第22話 お泊まり会
くそ・・・純のやつ、瑞稀を不安にさせやがって・・・。
俺は瑞稀の手をぎゅっと握りながら、天井を見つめる。
さっき、可愛い子好きという純の性癖に、一瞬、瑞稀を狙っているのかとイライラしたが、純の話に思ったより自分も口を閉ざしているのに気付く。
きっと瑞稀も思っているのかもしれない。
俺と瑞稀に似てるって・・・でも、俺は昔から瑞稀を想い続けたきた。
男同士だからとか、そんなのとっくの昔に腹は据えてる。
瑞稀だって周りを気にしてはいるけど、昔から俺を想ってくれてた分、腹は大なり小なり据えているはずだ。
純が言ってたように、俺が寄り添えばいいんだ。
大丈夫、きっと俺達は壊れない・・・自分に言い聞かせるように、瑞稀の手を握ってやる。最初は返される事のなかったその手は、ゆっくりと力を込めていく。
俺はそれに安堵しながらも、ぎゅっと握ったまま離さなかった。
「なんだ?お前達、急に黙り込んで。ちょっと重かったか?」
純が上半身を起こし尋ねてくる。さっきまで黙り込んでいた俺と変わって、口を閉ざした瑞稀の代わりに俺が口を開く。
「・・・今のお前は知らんが、昔のお前は真面目で何にでも一生懸命だった。俺に対しても気持ち悪いくらい一途だったしな」
「ふっ、なんだ。俺を心配してくれてるのか?そりゃ、俺も本気だったから当時はすっげぇ落ち込んだけど、そのあと、女の子と付き合った。まぁ・・・なんかしっくりこなくてすぐ別れたけど、それと一緒に吹っ切れたから大丈夫だ」
明るく答える純に、瑞稀がそっと口を開く。
「・・・きっと次は大丈夫だ。純は昔から周りの人の変化にすぐ気付いてた。相手の事も思いやれる優しい奴だ。好きな相手には健気だしな。きっと、後輩くんも純の事が好き過ぎたんだ。だから、心配かけたくなかったし、その事で傷付いて欲しくなかったんだと思う。だから、離れる事を選んだ。その選択は間違っていたけど、その時はそれしか思いつかなかったんだよ。純もそれに気付いてたんだろ?なら、次は大丈夫だ。例え、その相手が男でも女でも、純の想いは伝わるし、返してくれるよ」
瑞稀の言葉に純はそうだなと小さく呟く。
「まぁ、今はセンター試験が優先だな。いくら成績が良くても集中力が切れたら本番でヘマしちまう。恋愛は当分お預けだ」
その返事に俺達はそうだなと笑うが、純の次に出た言葉にイライラが沸く。
「瑞稀は昔から本当にかっこいいよなぁ。今はすっかり可愛くなっちゃって・・・なぁ、センター終わったら俺とどうよ?」
「断固拒否する」
すかさず返事する俺に純が笑い出す。
「諒の返事は聞いてないいんだが?まぁ・・・可愛くはないが、綺麗な諒を説き伏せるのもいいかもな」
「キモい」
「相変わらずつれないねぇ。まぁ、いいや。とにかく、試験が終わってからだな」
その言葉に終わったらどうするつもりだと言いかけて、ぐっと堪える。
いっその事、こいつに付き合っている事をぶちまけてやろうかっ!?そんな怒りが握っていた手に伝わったのか、瑞稀が握っている手を自分の胸元に寄せて、空いている手で撫でる。
俺は瑞稀へと顔を向け、お得意の悲しい表情を浮かべる。それを見た瑞稀は苦笑いしながら、手を撫で続けた。
「はぁ・・・でもなぁ、瑞稀、一応考えておいて。昔は勇ましかったのに、今の瑞稀はドストライクなんだよね」
俺はすぐさま純に顔を向け睨みつける。
「・・・瑞稀はダメだと言っている」
「だから、なんで諒が答えるんだよ」
「俺は瑞稀の事ならなんでも知っているからだ。瑞稀が困っているだろう」
「それは俺が男だから?」
その問いに瑞稀が違うと声をあげる。
「お、俺も好きなのに男とか女とか、関係ないと思う・・・」
「そっか・・・そう思ってくれるなら、今はそれでいい。2人ともありがとな。2人ならわかってくれると思ってた」
「当たり前だ。俺達幼馴染で友達だろ?」
「あ、何か線引かれたわ。まぁ、いいや。妹と取り合うのも覚悟いるしな」
「・・・それは、どういう意味だ?」
低い声で尋ねる俺に、純はニカっと笑う。
「あいつ、多分、まだ瑞稀が好きだと思うぞ?だって、今まで誰とも付き合った事ないし。まぁ、俺達が引っ越しが多かったのもあるけど、多分、まだ好きなんだと思う」
純の言葉に俺はイライラが治らない。
嫌な予感がしていたフラグが俺の周りに次々と立てられている。
その事が気になって、その日は一睡も出来なかった。
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