第41話 俺たちの形

「いつまで泣いてるんだよ・・・」

俺は呆れた声で両サイドにいる2人の頭を撫でながらため息を吐く。

昼休みはとうに終わっている。

それでも泣き止まない2人を慰めて、とうとう授業をサボってしまった。

中庭では目立つからと校舎裏まで連れてきたのはいいが、俺の制服を掴み離さない。

俺は観念しながら、ずっと2人を撫でる。

次第に何故か笑いが込み上げてきて、声を漏らし笑うと、不思議そうな顔で2人が俺を見る。

「いや、本当に懐かしいなぁと思って・・・。いつも2人で俺の服を引っ張って歩いて、その後ろから純が歩いてくる」

そう言いながら懐かしむ様にまた笑う。

「俺達、本当に大きくなったな。約2人、でかくなり過ぎがいるけど・・・」

そう言って諒を見ると、目を真っ赤にした諒が俺を見下ろす。

俺はグシャグシャと諒の頭を撫でて、今度は可奈を見るとまた俯いたままだ。

「可奈、そんなに落ち込むなよ。俺、正直感動したんだぞ?」

俺の言葉に可奈が顔をあげる。

「諒はさ、ずっと俺がそばで見てきたから、体も中身も強くなってきたのは感じてたけど、可奈とは離れてた時期があったからさ、あの時、俺の前に飛び出してきた姿見たらさ、何というか・・・逞しくなったなぁって・・・」

「グス・・・何よ、それ・・・何目線?」

鼻を啜りながら言葉を返す加奈に、俺は親目線?と首を傾げながら答えた。

「でも、それ見て変わんないなぁとも思った」

「・・・弱いままだって事?」

悲しそうな表情で俺を見る可奈に、俺は微笑みながら頭をポンポンと優しく叩く。

「そうじゃないよ。昔はさ、俺がいない時、いつも口喧嘩ばかりしてた諒と一緒にいたろ?」

「そうだっけ?」

すかさず諒がつっこむが、俺はそうだと即答する。

「ほら、昔はさ、諒は大人しかったから俺が誘っても、男の子達と遊ぶ事があんまりなくて、どちらかと言うと女の子達からアイドルみたいな扱いされてたから、自然と女の子達と遊ぶ事が多かっただろ?そういう時って、だいたい決まって可奈がいつも隣にいたんだ。まるで、諒を守るみたいに・・・」

俺は懐かしさにふふッと笑う。

「でも、可奈が揶揄われるといつも前に立つのは諒だった。2人でぎゅっと手を握って俺が来るまで2人で頑張ってた。今も変わらないだろ?お前達は俺を守るつもりでもあるけど、可奈は諒のため、諒は可奈のために動いている。だから、一番先に可奈は諒に連絡して、諒はあの子達にあんな風に言った。俺、それが本当に嬉しい」

俺は可奈の頭を撫でながら言葉を続ける。

「俺と諒はほんの少し形を変えたけど、俺達は何も変わらない。それは可奈との関係もだ。俺は諒も可奈も大事な親友だと思ってる。だから、1人で悩むな。昔みたいに支え合おう。可奈が困った時や悲しい時は俺達が、もし、俺達が俺達の事で躓いたら可奈、お前が支えてくれないか?」

そう言いながら可奈に尋ねると、可奈は小さく頷いた。

俺はありがとうと言いながら微笑み、今度は諒へと視線を向ける。

「お前も1人悩むな。俺も暴走する癖あるけど、お前は閉じ込めるタイプだ。今度の事だって俺の言う事を聞かなかったらだとか思ってるだろ?」

「それは・・・」

「確かに少し見境なかったが、俺は別に嫌じゃないぞ?まぁ、男同士だからってのもあるが、ただ単に見られたい訳じゃ無いから少しだけ控えろと言ってるんだ。でも、助けに来てくれてありがとうな。俺と可奈を守ってくれてありがとう」

俺は手を伸ばし諒の頭を撫でると、スクッと立ち上がる。

「なぁ、次の授業は出なきゃだけど、その前に保健室行かない?俺は頬を冷やしたいし、お前達は目を冷やさないと・・・本当に不細工な顔してるぞ」

笑いながら俺は2人に手を差し伸べる。

2人は苦笑いしながら俺の手を取って、立ち上がる。

保健室に向かいながら、俺は思い出しかのようにポツリと呟いた。

「やばい、純を忘れてた。俺の親友は三人いた」

その声に、2人もそうだったと声を出して笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る