第15話 二度目のデート
誕生日の衝撃発言からしばらく呆然とした日々が続いていたが、諒からデートのお誘いを受けた。
一瞬戸惑いはしたが、正直嬉しい。
俺が言った言葉を覚えててくれたからこそ、誘ってくれたんだと思うと尚更嬉しい。諒のこういった気遣いが好きだ。
昔から俺に対しての気遣いがすごいと思う。付き合う前は優しすぎる性格が仇となって、無理して俺に合わせてくれてるのかなと心配してたけど、付き合ってみて初めて見る友達としてではない俺を見る諒の表情や気持ちが、大事にされているんだなと実感できる。
実際、ただの幼馴染で友達だけの関係だったら、ここまで深くお互いの気持ちを話し合うなんてなかったかもしれない。ただ漠然と互いに大事な友達だという認識しかできなかったはずだ。
特に、今までしてこなかったお互いの恋愛観なんて尚更だ。
今思えば、互いに好きだったから、もしそんな話をして望みがないと確信してしまうのが怖かったのかもしれない。
あの時、勇気を出して良かったと自分を褒めたいくらいだ。
「今日はどこに行くんだ?」
家を出るなり俺は諒に尋ねた。今日は諒プランで、前日まで内緒だと何も聞かされていなかったからだ。ただ、動きやすいラフな格好を着てきてとしか言われていない。楽しみすぎて笑みが止まらない俺を見て、諒はふふッと笑う。
「今日は少し体を動かそうと思って。瑞稀、またモヤモヤ考えてるだろ?だから、体を動かしたら少しは気が晴れるかな?っと思ってな。瑞稀はいつも一所懸命だから、考えすぎてたまに変な方向に行く。それは悪い癖だ。今日は何も考えずに楽しんでくれたら嬉しい」
「・・・・ごめん。また、心配させちゃったな」
俺が少し俯き加減でそう呟くと、諒は俺の頭にポンと手を置き、優しく撫でる。
「そうやってすぐ謝るのも、悪い癖だぞ。いつも言ってるだろう?俺は謝って欲しいんじゃないって。こう言う時はありがとうって言って欲しいな」
諒はそう言って微笑む。俺もその笑みに安堵して自然と口元が緩む。
「わかった。諒、いつもありがとう。今日、楽しみにしてる」
「よし、今日のコースはスポーツラウンドだ。ボウリングに、バッティングに、バスケもやるか?あと、何があったっけ?」
考え込む諒にそんなにやるのか?と笑いながら答える。身長差があっても諒の首元がキラリと光っているのが見える。
「諒、これ、ありがとう。最初は恥ずかしかったけど、いいな、コレ。何か付き合ってるって実感が湧く。思ってた以上に嬉しい。ありがとう」
俺は首にぶら下がるチェーンを少し引っ張り、それを諒に見せて微笑む。
「瑞稀・・・可愛すぎる。そんなに喜んでくれると思わなかった。逆に俺が嬉しいよ。付けてくれてありがとうな」
少し顔を赤ながら本当に嬉しそうに笑う諒を見て、胸がトクトクと高鳴る。
あぁ・・・諒のこんな顔を見れるなんて、思ってなかった。本当に諒が好きだ。
好きだと言えて良かった。好きだと言ってもらえて本当に良かった。
「諒、大好きだよ。俺、幸せだ」
不意に口からそんな言葉が出て、俺は慌ててそっぽを向く。熱くなる耳を触りながら、早く行こうとぶっきらぼうに言いながら歩く速度も早くなる。
黙ったまま歩き進めているとふと、急に反省モードに入る。さっきの言葉は本心だから言った言葉は後悔しないけど、過敏に恥ずかしがる所は直した方がいいよな・・・。
こういった態度はきっと諒を傷つけてしまうかもしれない。それでも、諒はきっと自分なりに解釈して、俺の為を思って何もなかったような素振りをする。
諒は本当に優しい奴だから・・・・そう思いながら、振り向くとさっきの場所から一ミリも動かず、呆然と立ち尽くしている諒の姿が見えて俺は大きな声で声をかける。
「何してるんだよ?早く行こう。楽しみすぎて待ってられないよ」
俺の声で我に返ったのか、諒が慌ててかけてくる。やっと隣に来た諒の手の甲に軽く触れる程度に自分の手の甲を当てる。
すると、諒が手を凝視したまま、また固まっていた。
「そ、外では堂々と手を繋げないから、これくらいはいいかなと思って・・・ダメか?」
「えっ!?あっ!全然イヤじゃない!むしろ嬉しい!」
慌てて答える諒に、声がでかいよと言いながら笑う。
「なんか、いいな・・・こんなんでも何か普通にカップルみたいでいいな」
俺はニカっと笑いながら諒を見上げると、耳を真っ赤にして諒は何度も頷いていた。
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