第23話 クリスマスの計画

あれから相変わらず学校では4人で過ごす事が多くなって、それが当たり前の光景になっていたが、12月を過ぎると流石に純は別行動をするようになった。

受験に向けて、短期集中をすると言って塾に入ったからだ。

今までは転校が多かったので、受験の都度、家庭教師と独学で勉強していたらしいが、中途半端なこの時期に引っ越ししたのもあって、独学期間が長すぎたと冬季の短期にコースに申し込んだとか。

それからは、可奈と三人で過ごす事が多かった。

それというのも、可奈が寄ってくるのもあるが、純と一緒で可奈もモテる。

転校してきてまだ、三ヶ月そこらなのに誰それから告白されたなどの噂が耳に入って来ていた。変なのにも付き纏われたりしてて、それを心配した俺が可奈の家の近くまで付き添っている感じだ。

最初は諒がもの凄い反対していたが、先日の帰り道、加奈の付き纏いの1人が急に割り込み俺達がいるのにしつこく誘っていたのを見て、渋々許可をくれた。

あの時は本当に大変だった・・・。

可奈を庇った俺に突っかかってきて胸ぐらを掴まれた。それを瞬時に引き剥がし、怒り狂った諒を止めるのに、俺と可奈は死に物狂いで諒にしがみついた。

薄々気付いてはいたが、諒は俺の事となると過敏に反応する。

それが嬉しい反面、不安でもある。

だからこそ、今後は気を付けなくては・・・。


「ねぇ、クリスマスにまたお泊まり会したいな」

可奈の言葉に諒が振り返り睨みつける。

「昔みたいにプレゼント交換とかしたいね」

悪びれた素ぶりのせず、無邪気にそう話す可奈を見ながら俺は苦笑いする。

「そうだな・・・美奈もそうしたいだろうし・・・」

俺の言葉に信じられないと言う顔をして、諒が俺を見つめる。

「やった!じゃあ、お兄ちゃんも誘ってみる。多分、お兄ちゃんはお泊まりできないと思うけど、一緒にご飯食べたりはできると思うよ」

はしゃぐ加奈とは別に、諒の顔はどんどん暗くなる。

「じゃあ、みっくん、諒くん、今日もありがとう。ここからは大丈夫だから」

加奈は笑顔で俺達に手を振ると、家路まで駆けていく。俺も手を振って笑顔を返すと、その背中を見届けてから諒に帰ろうと促す。

帰宅中しばらく沈黙が続いたが、俺は勇気を出して諒に声をかける。

「り、諒、24日は空いてるか?」

その言葉に諒が足を止め顔を上げる。俺は顔が火照るのを感じながらも諒を見上げながら諒の目を見る。

「クリスマスは元々美奈が可奈を誘いたいって言ってたから諦めてたんだ。でも、イブなら2人で過ごせるだろ?」

「瑞稀・・・」

「俺だって、恋人とのクリスマスを考えていたんだ。だから、イブは2人きりで過ごしたい・・・ずっと・・・」

そう言い終えると、顔から火が吹くんじゃないかと思うくらいの熱を感じる。

でも、目を逸らさず諒の返事を待つ。

諒は目を潤ませながら、嬉しいと呟き、俺を抱きしめた。

俺は大袈裟だなと言いながら、その返事に安堵して諒の背中に手を回す。

「いつも俺のわがままに付き合わせてごめんな。俺の気持ちを優先させて我慢ばかりさせてごめん」

「いいんだ。可奈の事もわかってた。正直、2人の時間が減るのは面白くないけど、それが瑞稀だから。優しくて真っ直ぐで正義感に溢れてて、それでも押し付けがましい態度を取らない。瑞稀にとってそれは普通で当たり前の事だから。俺もそんな瑞稀に沢山救われたし、そんな瑞稀に惚れたんだ。それに・・・」

「それに・・・?」

「ちゃんと俺との事を考えてるってわかって、本当に嬉しい」

「当たり前だろ?俺は、俺は諒が好きだ。他の誰より一番好きだ。俺の性格だからとか簡単に括って諒にわがまま言って甘えているのは自覚してる。でも、そんな俺に寄り添ってくれる諒の気持ちが俺は嬉しい。だからこそ、恋人として一緒にいる時間は大事にしたい。純の話を聞いて思ったんだ。

俺達は親友としての絆は強い。でも、恋人としての絆はまだまだ弱い。俺は諒と別れたくない。だから、恋人としての絆を諒と築いていきたい。ずっと諒と友達としてじゃなくて恋人として一緒にいたいんだ」

静かに聞いていた諒の腕に力が籠り、俺をきつく抱きしめる。

そして、小さく啜る鼻水の音と一緒に、俺の耳元で小さな声で諒が囁く。

「俺もずっと瑞稀と一緒にいたい」

その声に俺は笑みを浮かべ、一緒だなと呟いた。

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