第33話 ある決意

バタバタと年が明け、元旦は諒と神社デート・・・のつもりが、美奈、可奈を両親に託され、何となく気まずい年の始めとなった。

翌日には、諒の母親にも正月の挨拶がてら報告もした。

それから学校も始まって、諒とはほぼ毎日会ってはいるが、いちゃつく様な雰囲気になれないでいた。

何故なら、良かれと思って互いの親にカミングアウトしたせいで、家族が家にいる中で、互いの部屋で2人でいる事が恥ずかしくなってしまっていた。

諒が通常運転なのが、不思議でたまらない。


「瑞稀、今日も手を繋ぐだけ?」

俺の部屋に入るなり、諒が寂しそうに呟く。

鞄を下ろしながら俺は振り返り、小さくため息をつく。それを見た諒は更にしょぼくれる。

俺は腰を下ろすと、隣をトントンと叩いて諒を招く。招かれた諒は素直に隣に腰を下ろした。

俺は手を伸ばして諒の頭を撫でる。

「ごめんな。そうだよな・・・これじゃ、本末転倒だ。俺達の関係を守る為にカミングアウトしたのに、距離ができたら意味がないよな?」

俺の言葉に諒は何も言わず、俺の頬を撫でる。俺はその手に頬を擦り寄せた。

「キス・・・しよう」

「でも・・・」

「わかってる。諒はいつだって俺の気持ちを優先してくれる。でも、それじゃあ話し合った意味がない。言ったろ?お互いに何でも沢山話して、一緒に悩んで、一緒に進んで行こうって・・・諒に我慢させてるのは俺だから、矛盾してるけど・・・」

「そんな事ない!そりゃあ、少し我慢してる事はあるけど、俺の我慢は辛い我慢じゃない。瑞稀が大事だから、無理強いしたくないんだ。これは本心だ」

「そっか・・・でも、俺も我慢の限界かも・・・諒にもっと触れた・・」

言葉を言い切る前に諒が俺を力強く抱きしめる。そして耳元で嬉しいと囁いた。

しばらく抱きしめあった後、諒が急にテーブルにあったパソコンを開いて、動画を流し始めた。

どうしたのかと尋ねる俺に、また耳元で囁く。

「これなら沢山キスしても、音が漏れない」

俺はその言葉に顔が熱くなるのを感じた。心臓が痛いくらい跳ねる。

諒が俺の頬を両手で包むと、優しい手付きで上に俺の顔を向ける。久しぶりのキスに俺は緊張したままぎゅっと目を閉じると、諒はゆっくり唇を重ねた。

それはもう、何度も何度も唇を重ね、吸われ、舌を入れられ、しまいには俺からやめてくれと懇願したくらい熱いものだった。


満足した顔で帰っていった諒を見送った後、1人部屋で考え込む。

最近・・・いや、前からだけど、キスを重ねるごとに、それだけで満足しない俺がいる。きっとそれは、時折、うっすらと目を開けた時に見た、諒の獲物を捉えたかのような熱い眼差しと、息遣い、重ねる唇が、無遠慮に俺の中をかき乱す舌が、全てが俺を欲しいと、好きだと全身で伝えている諒に充てられているからかもしれない。

そして、密かにそうしたいと願っている自分がいる。

ふとカレンダーに目を向ける。

もう一月も下旬に差し掛かる。来月は諒の誕生日だ。

進みたいと思う自分と、怖いと思う自分、そして、きっと俺は抱かれる。

もう悩む事すら薄れていた。

諒のあの熱い眼差しが確信に変えていく。

だけど、未知な事が怖いことは仕方がない。不安から体を丸めて疼くまる。

いろんな事が頭を駆け巡る中、ふとある人物が頭に浮かぶ。

不謹慎かもしれないけど、話してみたい。

彼なら俺の不安もわかってくれるかもしれない・・・。


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