第34話 ある決意

何故・・・・?

俺は瑞稀と純を連れ立って、ある街に向かっていた。

そう純の想い人の所へだ。

急に瑞稀が一緒に出かけたいと言い出し、デートかと思って喜んでいたら駅に純の姿があって、訳がわからないまま電車に乗った。

完全にデジャブだ・・・。


降りた駅の改札を出ると、その子が小さく手を振っていた。

あれから退院して自宅で療養していると聞いた。

初めて会った時より顔色はよく、純に会ったからなのかほんのり頬を染めていた。

退院してからも純は健気に通っている。

受験を終えたからか時間に余裕がある純は、時々漫画喫茶に泊まりながらデートを重ねていると、呆れた声で可奈が愚痴っていた。

今日は瑞樹の提案でダブルデートだと言っていたが、正直、俺は2人きりでしたかった。でも、瑞稀から言い出したという事に、何か理由があるのだろうと何も言わずに着いてきた。

彰良さんの案内で、美味しいと評判の店で食事を終えて、ゲーセンに行ったり、ブラブラ商店街を歩いたり・・・これは、デートなのか?と思うほどの無計画練り歩きをしていた。

それでも瑞樹と彰良さんは楽しそうに歩いていた。

可愛い光景に和む反面、ダブルデートだと言うのに、何故かずっと俺の隣に純がいる事に不快感でいっぱいだった。

「なぁ、これダブルデートなんだろ?なんで、ペアが入れ替わってるんだよ?」

「なんだ?俺じゃ不満か?」

「あたりまえだ」

「即答するなよ〜。まぁ、俺は彰良が楽しそうだから満足だけどね」

「そうかよ・・・そう言えば、返事もらったのか?家族にも話したんだろ?」

「まだだよ。来月入ってすぐ合否がわかるから、それが終わってから改めて申し込むつもり。それに、まだ、家族を説得しきれてないからね」

少し気まずそうに純が話す。

可奈から元旦に会った時に純の話を聞いたが、年末に純が突然カミングアウトして、合格したら彼と住みたいと言ったもんだから、両親がご立腹で年明けても家の雰囲気が悪いと言っていた。

だが、純はめげずに話し合いの場を何度も持ちかけているとか。

「可奈の手助けもあって交際までは許してもらえたんだけど、結婚とかの話になってさ。俺は彰良以外と一緒になるつもりはないって断言したもんだから振り出しよ。大学行ってバイトするとしても、色々お金出してもらう身としてはね・・・」

「・・・・難しいな」

「まぁね・・・でも、これが普通だ。お前と瑞稀の所が特別なんだって。俺は正直お前達が羨ましい」

「俺達だって沢山悩んだんだぞ?」

「そうだな・・・でも、羨ましいよ。だけど、俺は今度は諦めたりしない。彰良の中に俺への気持ちが少しでもあるなら、俺は諦めたくない」

「俺は、お前達の強さが羨ましいよ」

ポツリと呟いた俺の肩を純が思い切り叩く。イラっとした俺は肩を摩りながら純を睨むと、純はニカっと笑った。

「お前の執着心は並大抵な物じゃないだろ?瑞稀といたいなら、とことん信じてやれ。そして、沢山話をしろ。今日の事だって、瑞稀が彰良を心配してて友達になりたいって言うのは本心だろうけど、それだけじゃないと思うよ?」

純の言葉にイラッとするが、それは俺も感じていた事だった。

きっと何かにまた悩んでいる。

その答えを出すために会っているのかもしれない。

でも、その話相手は俺でいて欲しかった。

胸の中でモヤモヤと独占欲と嫉妬が渦巻く。それを察したのか、純がまた俺の肩を叩く。

「信じろって言ったろ?瑞稀はちゃんと話してくれる。ただ、話す前に気持ちを整理したい時ってあるだろ?その時にお前がしっかり受け止めてやればいいんだよ。なんで俺じゃないんだって焦ったり、変に嫉妬すると昔の俺みたいに失敗するぞ?」

相変わらずヘラヘラと笑いながら話してくるが、純の言葉が不思議と胸にストンと落ちて、さっきまでのモヤモヤが晴れてくる。

その事実が、無性に腹ただしくて仕返しに純の肩を思いっきり殴った。

そして、その勢いで転んだ純を見て、瑞稀に怒られた。

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