第10話 デートの後・・・

なんでこうなるんだ・・・

目の前で涙を溢す瑞稀を見ながら、ずっとこんな事で悩んでいた瑞稀にも腹立つし、気付いてやれなかった自分にも腹が立つ。

瑞稀がどんな方向でも突っ走るタイプだってわかってたのに・・・

「なぁ、瑞稀・・・泣くなよ」

瑞稀の頬に手を這わせ、涙を拭う。ずっと俯いたまま、声を必死に我慢して涙を溢す瑞稀の姿に居た堪れなくなって、瑞稀を抱き寄せる。

「一つだけ聞いていいか?俺と恋人になった事を後悔してる?」

そう尋ねると、腕の中で瑞稀は首を大きく振る。

「じゃあ、聞いて。俺はどんな瑞稀でも好きだ。俺にとって瑞稀は昔からヒーローで、かっこよくて、誰にでも優しくて可愛い。勉強云々とか背とか関係ない。それに、俺はずっと瑞稀に守られてたよ?瑞稀と違って俺は人付き合いは苦手だ。そんな俺を連れて友達を作ってくれたのは瑞稀だ。まぁ、俺は瑞稀だけ居ればそれでいいけど、昔、俺がそう言ったら瑞稀、怒っただろ?

この先大きくなって行けば行くほど、ずっと一緒が出来ない時がある。そんな時に俺が1人でいるのは嫌だって。そう言って俺を守りながら支えてくれたのは瑞稀だ。俺はそれが嬉しかったし、弟分として可愛がられてるなって時はあったけど、それも心地よかった」

俺は瑞稀から体を離し、瑞稀の頬を両手で包み、俺の方へ顔を向けさせる。

「俺が我慢してたとしたら、それは俺じゃない誰かが瑞稀の側にいた時だ。ただの友達じゃ超えられない壁を感じた時だ。瑞稀に対して我慢してたわけじゃない」

話を聞きながらもグッと唇を噛み締めながら涙を溢し続ける瑞稀に、笑顔で伝える。

「俺は瑞稀が世界中の誰より好きだ。このまんまの等身大の瑞稀が大好きだ。俺は瑞稀にとって大切な幼馴染で、一番の親友で、愛しい恋人になりたい。だから、これからは何でも話してくれ。一番に頼ってくれ」

「うっ・・・うう・・・」

俺の言葉に少しづつ声を漏らし始める。それから、ぎゅっと俺の服を掴み、何度も頷いた。俺は泣くなよと少し揶揄い気味に囁き、また瑞稀を抱きしめた。


しばらく瑞稀が落ち着くまで抱きしめてやると、腕の中でモゾモゾと動き出し、もう大丈夫と瑞樹が顔を上げる。

俺は側にあったティッシュを引っ張り、何枚か取り出すと瑞稀の頬にそっと当てる。俺のされるがままになっている瑞稀が可愛くてしょうがない。

「諒くん〜」

下から瑞稀のお母さんが呼ぶ声がして、部屋のドアを開けて返事する。

「お母さんに一言連絡して、今日はそのまま泊まって行きなさい」

「え?」

「仲直りできた?さっき、来た時なんか揉めてたから・・・ごめんね、また瑞稀が暴走してるんでしょ?昔から変わらないんだから、まったく。いい方向にだけ突っ走ればいいのに、あれでいて案外、グズグズタイプなのよね」

困ったような呆れたような顔をするおばさんに、会話の内容を聞かれなくて良かったと苦笑いする。

部屋に戻ると瞼が腫れた瑞稀が何だった?と尋ねてくる。

「会話までは聞かれなかったけど、俺たちが喧嘩していると思ったらしい。それで、仲直りしながら泊まってけって」

「あ・・・ごめん」

「もう謝るなって。先、風呂は入ってこいよ。俺は着替え持ってくるの、面倒だからそのまま家で風呂入ってからまた来る」

瑞稀の頭を優しく撫でた後、俺は家に戻って速攻で風呂に入り、また瑞稀の部屋へ向かった。


部屋に戻ったら瑞稀はまだ風呂から出てきてないようで、俺は先にベットに潜り込む。

おばさんが布団を用意してくれていたが、そこに寝る気はさらさらない。

狭いと瑞稀に怒られるだろうが、今日は一緒に寝たい。

それに、家で風呂に入りながらあれこれ瑞稀の事を考えてて、ふと思い出した。

瑞稀の言ってたキスって何の事だったのか・・・それが気になってしょうがない。

ガチャリとドアが開く音が聞こえ、視線をやるとドアの前で固まっている瑞稀がいた。

「お前・・・いい、今日はお前がベットで寝ろ。俺が下で寝る」

そう言いながら、ベットの側に来ると用意されていた布団を敷き始めた。

俺は瑞稀の手を掴み、ベットへ引きづり込むと、いつも枕元に置いてある電気のリモコンを取り出し、素早く電気を消す。

「お前、何してるんだよ!下にみんながいるんだぞ。それにデカいお前とだとベットが狭い!」

「いやだ。今日はここで一緒に寝る。沢山泣かせたから一緒に寝たい」

俺がいい放つと暴れていた瑞稀の動きが止まり、大人しくなる。

「それに聞きたい事がある」

「何だよ・・・?」

「瑞稀が最初に言ってたキスって何だったんだ?」

俺の問いに瑞稀が完全にフリーズする。

「俺とキスしたかったのか?」

更に問い詰めると、瑞稀はゴニョゴニョと話始めた。

「俺がリードしてキスすれば、少しは主導権取って自信が付くかなと思ったんだよ・・・・」

瑞稀のその言葉に胸がギューっと掴まれた感覚になる。

「あーもうっ!可愛すぎる。俺としては瑞稀から求められるなら大歓迎だ。いくらでもしてくれ」

力任せに瑞稀を抱きしめると、瑞稀は苦しそうに俺の腕を叩く。俺は力を緩めて、身を屈め顔を寄せる。

「はい。沢山して自信付けて」

そう言って俺は目を閉じる。まだゴニョゴニョと言い続ける瑞稀だったが、少しの間だけ黙り込んだ後、触れる程度にキスをしてくれた。

それがまた可愛くて、俺は何度ももっととせがんで3回目になると瑞稀に殴られた。

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