第21話 お泊まり会
週末、間を空けずにお泊まり会が開かれた。
理由は簡単。
年末まで二ヶ月を切った。純はいよいよ受験モードに入るからだ。
諒は相変わらずブツブツと文句を言っていたが、寝る場所を俺の部屋からリビングに移した事で怒りを腹に収めたらしい。
寝るまでは俺の部屋で可奈達も一緒にゲームなどをして時間を潰し、それぞれお風呂と寝る準備で別れた。
俺と諒と純は、リビングに布団を運び、邪魔なテーブルなどを退けながら敷いて行く。
「俺、瑞稀の部屋が良かったな。諒は大きくなり過ぎたから、俺と瑞稀で寝たかった」
ブツブツと文句を言う純に、諒が睨みを効かす。俺は苦笑いしながら純を嗜める。
「隣が純でも諒でも、俺のベットは狭いよ。それよりは、ここで昔みたいに寝そべるのもいいだろ?」
「それもそうだな・・・瑞稀は真ん中か?」
「俺が真ん中だ」
話に割って入り、敷いた布団のど真ん中を諒が陣取る。それを見た純は一瞬きょとんとするが、ニヤニヤと笑みを浮かべる。
「わぁ・・・初恋の人と寝れるのか。昔は可奈と諒で瑞稀の隣を競ってて、俺は蚊帳の外だったからな。昔の念願が叶ったってわけだ」
そう言って微笑む純に、諒は心底嫌そうな表情を浮かべる。
「純、揶揄うのもほどほどにしなよ」
俺はそう言いながら、枕を並べていく。純は肩を窄めながら、ゴロンと横になる。
「初恋なんて、幾つになっても色褪せる物じゃ無いだろ?まぁ。昔と違って気持ちは薄れるだろうけど、蘇る事もある」
純の不敵な笑みに俺は内心、ドキリとするが諒の一言で安堵する。
「やめろ。たとえ蘇ったとしても頑として断る。昔も今もお前にそんな気持ちは湧かん。諦めろ」
諒はそう言いながら寝転ぶ。俺もその隣に寝転ぶと布団を肩まで上げる。純はちぇっと舌打ちしながら布団を被る。
「でもさ、俺、あの時で目覚めちゃったんだよね」
「何に?」
俺の問いに純は横を向き、頭に手をやる。
「可愛いもの好き。可愛い子なら男も女もOKになっちゃった」
「えっ!?」
「・・・・」
「なんかさぁ、可愛くて俺の胸に刺さるなら、男でも女でもいいかなぁって。だって、好きなのに性別だけで無理ってなるのは勿体無いだろ?」
「・・・・・」
「そ、その、純は男と付き合った事あるのか?」
「あるよ。俺、これでも一応モテるんだよね。告られる事も何度もあったし、その中で可愛い子がいたら付き合ってた。まぁ、男は1人だけだけど・・・」
「・・・別れたのか?」
「そうだね。中学3年の時に一つ下の後輩から告白されてさ。背もちっちゃくて可愛い子だったんだよね。高2に上がる頃まで付き合ってた。その次の年は俺と同じ高校に入る予定だったんだ」
ほんの少し寂しそうな声でそう話してくれた純が少し気になりながらも、そうかと小さく呟いて話を終わらせようとした。
だが、純はまた寝そべって仰向けになりながら口を開いた。
「俺達子供だったんだよね。俺は平気だったけど、その子、元々可愛い顔だからさ、周りからゲイじゃ無いかって揶揄われてて、きっと俺の知らない所で嫌な思いをしてたんじゃないかな。その内、2人で会うのもなんかコソコソになっちゃって、向こうが受験もあるし、もう疲れたって言い出して別れるしかなかったんだよね。俺がもっと安心させてやれば良かったんだけど、俺は俺でなんでこんなコソコソ付き合うんだ?とか、その子にあたっちゃってたから・・・・その時気付いた。男同士って双方で気持ちを強く持ってなきゃ、簡単に壊れるんだなって。偏見的な周りの目って、怖いんだなって思った」
純の話が何故か俺達に言ってるようで、口を開く事ができないでいた。
男同士・・・それは俺も気にしていた。
だから、なるべく外では気付かれないように諒にも注意していた。
あぁ・・・なんか本当に俺達みたいだ。
周りが気にならない諒は純で、気にしてばかりの俺は後輩くんだ。
いつか俺達もダメになっちゃうのかな・・・そんな想いが更に俺の口を閉ざす。
そんな俺に気付いたのか、諒がそっと俺の手を握った。
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