第3話 暗闇での猛特訓
自分の顔に向かってくる拳を手の甲でそらし相手の懐にはいる。そのままの勢いでみぞおちに拳をいれようとするが、相手の膝が向かってきているのを視認したためバックステップで回避する。それによって距離をとったものの、姿勢を低くしたまま走って迫ってきた。相手が勢いをつけて殴ってくきたため、そのまま合気道の要領で横にそらし足を掛けて体制を崩させる。崩れている相手の腹に膝蹴りをし、すこし空中に上がったところに追撃を入れてフィニッシュ。拳を顔面に叩き込んだ瞬間、相手は霧散し消えた 。俺はひとつ深呼吸をして精神を整える。
「まさか仮想敵で修行できるようになるとはな」
おそらくもう何10億年はたっただろう。最初の頃は素振り―といっても剣がないので手刀だが―をずっとやっていた。いつか次元が切れるようになるのではと思って今も合間合間に行っている。それからは、思考力を上げるためにひたすら頭のなかで計算をしてみたり、体を柔らかくするためにストレッチを3時間くらいに一回したりしていた。そんななかで、手刀だけひたすらやっていてはいけないと思い、相手を想像しながら戦いをイメージするような修行をしていた。そうしたら、いつのまにか仮想敵がつくれるようになっていた。比較相手がいないため自分の力がわからないが、ある程度強くなっていると思う。過去に動画やアニメでみたことのある格闘術はマスターしたし、空中で蹴りを連続で5回きめた後、回し蹴りにつなげられるくらいにはなった。
「まぁ、いまの俺の力がもとの世界に引き継がれるとは限らないし、へたしたら記憶が消えるから無駄になるかもしれないけど。ただ、記憶が消えるとしたらこの手刀でこの空間を切る、みたいなことができたらいいんだが」
そう言いながら指を真っ直ぐにして腕をふる。空間が傷ついた様子も、切れそうな様子もない。まだ先は長そうだ。そう思って笑みがこぼれる。まだまだ時間があって、まだまだ成長ができる。これは幸せだと感じた。
「さて、このまま修行を続けていくのもいいが、もうそろそろ違うことを始めてみるのもありか···」
素振りは続けてやっていくとして、他にやりたいことを探してみる。しかし、あまりこれといってやりたいと思うことがない。というかやりたかったことは全てやってしまった、と言うほうが正しいだろう。このまま、歌などと修行系とを交互にやっていくのもありだが···なんだか納得いかない。素振りをしながら悩んでいるとふと、自分の細い腕が目に写った。
ふむ…
「筋トレで、いいかぁ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます