第18話 思わぬ訪問者

「くそっ、嫌な予感しかしない」

俺は家に帰るなり鞄をベットに叩きつける。幼少の頃の嫌な記憶が沸々と蘇ってくる。

俺に対して頬を染めながら女扱いをしてくる純、いつも並んで手を繋いでいた俺と瑞稀の間に割り込んでくる可奈。邪魔者でしかない。

少しずつ瑞稀との蟠りも無くなって、ラブモード全開の青春学校生活に暗雲が立ち込める。きっと瑞稀は2人を邪険に扱わない。

さっきだって、されるがままだった。

・・・・まぁ、その後、俺のご機嫌取りで瑞稀から抱きついてくれたのは、嬉しかったけど・・・・だが、明日からあの2人には要注意だ。


なんだ、この光景は・・・・

瑞稀の部屋で邪魔者2人を交えて、談笑している。

俺は不機嫌な顔したまま、ペットボトルのジュースを啜る。

予告した通り2人は翌日編入してきた。一学年5クラスはあるのに、何の因果か可奈は瑞稀と同じクラスになり、隣のクラスの俺はいつもように休み時間度に瑞稀の元へ通うが、毎度可奈がベッタリと隣をキープしていた。

ならば昼にと思っていたのに、何故か純まで加わり昼食を済ませる。

放課後まで付いてくる始末だ。

あげくの果てに、瑞稀の母親にも挨拶したいと家にまで着いてきた。案の定、瑞稀は断れず、招き入れる。その不機嫌気周りない光景が今だ。

「それにしても純、一年も無いのによくこんな時期に転入したな」

瑞稀が隣にいる純に話しかける。純はまぁねと答えながら笑う。

「2人に会いたかったのもあるけど、希望大学がここから近いんだ」

「H大学希望なのか?」

「そう。教師希望なんだ。それに、相変わらず親は転勤ばかりだから、一緒に住めるのも残り僅かだからか、父親はそのまま居残る事を許してくれたけど、母親が反対してさ。大学行ったらどうしても一人暮らしだろ?転勤にはついて行けないから。それから就職なんてしたら、転々と移動する親とは中々会えない。そうなると親孝行なんてそうそう出来ないしね」

純の口から真面目な返答が返って来た事に俺は驚く。

よく考えたら、こいつは昔から真面目でしっかりした子供だった。

俺に対しては変態的な態度だったが、母親も転勤でも困らない在宅ワークをしていて、そのせいで忙しい両親に変わって可奈の面倒をよく見ていた。

そこは俺もすごいと思っていた。

瑞稀も感心しているのか、純を偉いと褒め称える。まぁ、そこは俺も我慢した。

だが、俺の忍耐度を試すかのように、可奈が瑞稀の腕にしがみつく。

「私はみっちゃん一択よ。本当に会いたかったんだから」

そう言って無邪気に笑う姿に、俺は持っていたペットボトルをペコンと鳴らす。

その音に気付いた瑞稀が苦笑いをする。

そして、トイレで席を立った純がいない隙を見計らって、隣の席をポンポンと叩いた。俺は誘われるがまま、急いで瑞稀の隣をゲットする。

戻ってきた純が一瞬動きを止めるが、俺はそれを無視する。だが、純は何故かニコニコしながら俺の隣に腰を下ろした。

「相変わらず諒は瑞稀にベッタリなんだな」

「当たり前だ。瑞稀の隣は誰にも譲らん」

俺の返事に純は声を出して笑う。

「それにしても諒くん、本当に大きくなったね」

可奈が俺を見ながらため息を吐くように話しかける。俺は返事の代わりに、いつまで経っても話さない可奈の腕を睨みつける。

「俺もびっくりだよ。でも、まぁ、顔は綺麗なままだな」

純がニタニタ見ながら俺を見てくる。

「体は大きくなったけど、諒は昔も今も可愛い諒だよ。何にも変わらない」

瑞稀の言葉に俺は嬉しくて口元を緩めながら瑞稀を見つめると、瑞稀も微笑み返してくれた。

すると、純が突拍子もない言葉を投げかけてきた。

「綺麗な諒もいいけど、昔は勇ましかった瑞稀が諒の隣にいると可愛く見えるな」

その言葉に俺は固まる。

こいつ・・・こいつも瑞稀狙いかっ!?

俺は純を睨みつけるが、純はお構いなしと言わんばかりにニコニコしながら瑞稀を見つめていた。

絶対に瑞稀とのラブ青春を守ってみせる!!

俺は純と可奈を交互に睨みつけながら、瑞稀に擦り寄った。

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