第12話 背伸びの仕方
「諒・・・」
瑞稀に名前を呼ばれ、映画に目を向けたまま空返事をすると、ほっぺにむにゅっと柔らかいものが当たる。
俺は慌てて振り向くと、瑞稀が真っ赤な顔でありがとうと呟いた。
えっ?何が?あ、さっきの話?えっ?それでお礼にほっぺにチュウ?
「・・・・瑞稀」
「なんだ?あ、ほら映画始まってる」
照れ隠しなのか瑞稀が慌てて画面に顔を向けるが、俺は繋いだ手を引き寄せ瑞稀を抱きしめた。
「可愛すぎるんだけど?はぁぁ・・・2人きりの時にそんな可愛い事しちゃダメだろ?」
「何がだよ!?諒、映画見ようぜ?なっ?」
「いやだ。もう映画なんてどうでもいい」
俺はそう言うと、体を離し瑞稀へ顔を近づける。瑞稀も気付いたのか、そっと自ら目を閉じてクイッと顔を上げキス待ちをする。
「・・・あぁ、もう・・・」
俺はそうぼやくと可愛すぎる瑞稀の唇に口を当てる。何度か軽いキスをすると、大人しくされるがままの瑞稀が可愛くて、ついぺろっと唇を舐める。
瑞稀の体がビクッと跳ねるが、俺は何度もキスをしながら開けてと合図する様に舌を唇に這わせる。でも、中々開いてくれなくて、ダメなのかと諦めかけた時、脳裏にある考えが浮かぶ。
あ・・・わからないのか・・・そう思った俺は小さな声で瑞稀に囁く。
「なぁ、口開けて・・・」
「えっ?」
戸惑った様に瑞稀が聞き返すが、俺は小さく開かれた口を逃さずにそのまま自分の唇を押し当てる。その隙間から舌を忍び込ませ、瑞稀の舌を絡めとる。
「り・・りょ・・・ふぅ、ま・・」
甘く途切れる吐息に混ざって俺を呼ぶ声がするが、ピクピクと僅かに反応する瑞稀が可愛くて後退りする瑞稀をベット側まで追い詰め、腰に片手を絡め、逃げないようにもう一つの手を頭に添える。
しばらく堪能した後、そっと唇を離すと、瑞稀はうっとりした表情で俺を見上げて放心していた。それを見た俺の背筋にゾクゾクと快感が走るが、グッと耐えて瑞稀を抱きしめる。
「ごめん、やり過ぎた。瑞稀が可愛すぎてやめれなかった」
「大丈夫・・・」
まだ放心状態なのか、小さな声で瑞稀は短い返事をする。正直、辛い。
ムラムラでもう1人の俺が痛い。
でも、せっかく頑張っている瑞稀に、これ以上無理をさせたくない。
下半身が当たらないようにそっと離れようとすると、瑞稀の足の間に入れていた俺の膝に微かに固い物が当たった。
え・・・?
俺の想像が一気に膨らむ。これは・・・どうしたらいいんだ?
多分、瑞稀も・・・いや、でも、ここは気付かないふりしてやり過ごすべきだ・・・だけど、瑞稀もそうなら・・・俺の中でいろんな葛藤が走る。
すると、我に返ったのか瑞稀が真っ赤な顔をしてトイレに行ってくると立ち上がり、部屋を出ていってしまった。
俺の方がトイレ必要なんだが・・・?
そう思いながら、瑞稀が戻るまでコレを何とかしようと頭の中で数式を唱えた。
しばらくして瑞稀が戻ってきたが、何となく気まずい雰囲気になり、居た堪れなくなったのか瑞稀が今日は帰ると呟き、帰ってしまった。
やってしまった・・・怒ったのか?俺は青ざめベットに顔を埋める。
俺の馬鹿野郎!せっかく一ヶ月も耐えてきたのに、どうして我慢できなかったんだ!?あぁ・・・瑞稀ぃ・・・泣きそうになる気持ちを押し込め、ズルズルと体を起こすと、携帯を手に取る。
取り敢えず、謝罪のメール・・・なんて打とうか・・・先にごめんと謝るべきだよな・・・不安からか手が震えるが、何とか打った(ごめん)の文字だけを送信する。
すぐには来ない返信に鼓動が激しくなり、止まらない。
ピコンッ
急になった携帯の音に焦り、落としそうになる。消えた画面をそっと明るくすると、表示される瑞希の名前・・・そこには(嫌じゃなかった)とだけ書かれていた。
嫌じゃなかった・・・まじかっ!?
目を疑う様に何度もその文字を読み返す。それからまた通知音がなり、瑞稀からのメッセージが届く。
(まだどっちが抱くとか決めてない。今度話そう)
え・・・?抱く、抱かないは置いといて、あのまま進めてもOKだったって事?
惚けた瑞稀にあのまま俺が進めてたら、あわよくば抱けたって事?
とてつもない後悔が押し寄せ、携帯を握りしめたまま俺はまたベットに顔を埋めた。
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