第4話 両想い
しまった・・・。
嬉しすぎて、俺のあわよくばの願望が先走ってしまった。
キスの一歩手前で引き離され、それは叶わなかったが顔を赤らめる瑞稀が可愛すぎる。
それに、小さい頃から俺が好きだっただなんて・・・あぁ、我慢していた時間が勿体なさすぎる!
真っ赤な顔でポソポソ話す瑞稀にまた俺の願望が口に出て先走る。
「好きな奴が俺を好きだって言ってるんだ。キスの一つや二つしたくなるだろ!」
俺の言葉に焦る瑞稀。あぁ・・・可愛い。
絶対、絶対、今日キスしてやる。
「ずっと手に入らないと思ってた想いが叶ったんだ」
そうこれが本心で願望だ。かっこよく迫って想いと一緒に願望も叶えたい。
急な事で色々と頭がパニックしているのか、瑞稀が完全にフリーズしている。
その間にも俺はジワリジワリと瑞稀に近寄っていく。
この身長の差と同じ位の俺達の距離を埋めるように、瑞稀を壁際まで追い詰めると逃げられないように、壁に両手をついて背を屈める。
焦るな俺、焦って怖がらせると次がない・・・そう自分に言い聞かせギリギリの所まで顔を寄せると、瑞稀の意思を確認するように少し間を空ける。
すると観念したのか、瑞稀はぎゅっと目を閉じた。
それを確認してからそっと口をつける。
想像以上に柔らかい瑞稀の唇が、俺をより興奮させるがグッと堪えて瑞稀の反応を見ると、瑞稀はそっと開け目を潤ませながら俺を見上げていた。
それがいけなかった・・・あまりにも可愛くて、あまりにもエロい瑞稀を見た俺は興奮しすぎて頭に血が上り、鼻血を出してぶっ倒れた。
最高にカッコ悪い・・・・
「あっ、起きた!おい、大丈夫か?」
気がつけば、ベットにもたれるように座らされ、鼻には詰め物、おでこには濡れタオルがあり、瑞稀が後ろからタオルと一緒に頭を支えるように目頭を冷やしていた。
「大丈夫・・・」
俺は支えられていた瑞稀の手を取り、後ろのベットに座っている瑞稀を見上げる。
「ごめん・・・俺、カッコ悪い」
そう呟くと一瞬キョトンとしていた瑞稀が少し顔を赤らめ、ぷっと吹き出し笑う。
「だから、言ったろ?俺達、経験もないのに焦りすぎだって」
笑いながらそう言う瑞稀に、不貞腐れながら返事をする。
「あんな触れるだけのキスなんて、経験なくてもできるよ」
「あんなキスで倒れたじゃねーか」
「それは・・・・瑞稀が悪い。瑞稀が可愛すぎるのと、ちょっとエロかった」
俺の返しに瑞稀は真っ赤になり、吃り始めた。
「なっ、何を・・ど、どこが可愛くて、エ、エロいんだよ」
「顔を赤らめて、目を潤ませてたじゃないか。それに上目遣いで俺を見るとは卑怯だ」
「上目遣いって・・・しょうがないだろ!?お前の方がデカいんだから、見上げるしか無いだろっ!それに、目を潤ませてなんかいない!」
顔を真っ赤にしながらそう言い放つ瑞稀に、俺は閃く。
「なぁ、もう一回しない?」
少しねだるような目で瑞稀を見つめる。
そう俺は知っている。瑞稀は俺のこの目に弱い事を・・・。
俺は体を瑞稀の方に向き直し、瑞稀の膝に手を置く。そして、見上げながら少し寂しそうな素振りをする。
「今度は倒れないから・・・さっきみたいな軽いのでいいんだ・・・瑞稀、お願い」
瑞稀はうっと小さく唸ると、困った表情を見せる。
俺は焦らず、じっと瑞稀を見つめて返事を待つと、瑞稀が深いため息を溢す。
「わかったよ。でも、お前は動くな。また暴走するかも知れんからな。俺がする」
思いも寄らない返事に、顔が熱くなるのがわかる。
瑞稀からしてくれるなんて、願ったり叶ったりだ!
胸の奥から湧き上がる喜びを必死に抑えながら、鼻の詰め物を投げ捨て、わかったと返事をして目を閉じる。
目を閉じていても、しどろもどろになっている瑞稀が感じられ、俺までドキドキが止まらなくなる。
しばらくの間が空いた後、チュッとリップ音を立てて、口が重なった。
「こ、これでいいか?」
すぐに離れた瑞稀の口が、少しぶっきらぼうに言葉を放つ。
俺は目を開け、嬉しくて微笑む。
「あぁ。今は満足だ。ありがとう、瑞稀」
膝の上にあった手を瑞稀の体に絡め、包むように抱きしめると、瑞稀は少しだけ緊張して体を強張らせるが、ぎこちない動きをしながら俺の首に手を回し、頭に顔を埋める。
あぁ・・・まずいな・・さっきまでは、幸せすぎてあわよくばキスまでしたら、死んでもいいと思ってたけど、もう次の欲が出てきてしまった。
このままずっと瑞稀と幸せに暮らしたい。ずっと隣でこうしていたい。
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