第19話 再確認

「瑞稀・・・今日、泊まりたい」

可奈達が帰宅してからすぐの事だった。諒が項垂れたままボソッと呟く。

「明日も学校だぞ?明後日の金曜まで待てない?」

俺がそう言うと、諒が首を横に振る。俺は軽くため息を吐いて、諒を見上げる。

「わかったから、明日の準備して来い。俺も準備とか風呂とか済ましておく。

夜更かしは出来ないから、話は少しだけな?」

俺の言葉に、諒は顔を上げ、嬉しそうに準備してくるといい、走って行く。

仕方ないなと俺は苦笑いしながら、家に入り、部屋に戻ると諒の携帯や鞄があるのに気付く。

ふっとわざとか?とも思いながら、今日はきっとヤキモチを沢山しただろうから、甘やかしてやるかと笑みを溢した。


10分もしない内に戻ってきた諒に、服を抱えていた俺は驚く。

「早いよ・・・俺、まだ風呂も入ってない」

「いいよ。ゆっくり入ってきて」

諒に促されながら、俺は部屋から出ようとするが、諒の髪が濡れているのに気付く。

「おい、まだ髪が濡れてるじゃないか・・・」

「ごめん。急いで入ってきたから・・・」

「まったく・・・ほら、一緒に下まで行ってタオルで髪を拭くんだ」

「わかった」

諒は頷くと俺の後をトコトコ付いてくる。脱衣所まで来ると棚にあるタオルを取って、諒に屈むように声をかけ、髪を拭く。

「諒・・・今日はごめんな」

「何が?」

「色々とだよ」

「瑞稀が謝る事ない。空気を読めないあいつらが悪いんだ」

諒の返事に俺はふふっと笑う。

「変わらないな。昔はあの2人に邪魔されると、泣いて俺にしがみついてた。いや、成長したな。今は嫌がってはいるけど、我慢出来てる」

偉いなと言葉を足すと、髪を拭いている俺の手を掴んで、諒が呟く。

「俺は、昔から瑞稀の間を邪魔するあいつらが嫌いだ・・・」

「そうだな・・・でも、心底嫌ってるわけじゃないだろ?お前は昔から何に対しても好き嫌いがはっきりしている。不機嫌な顔はするけど、加奈達に邪険な態度はしないじゃないか」

「それは・・・瑞稀があいつを嫌ってないから・・・正直、俺は瑞稀と2人なら他の誰もいらないと思ってる。でも、昔、瑞稀が言ってた事も理解しているし、瑞稀を俺の殻に閉じ込めたく無いんだ。俺だけ見てて欲しいし、俺だけに笑って欲しい。でも、俺だけだと瑞稀の為に良くない。瑞稀が幸せで笑っててくれればいいんだ。その隣に俺がいれればそれでいい」

少し寂しそうに微笑む諒を見ていると、胸がギュッと掴まれた感覚になる。

諒に凄く大事にされている気がして、嬉しくてたまらない。

「諒、俺の中で一番で、最優先なのはいつでも諒だ。それだけは忘れれるな。

一番大切で大好きだぞ」

俺は満面の笑みで諒に言葉を返す。それを見た諒は、俺を抱きしめて囁く。

「俺も世界で一番大切で、大好きだ」

その言葉を聞きながら、俺は諒の背中に手を回して撫でてやる。

ガチャっ

ドアが開く音が聞こえて俺は慌てて体を剥がすと、美奈が立っていた。

「まったく、どこでもイチャイチャして・・・気をつけなさいよね」

そう言いながら、洗濯カゴに服を投げ込むみ、すぐに脱衣所を出ていく。

俺は固まったまま動けずにいたが、諒はニコニコと俺を見つめていた。

美奈の意味深な言葉に、どこまで何を知っているんだ?と焦りながら、諒に目をやると相変わらずニコニコと微笑み続けていた。

「・・・・いつまで笑ってるんだ?俺は風呂に入るから出ていけ」

「なんで?俺、ドライヤー借りて髪を乾かすから、気にせず入っていいよ」

「・・・服、脱ぎたいんだが?」

「どうぞ・・・あっ、大丈夫。後ろ向いてるから」

「お前がここにいたら、またあらぬ誤解を招くだろっ!」

「大丈夫だよ。美奈ちゃんは知ってる」

その言葉に俺は目を大きく見開き、諒を見上げる。

「あっ、付き合ってる事は知らない。ただ、俺が瑞稀を好きってのは知ってる」

「な・・なんで?」

「バレたってのもあるけど、俺も隠さなかったから。それに・・おばちゃん達も薄々気付いてると思う。俺の気持ち。あ、母さんには昔から言ってる。俺は瑞稀と結婚するって」

少し照れたようにハニカム諒の言葉に、俺はただ口を開いたまま見つめるしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る