第3話 両想い
えっ?これはどういう状況?
突然後ろから諒に抱きしめられ頭がパニックになる。完全に固まってしまった俺の体を諒の手がワサワサと這っている。
次第にその手が顔の方に登って行き、顔を横向きにされる。
近いっ!近過ぎる!え?これ・・・えっ!?
咄嗟に諒の口元に手をやり、抑えたまま迫り来る顔を離す。
「ちょっ、ちょっと待て。何がなんだか・・・」
俺に引き離された諒の顔は不服そうに眉を顰めている。
「なんだ、その顔は・・・?とにかく一旦離れてくれ」
俺にそう言われると更に眉を顰め、ゆっくりと手を離す。冷静に話そうと試みるが心臓は激しく鳴りっぱなしだ。
「あ、あの・・・話と行動が急展開過ぎて追いつかない」
しどろもどろで話す俺に、諒は眉尻を下げ切なそうに俺を見つめる。
「俺は瑞稀が好きだと言った。好きだから抱きしめた」
俺と違って淡々と話す諒に、自分の顔が更に熱くなるのを感じる。
「す、好きって・・・」
「瑞稀、俺の事が好きだって言っただろ?その返事だ。俺も瑞稀が好きだ。もうずっと前から好きだった」
耳を疑う様な言葉が次から次へと諒の口から溢れる。
「嘘だ・・・お前、全然そんな素振りしてなかったじゃないか」
「それを言うなら瑞稀もだろ?いつから俺の事を好きになったんだ?」
「いつからって・・・・」
諒の問いかけに口籠るが、まっすぐに言葉にしてくれる諒に答えないのは失礼だと思い、俺も諒を見つめ返す。
「・・・小さい頃からだよ。ずっと諒の事可愛いと思ってた。ずっと好きだった」
諒は成長期に入って背もぐんぐん伸び始め、それに伴って体付きもしっかりしてきた。元々顔付きはいい方だったから、可愛いからかっこいいに変わっただけ。
当然周りの反応も変わってきた。
特に高校に入ってからはかなりモテていた。それがずっと嫌だった。
誰にも諒の隣を譲りたくない。
でも、進学で離れたらそれでこそ隣にいる事が出来なくなる。その事が俺を告白すると言う決断に至らせた。
「嬉しいよ・・・俺も小さい頃から瑞稀が好きだった。でも、瑞稀にとって俺はただの幼馴染で親友だと思ってたからずっと我慢してきた。ずっとこのままでいいと思ってた」
「俺も・・・そう思ってた。でも、お前は相変わらずモテまくりだし、進学も別々になったら、所詮友達は友達だ。それ以上にもそれ以下にもならない。ただずっと平行に歩く関係だって気付いて・・・・それが嫌だったんだ」
ポツリポツリと話す俺に諒が手を伸ばし、抱きしめる。
また諒の匂いに包まれて、ドキドキが止まらなくなる。体も強張っているのがわかる。
「瑞稀・・・めちゃくちゃ嬉しい。勇気を出してくれてありがとう。おかげで俺も勇気を出せた。なぁ、瑞稀・・・キスしたい」
「えっ!?」
突然の申し出に声を荒げる。
「ダメか?瑞稀、俺と友達以上の関係になりたいんだろ?」
そう詰め寄る諒の顔を見上げる事ができず、諒の胸に顔を埋める。
なんだ?こいつは俺が知っている諒か?
泣き虫で可愛かった諒なのか?こんなに手が早いやつだったのか!?
「瑞稀・・・」
甘えた声で諒が俺の名前を呼ぶ。
「お、お前、なんかキャラ変してないか?純情な諒はどこにいった?」
「・・・・俺は純情なんかじゃない。瑞稀が思ってるようなか弱いくて可愛いやつでもない。これでも鍛えてるんだ。それに好きなやつが俺の事を好きだって言ってるんだ。嬉しくてキスの一つや二つしたくなるだろ?」
「いや、そうだけどっ!男ならばしたいだろうけど!俺もお前も経験ないだろ?そう言うのはゆっくりでいいんじゃないか?」
「いやだ。ずっと手に入らないと思ってた想いが実ったんだ」
「いや、いや、いや。待て、待ってくれ。展開が早すぎるんだよ。俺の頭が全く追いつかん」
焦る俺と冷静な諒。いつもと立場が逆だ。
どうしよう!?告白までは考えていたが、この先を考えていなかった。
好きだけど・・・大好きだけど!俺も叶わないと思っていたから、こんな展開は想像すらしてなかった。
えっ?告白して両思いになったら、すぐキスしていいもんなの?
わからない・・・何もかもがわからない・・・・
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