第2話 暗闇での無観客ライブ

「は?」


どこだここは?いまさっきまでは14の家にいたはずなのに、いまはどこかわからない暗い空間にいる。なにも見えないほど暗いというわけではない。自分の体はよく見える。なのにどれだけ目を凝らしても数センチ先すら見えない。無が広がっていた。


「あー」


大丈夫、声は出る。自分の無事?を確認した僕はもういちど周りを見回す。やっぱりなにも見えない。これはあれかな~。マジもんだったっぽいな~。物語とかだと端を目指してもたどり着かないし疲れないかんじだったけど、まぁ現実だとどうかわからないし試すだけ試しますか。そう思い、僕はひとつ屈伸をしたあと、暗闇に足を進めた。



おそらく1時間後


「ヅガレダ~」


つかれた。そう、つかれた。これはつまり、よく聞く五億年ボタンとは違うみたいだとわかった。ちなみにどこまでいっても暗闇でした。おそらく出口はないだろう。そういえば、人間って長い間暗闇のなかにいると狂うって聞くけど自分はまだ大丈夫っぽい。まぁこの状況でなにかする気も起きないし・・・


「よし、ねるか。」



何年か後


「ひま」


暗闇のなかポツリと僕は呟いた。ここに来てからもうどれだけ過ぎたのか、この空間に時計がないのでわからない。寝まくって寝れなくなってからは、暇すぎて自分の心音を数えようかと思ったが、自身の心音は感じられなかった。それまで一人しりとりやじゃんけん、おままごとなど試していたがそれにも飽きてきてしまった。


「あ~ ひまひまひまひまひまひま~」


ひま。そう、いま僕に襲いかかっているのは暗闇の恐怖でもホームシックでもなく、やることがないという絶望である。いままでは無心で乗り越えてきたのだがそろそろ限界になってきた。あと100億年以上はあるのだからその間に何かしたい。それゆえいま久々に脳を働かせているのだが


「やれることなら一杯あるんだよなぁ。時間がほぼ無限だし。」


と思ったのでやりたいことや、いままで現実では時間がなくてできなかったことを思う存分やることにした。できなかったことか······。そういえば歌を歌うのが好きで、でもカラオケとかに行く機会がなかった気がする。それじゃあまずは


「歌の練習しますか」




何年か後


「♪〜」


歌声を暗闇に響かせなから私は腕を振りそしてステップを踏む。何度を練習してきたことなので疲れることはないがステップに意識がいっても笑顔はかかさぬようにする。やっぱり歌はいいなと思いながらクライマックスに向けて声のボリュームをあげていく


「hooo!」


曲が終わって無意識下であった緊張感がほどける。何度やっても憧れのひとの歌を歌うときは緊張してしまうものか。私はひとつ伸びをした。結構さまになってきたかな、そう思って次は何を歌うか、どんな練習をするかとかんがえていると、ふと


「あ、ずっと歌しか歌ってないな。でも、楽しいしやりたいことだったからこのまま続けてもいいっちゃいいけど、それ以外のこともやりたいし・・・」


約20秒の葛藤の結果、


「他のことしましょう。」


他の事といっても何をしようか。腕を組んで考える。


「いままでは歌、というかアイドルみたいなことをしてたしなぁ。ランニングとか筋トレもしたし、メインは歌とダンスだけど。あっ、魅力的なしぐさとかもかな。」


ここまで言って、ランニングで体力がつけられた、つまりからだの成長が起こることを自覚した。じゃあ、ここで修行とかしまくったらめちゃんこ強くなるのでは。うむ、いいな。というかそういう小説があった気がする。あれを目指すか。


「あー、でも修行ばっかって言うのもつまらないしなぁ。修行メインで他のことをたまにするみたいな感じでいいかな。

それじゃあ、修行へんへ~れっつご―」




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