第20話 再確認

口を開けたまま黙って俺を見上げている瑞稀に、早く風呂に入りなよと促すと、呆然としながら頷き、服を脱ぎ始めた。

俺はあっ・・・と思いながらも、瑞稀が気付くまで口を押さえながら見ていたが、ズボンに手をかけた瞬間に気付き、顔を赤ながら俺を追い出して鍵を閉めた。俺は舌打ちしながら、瑞稀の部屋へと戻っていく。


部屋で携帯を見ていると、見覚えのないグループトークから通知が入る。

グループタイトルを見て、眉がピクリと動くのがわかる。

(仲良し幼馴染み)

そのタイトルが可奈からだとわかる。そのまま退出してしまおうかと思うが、あいつらの動向を知る手立てにもなると思い直し、画面を開く。

そのメンバーにいつに間にか美奈の名前が入っているのを見て、益々抜けれないなと思う。瑞稀の可愛がっている妹には嫌われたくない。

唯一、俺の想いを知っての味方だ。

(ねぇ、みっくん家で昔みたいにお泊まり会したいな)

可奈の言葉に、断固反対だと文字を打とうとしたら、美奈が先に文字を入れる。

(お母さんに聞いてみるけど、多分、大丈夫だと思うよ)

その文字に俺は絶望感を感じる。

(本当!?いつがいいかな?)

(週末ならいつでもいいよ。純くんは来るの?)

(俺は悩み中。もう1人の既読は諒か?お前は来る?)

(諒くんなら、今日も泊まってるよ)

(えっ!?いいなぁ)

(諒が来るなら行こうかな)

来なくていい!!連ねる文字に俺は携帯を持つ手がプルプルと震える。

(お前達が来るなら俺も来る。だが、純は来るな)

(ひどい)

俺の文字に涙を流す犬のスタンプを純が送ってくる。

(みっくんは?)

(お兄ちゃんは今、お風呂だよ)

(おっ、お泊まり会したら、昔みたいに三人で入るか?)

おちゃらけた純の文字に怒りが止まらない。俺は携帯をベットに叩きつけると、怒りのままベットを叩く。

同時に瑞稀が現れて、荒ぶった俺にどうしたんだと駆け寄る。

俺はすぐさま瑞稀を抱き寄せて、怒りが落ち着くのを待つ。

「諒、どうしたんだよ?」

瑞稀が俺の頭を撫でながら心配そうに声をかける。その声に落ち着きを取り戻した俺は、携帯に手を伸ばす瑞稀に差し出す。瑞稀はそれを取って並べられた文字を見て苦笑いした。


ピコピコと自分の携帯から返事を返す瑞稀を抱きしめながら不貞腐れていると、瑞稀が俺の背中を優しくさする。

「諒、お泊まり会は決まりそうだ。でも、お風呂は一緒に入らない。布団は申し訳ないけど、純と一緒になるけど、大丈夫か?」

「・・・瑞稀とベットで寝る」

「狭いだろ?」

「平気だ。瑞稀と寝る」

完全に不貞腐れモードの俺に、瑞稀は呆れたようなため息を吐く。

「諒、今日は下で布団敷いて一緒に寝ようか?」

瑞稀からの申し出に、俺は満面の笑みを浮かべて頷く。それを見た瑞稀が笑みを溢す。俺は気が変わらない内にと布団を敷き始める。

「話はいいのか?」

「布団に入りながら話す。でも、あいつらの話ならしない。2人の時は2人の話をしたい」

「わかった」

瑞稀は俺が布団を敷いている間に、学校の準備を済ますと部屋の明かりを小さく灯す。それから、布団に入り、俺に向かって隣をトントンと叩く。

俺はその音に釣られて布団に入ると、すぐに瑞稀を抱きしめる。

「諒、いつも気遣ってくれてありがとうな。俺も諒の笑顔を誰より近くで見ていたいと思ってる。だから、2人の時は諒だけを見るから、諒も俺だけを見てろ」

「当たり前だ。俺はいつでもどんな時でも瑞稀を見てる。瑞稀だけを見て想ってる」

俺が自信満々に答えると、瑞稀はそうだなと笑った。

「瑞稀、俺、今日頑張ったよな?」

「そうだな。頑張って我慢してた」

「じゃあ、ご褒美ちょうだい。これからも頑張るから、その度にご褒美くれ」

「・・・・ご褒美って?」

「瑞稀からのキス」

俺の言葉に一瞬固まるが、瑞稀はモソモソと動いて俺を見上げる。そして、ゆっくりと俺にキスをする。

「もう一回・・・」

強請る俺に呆れながらも、またそっとキスをする。俺が強請るのがわかるのか啄むようなキスを何度かすると、満足気な俺と打って変わって、瑞稀が躊躇った表情をする。

「どうした?」

「・・・・お前はしてくれないのか?」

瑞稀の照れたような声に俺はたまらなくなり、抱きしめている腕に力を込める。

「く、苦しい・・・」

「瑞稀・・・俺のキスは違うぞ?いいか?」

「・・・・キスだけ・・・うっ・・」

瑞稀の返事が終わらないうちに俺は、瑞稀の唇を捉える。舌を入れて絡ませると、瑞稀の口から吐息が漏れる。その吐息に俺は更に貪り付く。

何度も離れては、また貪り付く俺は自然に手が瑞稀の服へと入っていく。それに気付いた瑞稀に殴られ、俺はムラムラと戦いながらトイレへと立ち上がった。


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