第17話 思わぬ訪問者

それは突然の出来事だった。

いつもの様に諒と帰宅していた学校の帰り道だった。

「みっちゃん!」

突然懐かしい呼び名に視線を向けると家の門の前に2人の男女が立っていた。呆然とその2人を見つめていると女の子が駆け寄って来て俺に抱きつく。

「みっちゃん!久しぶり!」

その女の子は満面の笑みで俺の顔を見つめてくる。俺はその子の顔をまじまじと見つめ返す。

「・・・・もしかして、可奈?」

「当たり!」

名前を当てられて嬉しそうな表情で手を握ってくる。

「久しぶりだなっ!どうしたんだ?」

「こっちに戻ってきたの!ほら、お兄ちゃんも一緒だよ」

そう言って振り返ると後ろの方からゆっくり歩いてくる男と目が合う。

「純?」

「瑞稀、久しぶり」

純は微笑みながら近寄ってくると俺の頭をポンと叩く。

「おぉっ!久しぶりだな!」

「あぁ。今日は諒は一緒じゃ無いのか?」

「何言ってんだ?さっきから隣にいるじゃないか」

俺の言葉に2人はキョトンとして、俺の隣に立っている諒に視線をやる。諒は2人を何故か睨み付けて不機嫌な顔をしていた。

「嘘だ・・・なんだ、このデカイ男は・・・」

諒の姿にショックを受けたのか、純の顔が少しずつ青ざめる。その隣で可奈がわぁ・・・と声を漏らす。

「諒ちゃん、大きくなったね・・・。顔は綺麗なままだけど、どっから見ても男だ」

「相変わらず騒がしくて気に触る兄妹だな」

諒は2人に向かって刺々しい言葉を返すが、諒の口から出た低い声に純はまたショックを受け、可奈は感心のため息を溢す。


キシ ジュン可奈カナは幼少の頃の友達だった。

幼稚園から小3まで一緒だった。いわゆる転勤族だった家庭だったので、途中から転校して行ったが、俺と諒によくくっついて歩いていた。

可奈とは同じ歳で転入してきたばかりの頃、なかなか馴染めずよく1人で泣いていた。その事をよく揶揄われてて、諒同様に俺はいつも可奈を庇ってよく相手と喧嘩していた。

可奈は俺の事をよくヒーローみたいでかっこいいと言ってくれて、それからは凄く懐いていた。

純はと言うと、一つ上なのにしっかりしていてよく母親が可奈を迎えに来れない時は幼稚園まで迎えに来ていた。

その時に諒と出会い、あの頃は女の子みたいな容姿だった諒に惚れたらしく会った途端、好きだと公衆面前で告白をしていた。その後、男だと知ってショックを受けていたが、それでもよく諒にくっついていた。

諒は俺にくっついていたから、自然に4人で遊ぶのが日常になっていた。


「明日からみっちゃんの高校に編入するの。お兄ちゃんはあと少しだから向こうに残るって話だったんだけど、来る街がここだって知った途端、着いてくるって言い出して一緒に来たの。もちろんお兄ちゃんも同じ高校だよ」

「そうだったのか・・・。本当に久しぶりだな。よく俺達を覚えていたな」

「だって、私の初恋はみっちゃんで、お兄ちゃんの初恋は諒くんだもん。忘れる訳ないじゃん」

突然の可奈の爆弾発言に俺は一瞬たじろぐが、後ろからは殺気混じりの視線が背中に感じ取れていた。

「まぁ・・・俺の初恋の面影は無惨に壊れたけどな」

純はそう言いながらチラリと諒に視線をやる。

「何が初恋だ。俺にとっては黒歴史だ」

「ひどいなぁ。まぁ、来週からよろしくと言う事で、今日は顔見に来ただけだから。まだ、引越しの片付けも終わってないだよ。ほら、可奈、顔見れたんだから帰らないと母さんに怒られるぞ」

「え〜・・・みっちゃん、また可奈達と仲良くしてくれる?」

「当たり前だろ。ほら、早く行かないと・・・」

俺の促しに可奈は頬を膨らませるが、急にニカっと笑い、また俺に抱きつく。

「またね、みっちゃん」

そう声をかけると可奈は体を話し、手を振りながら純の元へと駆けていく。

俺もつられて手を振り見送るが、後ろではいつまでもご機嫌斜めの諒が睨んでいた。俺は深いため息を吐くと、諒の方へ振り向き、諒をギュッと抱きしめた。

「お口直し。ほら、機嫌直せよ」

俺がそう言うと、諒は俺をぎゅっと抱きしめ返す。

「くそっ、あいつの匂いがついてる」

諒はそういうと、俺を持ち上げ胸元に自分の頭を擦り付ける。急に持ち上げられた事に驚いたが、ヤキモチを焼いてマーキングみたいな事をする諒が可愛くてしばらくされるがままになっていた。

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