第39話 余韻のあと
「瑞稀〜ごめんってば〜」
諒に背を向け、不貞腐れている俺に背後から必死に謝る諒の声が聞こえる。
一回目を終えた後、余韻で互いにキスを交わしていたら、諒がすぐに復活し、もう一回だけという言葉を許したら、痛みから快感に変わった俺の声を聞き、諒が暴走した。
最後ら辺は俺は気を失って覚えていない。
おかげで、腰が、体のあちこちが痛くて起き上がれずにいる。
「俺、もう無理って言ったよな?」
「うん・・・」
「・・・で?結局何回した?」
「全部で、よ、4回・・・」
「なっ!?」
諒の返事に俺は勢いよく振り返るが、体の痛みにううっと小さく呻き声をあげ、うずくまる。
「・・・お前・・・俺は、3回目までの途中まで覚えている。なのに、4回?」
「ごめん・・・3回目で果てた後、瑞稀、そのまま寝ちゃったんだけど、抜こうとしたらきゅっと締めてくるから、そのまま元気になっちゃって・・・あっ、でも4回目は流石に俺もすぐ果てた」
「どうでもいい・・・気を失っているやつ相手に続ける事がおかしいと思わないのか?」
「だって・・・嬉しくて・・・それに・・・」
「・・・・それに?」
「エロ可愛い瑞稀が悪い・・・」
その答えに俺はイラっとして、また背を向ける。
その後ろからごめんねと言いながら、諒は俺を抱きしめてくる。
しばらくの間、諒を無視し続けた後、後ろから感じる諒の温もりと心地よさに、俺はいつの間にかまた眠りについた。
あの日から一週間が経ったのに、諒はずっと惚けてて俺に甘ったるい視線を向けてくる。
その態度の周りにバレるんじゃ無いかと、何度もヒヤヒヤした。
その顔をやめろという俺に、無自覚なのか何の事だと言葉を返す。
そんなやりとりを何回かした後、俺はすっかり諦めた。
正直、付き合っている事がバレても構わないと思っていた。その覚悟がピアスだったからだ。
その覚悟はきっと諒にも伝わっているはずだ。
こんなに毎日ベッタリと一緒にいて、いくら幼馴染で親友だと言っても、お揃いのピアスを付ける男同士なんていない。
相手にもよるが仲の良い友達に聞かれたら、正直に答えるつもりだ。
俺達の関係に嘘をついたり、隠したりしたくないからだ。
ただ、付き合っている事をバレるのと、そう言ったことをしたとバレるのは違う。
恋人同士ならそう言ったこともセットで見られるが、あからさまに言いふらす事でも、見せびらかす事でもない。
なのに、諒の甘ったるい雰囲気は、いかにもしましたと言っているようで、それが恥ずかしくてたまらなかった。
いきなりお揃いのピアスに加えて、甘ったるい雰囲気、何かしら興味を持つ人間が出てくるのは時間の問題だ。
そう・・・今の様に・・・・
「ねぇ、いくら幼馴染でもベッタリしすぎじゃない?正直、邪魔なのよ。あんたがくっついているから諒くんと話せないじゃない」
昼休み、自販機でジュースを買ってくると教室を出た俺を、数人の女子が呼び止める。そして、そのまま校舎から見ずらい中庭に連れて行かれた。
「・・・・別に、喋りたかったら喋ればいいじゃねーか」
「あんたが邪魔だって言ってるの。諒くんが人気あるのは知ってるでしょ?みんな諒くんと少しでも仲良くなりたくて、話しかけるのにいつもあんたがいる」
「しょうがないだろ。実際、俺達幼少からずっといる親友なんだから、仲がいいのは普通だろ」
「少しは気を使えって言ってんの。空気読んで消えてよ。諒くんが優しいからってベッタリしてるの、おかしいでしょ?」
どちらかと言うと、あっちがベタベタくっついてくるんだが・・・そう言い返したいのをグッと堪え、変わるがわる文句を言ってくる女子達の話に耳を傾ける。
「そのピアスだって、真面目な諒くんに無理やり開けさせたんでしょ?」
その言葉に、そういう見方もあるのかと変に納得してしまう。
俺は別に見た目、不良ではない。だが、成績も容姿も普通。唯一取り柄と言えば運動神経がいい事。
逆に諒は文武両道だ。成績も上位に入るし、運動神経もいい。
体も鍛えているから逞しいし、あの顔だ。
それに比べたら俺は不真面目な空気も読めない、嫌なやつだろう。
「聞いてるの?同じ男なのにおかしいと思わないの?それとも、あんた、そっちで諒くんを狙ってるの?」
「・・・そっちとは?」
「男好きってことよ。他の男達より少し顔が幼いからって、諒くんをおかしな道に引き込まないで」
その言葉に俺はカチンとして、低い声で言葉を発する。
「そっちとかあっちとかどうでもいいけど、人が人を好きになるのにおかしいとかあるのか?もし、俺達がそういう関係でもあんた達には関係ないだろ?」
「やだ・・・こいつ本気なの?気持ち悪い・・・」
「気持ち悪い?俺からしたら、こんな姑息な真似をするお前達が気持ち悪い。好きの押し売りして、陰でコソコソ・・・諒が一番嫌いなタイプだ」
「なんですって!?」
「あ〜そうそう、あんた達だろ?美奈に嫌がらせしてるの?言っとくけど、美奈も俺達の幼少からの幼馴染だ。手を出し続けるなら俺が許さない。それは諒も同じだ」
俺の言葉に怒りの沸点が到達したのか、一番前に立っていた女子が手を上げ、俺の頬を思い切り叩いた。
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