第25話
「地獄は何でもありだとは思っていたけれどもこれはあまりにもあんまりでは!?」
「センセーもそんなオーゴエダすんだ」
ある朝、地獄の狂科学者サイエが気がかりな夢から目覚めた時……。
地獄の空にはいつだって厚く黒い雲がかかっているため大体でしかないのだが、割合として多くの住人が寝て目覚めたのだから朝と定義しても問題ないだろう。
ともあれ、朝になったので目覚めたサイエは自分の体の変化に気づいた。気づかない訳がなかった。ついているはずのものがついていなくて、ついていないはずのものがついていたのだから。
サイエはそれに気づいた直後、固く目を閉じ、唸るような声を漏らし、思考を巡らせた。一応確認のため、下半身に手を当てて、離し、上半身に手を当てて、揉んでみた。ついてないし、ついている。何だこれは。
幾ら地獄が何でもありとはいえ、これはあまりにもあんまりだ。これが自分だけに起きたことならば誰がやったのかという犯人探しの時間になるし、もし全員に起きたことだとしたら……どうすればいい?
流石にトンチキが過ぎる事態に混乱していたサイエだったが、遠くから聞こえてきた声で我に返る。少し高くなってはいるが、聞き覚えのある拙いアクセント。あぁなるほどどうすればいい? と遠くを見ている間に、現れたのは連続少女殺人鬼のツジだ。
「センセーもババアになってる!」
「女性と言え女性と、犯せる犯せないで二分するな」
金に赤斑という色合いは変わらないものの、ツインテールが出来る程度には長くなっている髪。目元はやや垂れ気味で、唇の端からは八重歯が見えている。
軍用のタクティカルベストの上からでも判る豊満な肉体を見たサイエは、自身が纏うタートルネックの首元を引っ張り、その中を見て真顔になった。なるほど、胸囲格差とはこういう事例を指すのだな。
「オレシってる! こーゆーの、ニョ……ニョタ? ってイうって!」
「それは知っているとは言えないな?」
まぁ、脳の中身はそう変わっていないようで安心した。サイエはぱちぱちとまばたきをして気を取り直すと、改めてツジに向き直った。厳然たる格差からは目を逸らしつつ、問いかける。
「こうなっている原因は知っていたりするのかい?」
「シらない!! キノウ……ケサ? アサ! になったらなってた!」
「まぁ期待はしていなかったから失望もないけれど」
万が一、億が一、知っていたなら諸々の手間や思考が省けるなと思っただけで。無邪気、というよりは何も考えていない顔で笑うツジから視線を外し、サイエは深々と溜め息をついた。
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