第24話 クリスマスの計画
グズグズと鼻を啜る俺に、瑞稀が大丈夫か?と声をかけてくる。
不覚にも瑞稀からの嬉しい言葉に感動して、泣いてしまった。
でも、恥ずかしさより嬉しさの方が勝る。
俺は何度も瑞稀の手にそっと触れる。外で手を繋ぎたい時に送る合図。もちろん、外にいる間は繋げないが、瑞稀と決めた愛情表現の一つだ。
瑞稀も気付いているのか、俺が触れると瑞稀も触れ返す。それがまた俺を感動させ、目頭を熱くする。
瑞稀が望んでくれてる俺との未来。
それを叶えたい・・・。
帰りながら、イブの計画を立てる。
母さんの勤務シフトがどうなるかわからないから、学校が終わったら2人でケーキと料理の食べ物を買いに行こうと決める。
それは、母さんが夜勤だった場合、寝ているのを邪魔しない為の瑞稀の配慮だった。昼勤だったら、少し家でのんびりしてから買い物行こうと話す。
それから、クリスマスのプレゼント交換もあるから、今年は互いにプレゼントをやめようと瑞稀が提案してくる。
正直俺は、あいつらには適当にお菓子の詰め合わせでいいんじゃ無いかと思うが、久しぶりだからちゃんとした物を買おうと瑞稀が言うから、渋々その提案を受け入れる。
その代わり、さらっとプレゼント選びという名のデートを確約させる。
あれこれと考えながら、俺達は家路へと辿り着いた。
(お前達、付き合ってるのか?)
その日の夜、純からの通知に俺はチッと舌打ちする。
(何でだ?)
(いや、塾に行く前に忘れ物して家に向かってたら、お前達が抱き合ってたからさ。会話までは聞こえなかったけど)
純からの返事に俺は少し考え込む。俺としては“付き合っている!相思相愛なんだ!“と返したいのだが、瑞稀はどう思っているのかわからない。
多分、話すれば瑞稀は承諾してくれるとは思うが、勝手な憶測で事を進めるわけにはいかない。そう思った俺はしらを切る事にした。
(抱き合うなんて、俺達には特別な事じゃない。それだけ俺達は大親友で仲がいいんだ。余計な詮索するな)
(ふぅん・・・じゃあ、お前の片想いか)
その言葉にイラッとした俺は、思わず携帯を投げつけようかと腕を振りかざすが、グッと怒りを堪える。
最近、瑞稀に言われたばかりだ。
自分の為に沸点を低くしないでくれと・・・瑞稀は俺が瑞稀の事に関して敏感なのに気付いていた。もし、俺があの時、相手を殴りでもして大事になったり、怪我をしたら瑞稀は自分を責めて後悔しただろう。
俺はピクピクと動くこめかみを抑えながら返事を打つ。
(俺の片想いだ。お前に関係ないだろう?邪魔するな)
(関係無いと言えばないが、あると言えばあるかな)
(どういう意味だ?)
(さぁね。あ、クリスマスは参加する。泊まりは無理だけど)
(来るな)
俺の即座の返事に、携帯はぴたりと音を止める。その事が尚更、俺の怒りを煽る。
純が言ってた言葉も、可奈の話も俺をイラただせる。
瑞稀の俺への気持ちは本物だ。だが、余計な不安要素は払拭したい。
その気持ちが俺をイラただせると同時に、焦りを生み出す。
俺はすぐさま瑞稀に電話をかけた。短いコール音の後に、電話の向こうから聞こえる瑞稀の声に俺は安堵する。
(どうした?何かあった?)
「なんでもない。瑞稀の声が聞きたかっただけ。瑞稀、好きだよ。大好きだ」
電話越しでも瑞希が照れているのがわかる。
(お、俺も好きだぞ)
部屋の中にいるだろうに、声を潜めてそう囁く。その姿が安易に想像できて俺は次第に顔が緩み始める。
それから少しだけたわいのない話をして、電話を切った。
俺は携帯を見ながら、ベットに寝転んだ。
大丈夫。
瑞稀は俺との未来を望んでる。
今は瑞稀の言う様に恋人としての絆を強くしなくちゃいけない。
こんな事で揺らいでいる場合じゃない。
俺が瑞稀の気持ちを信じて、瑞稀が俺の気持ちを信じられるように、何があっても互いを信じて揺るがないように、お互いが望んでる未来だけを見よう。
そう自分に言い聞かせながらも、ふと純の恋人との話が思ったより俺にも響いているんだなと気付く。
それでも、俺は瑞稀を手放したくない。
瑞稀にも手を離して欲しくない。
携帯を握りしめた手をおでこに乗せながら、俺は目を瞑る。
そして、そのまま寝てしまった。
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