第6話

「ヒーローパーンチ!!」

「ぎゃっ!?」


 説明しよう! 僕の名前は……ヒーローネームは『ホワイトバニシング』! 世界の平和を守るヒーロー! この真っ白なヒーロースーツと真っ赤なマントがトレードマークさ!

 僕は世界の平和を守るために頑張っていたけれど、卑劣な罠によって死んでしまった。それは残念だし、僕というヒーローがいなくなってしまった世界は大変なことになっているだろう。

 けれども僕をヒーローにしてくれた神様は僕のことを見捨てた訳じゃなかった。あの世界以外に、僕が救うべき世界があったんだ! だから神様は、僕をこの世界に送り込んだ。

 この世界は、いつだってくもっている。たまに雲の間から見える空は真っ赤で、たぶん悪者が僕のトレードカラーを隠すために何らかの発明品でいつもくもりにしてるんだと思う。

 そう、この世界は悪者だらけだ! 今僕が殴ったやつも、悪党の中の大悪党! 怪人『ツジギリ』は女の子や子どもたちをいじめる悪いやつ!


「テメェ、コりずにまた……」

「ヒーローキーック!!」

「ぎゃっ!!」


 悪党の言葉なんて聞いちゃいけない。悪党はあの手この手で悪いことをするんだ。だから怪人を見つけたら一気に、手を抜かずに、殺さなきゃいけない。

 ヒーローパンチにヒーローキックを食らってもまだ生きているツジギリは、本当の大悪党ってやつだ。やつには『博士』がついているから、改造手術をたくさん受けたんだと思う。

 だからこそ、もっと強く叩かなきゃ! これ以上女の子や子どもたちをいじめられないように、きちんと殺さなきゃいけない! それが正義のヒーローである僕の使命!


「クソガキがぶっコロす!!」


 ガードの上から殴られて吹き飛ばされたけれど、ヒーロースーツのおかげで無傷。どうだ、正義は必ず勝つものなんだ! ナイフを出してきたってムダムダ!


「ヒーロー……チョップ!」


 気合いを込めて振り下ろした手の先から飛んでいく風の刃。ツジギリはそれを避けたけれど、ヒーローにはたくさんの奥の手があるものさ!


「ヒーロービーム!」


 両手で三角を作って突き出せば、正義のビームが飛んでいく。これもまた避けられてしまったけれど、何のその! 正義は必ず勝つのだから、諦めるなんてしないさ!


「ヒーローナイフ!」

「ナイフ!?」


 マントの下から取り出して突き出したナイフはツジギリのナイフにガードされてしまった。惜しい、後少しで刺せたのに。それにしたって自分もナイフを出してるのに、何をおどろいているのやら。


「オマエそれ、このマエさぁ!! ハンマーはレギュレーションイハンだろっつったけどさぁ!!」

「ヒーローガン!」

「ケンジュウもナシだろがよ!!」


 この近さで避けるなんて……やっぱり『博士』によってとんでもない改造をされているに違いない。僕は気を引きしめ直して、マントの下から取り出した銃を構え直した。

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