 えっ魔力流す?なんの?どの魔力?得意な魔力ないよ!攻撃できるの?だいたい魔物なんて闘ったことない、棍棒でスライム通常攻撃するイメージしかわかないよ。


 スライム出して正拳突きとか踵落としして勝とう!


 スライムスライムスライム右手をクリスタル向けてつぶやく、スライムスライムスライム!

出てこない! 


 なんか呪文あるのかな?いでよジェルの天使スライム!

 心の中で呟いてみたけど出てこない!


 眼鏡をチラリと見てみたら「うーんセーブしてるね思いっきり出すんだよ魔力」と言われた。


 うーんそれがわからんのよ、それに王宮の魔力のアシストがあって底がわからなくて怖い。

「よし、ちょっとごめんよ」眼鏡はちょこんと私の眉間を弾いたのだった。


 そして私は意志の関係ないところで狂戦士となった。

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