第13話 誕生日
あれからあっと言う間に時間が過ぎた。
1週間ほどまともの諒の顔が見れずにいたが、最近になってようやく落ち着いてきた。諒は少し不満そうな顔をしていたが、俺の気持ちが追いついていかなかった。でも、いつでも諒は俺の気持ちを尊重してくれる。
その事に安堵していたが、いきなり俺の誕生日前日、お泊まりで誕生日祝いをしないかと持ちかけられた。
最初はホテルでと言っていたが、即答で断った。
ならばと食い下がらない諒は、俺の家でしようと頼み込んできた。
俺はどうにも諒のお願いスタイルに弱い。
あんな図体がでかい奴が、目をうるうるさせて見つめてくると断りきれない。
何より顔が良すぎて、迫られると妙な汗が出てくる。
俺は観念した・・・。
「誕生日、おめでとう!瑞稀」
諒の家の玄関を開けると、諒は持っていたクラッカーを鳴らし、嬉しそうにニコニコしていた。いそいそと俺の頭に三角帽子を乗っけて、俺の背中を押し、リビングへと押し進める。
「諒、そんなに押さなくても自分で行くから」
「だって、早く席について欲しいんだよ。今日は俺のお手製だからな」
そういうと自慢げにテーブルの上の料理を披露する。テーブルには俺の好きなチキンやサラダ、パスタに何かの巻き物が乗せられていた。
「これ、全部作ったのか?」
「そうだ。ケーキ以外は俺の手作りだ。俺は元から料理は得意だろ?これくらいなんて事ない」
「凄いな・・・ありがとう、諒。楽しみだ」
「ほら、皿にとってやるから座りな」
俺を席に座らせると、横に添えてあった取り皿に、次々と乗せていく。この前まで気まずかったのが嘘みたいに楽しい時間が流れて行った。
「瑞稀、コレ」
照れた顔で諒がプレゼントを渡してくる。その顔に釣られて俺も顔を赤らめる。
「ありがとう。開けていい?」
「おぉ」
ガサガサと包みを開けると、箱の中身はネックレスだった。細いシルバーのチェーンに細めのリングが付いている。
「本当はリングだけにしたかったけど、瑞稀、それは嫌だって言ってただろ?だから、これならいいかなと思って。チェーンも細いし、リングも細めだから多分、目立たないはず」
「・・・色々考えてくれたんだな。いつもありがとう」
俺は心底嬉しくなって、そのネックレスを取るとすぐに首に付ける。
「どう?似合う?俺、ネックレスとか初めてだ」
「んっ、いい感じだ。それ、シルバー925って言って、風呂とか海入っても錆びないんだって。まぁ、定期的に手入れは必要だろうけど、瑞稀にはずっと付けてて欲しいから、少し奮発した」
「えっ?いくらしたんだよ?」
「プレゼントの値段聞くのはダメだろ?いいんだ。俺達が付き合って初めての記念日だからな。そのリング、裏見てみろよ」
そう言われて、リングの裏を見ると小さく諒の名前が彫ってある。
「なんで、諒の名前なんだ?」
「実はだな・・・俺も作った」
諒は自分の襟元からチェーンを引っ張り、お揃いのネックレスを見せびらかす。
「お、お前・・・誰かに見られたらどうするんだよ?」
「大丈夫だ。友情の証とでも言っておけばいい。なぁ、休みの日くらいは一緒に指にはめないか?」
「えっ!?それこそ、誰かに見られたら言い訳できないだろ?」
「チェッ。でも、まぁ、いいか。秘密の恋ってのも燃えるらしいからな」
「秘密の恋って・・・」
諒はニカっと笑って、俺の手を取る。
「瑞稀、おめでとう。今年も一緒にお祝いできて嬉しいよ。この先は恋人としてずっと2人で祝おう。ずっとずっと一緒にいたい。好きだ、瑞稀」
「俺も・・・俺も好きだ。来年も再来年も今度は恋人としての思い出を作ろう」
そう言って俺も添えられた手に、自分の手を重ねる。
それからそっと触れるだけのキスをする・・・・触れるだけの・・・・
「おい、この手はなんだ?」
諒は啄むようにキスをしながら、モゾモゾと服の裾を探していた。
「少しだけ触りたい」
「ダメだ!いいか、俺達には色々と段階が必要だ。俺はあれから調べた。そりゃもう朝までずっと。それで、俺達は進むのが早い事に気付いた。落ち着いて段階を踏もう」
俺のセリフに、諒がハテナ顔で見つめてくる。俺は体勢を立て直し、諒へ段階についての話を始めた。
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