第38話 はじめの一歩 in ダンジョン

 ダンジョンに入る前に、太郎は白金にいくつか質問をした。


「今更なんだが、ダンジョンで探索するっていうのは、ダンジョンの最奥まで行って、ボスを倒してダンジョンを消失させたりするのが目的なのか? 」


「この世界では、常に一定数のダンジョンが出現します。だから、余程のことがないと、ダンジョンを消失させることはしません。次に何所に現れるか、わからないですからね。街の中心なんかに現れたら、大変です。

特にアンソフィータとグネトフィータは魔力マナの濃い場所にありますから、そうした事もあり得ます。

それとボスを倒したからと言って、ダンジョンが、消失するとも限らないそうです。ダンジョンコアと言われる部分の破壊が確実です」


「じゃあ、ダンジョンに何のために入るんだ? 」

「理由はいくつかあります。大きな処では、ある程度魔物を間引いておかないと、魔物が溢れ出す事が稀にあるためです。


次に、魔物が落とす魔晶石やそれ以外のドロップ品を得るためです。魔導具は、魔晶石をエネルギーとして動きますし、魔法を使う際に足りない魔力を魔晶石で補うという使い方もあります。魔力を回復させるポーションの材料でもあります。

魔晶石は汎用性が高いのです。そのため値崩れを起こしにくいという点もあり、探索者やその周囲の生活を支えているとも言えるでしょう。


三つ目にはダンジョンは魔力マナの濃い場所にあります。その場所で魔物を仕留めることで、普通の場所で鍛錬しただけでは得られない力を得ることができます。

人がそのような力を手に入れる事によって、より強い魔物に対抗できるようになります。そして強い魔物を倒せば、大金が手に入ります。強い魔物から得られるドロップ品の素材や魔晶石は、より希少なものですから」


「成程。というか、魔物の暴走スタンピード、あるんだ」

「滅多には無いそうです。それは、どのダンジョンも探索者がマメに入っているからという話です。起きるとすれば、ダンジョン内に変異体と呼ばれるモノが出現した場合でしょうか。なぜそんなモノが出現するのかは判らないそうです。

あとは、何かの弾みで下層の強力な魔物が上層に上がってきた場合でしょうか」


「そういえば、アルブム達って金級の探索者って言ってたけど、今更だけど探索者にも階級があるんだ」

「それは勿論。上から金、銀、銅、鉄、錫という階級になっています。見習い期間は、見習いとか石とか言われています。石は正式な名称じゃないですけどね」

「その金級が護衛でダンジョンに行くってのは、なんだかな」




 ダンジョンの入り口。

今回の太郎に同行するのはシムルヴィーベレと白金。連れてこられたダンジョンは、A級ダンジョンだった。別名、多様ダンジョンという。

ダチュラに近いというのも然る事ながら、このダンジョンを利用する探索者が多い事も選択された理由だという。


何故ならば、1層から5層まではさほど強くない動物系の魔物が中心になっているからだ。

1層と2層は草原になっており、様々な薬草を採取することもできるそうだ。そのため、E級ダンジョンを攻略した探索者ならば探索に入ってもなんとかなるそうだ。


容易なのはそこまでで、6層から10層にかけては、頑強な虫系の魔物中心となり、それなりの火力があるパーティでないと進むことは難しい。ここでは虫の外骨格が多くドロップし、頑強な防具や武器の材料になるという。

11層から15層はアンデットが中心で吸血鬼が出現する層になるという。

太郎が、11層より下の吸血鬼はどんな姿なのかを聞くと、どうもチュパカブラのような感じのものらしい。伯爵やコウモリとは関係がなさそうだ。


「とりあえず、目指すのは10層を考えている。後は、中に入ってから太郎の状態の様子見で決める」


ということで、とりあえず15層までの話を聞いた。このダンジョンは最奥まではまだ達しておらず、現在は37層まで確認されているという話だ。


 1層、2層はお散歩のような気軽さで進んでいった。アルブム達の気配で、弱い魔物は近づいてこないらしい。

「ダンジョンの魔物は、人なら何でも襲ってくるのかと思ってた」

「この1、2層にでてくる魔物ぐらいだよ、寄ってこないのは。格があまりにも違うのが判るのかね。向こうも無駄死にしたくないんだろう。だから、この2つの階層は、ダンジョンじゃないんじゃないかという話もでている位だ。出てくる魔物も、角ウサギとか、スライムとか、大猪ぐらいだからな。

だが、3層から下は自分よりも強いかどうか関係なく、襲ってくる」

「この層はね、目安にもなっているわ。この層で魔物に襲われなくなって初めて一人前って言われるのよ」

「錫に上がるかどうかの見習いの子達がよく来ているよ。薬草採取もあるが、魔物も弱い。強くなれば襲ってこなくなるから」

「ふうん」


太郎は、道すがら目に付いた草花を幾つか採取していった。

「お、薬草採取か? 」

「うんにゃ、香辛料になりそうヤツな」

「お前さ、本当に料理人関連のスキルとかでてるんじゃねえの」

「残念。そんなのない。そんなこと言ったら、世にいるお母さん方はみんな料理人のスキル持ちじゃねえか」


ムスティと太郎がそんなやり取りをしながら歩いていくと、草原の外れの崖に辿り着いた。その崖の一角に洞窟があり、その奥に下層へ続く階段があった。

「1層から10層までは、進むと崖に辿り着く。その崖にこうして下に続く道がある」

アルブムが洞窟を示して、説明をする。

「上層に行ける階段も崖にある。この崖はぐるっと繋がっている。万が一、一人ではぐれた場合は、この崖を見つけて、階段を見つけて上層へ上がれ」


3層の階段を見つけたその場所で、昼を食べることになった。

「タロウの昼飯、楽しみだ」

今回の食事当番も太郎が引き受けていた。ダンジョンということもあり、それほど手間をかけるモノは用意していないし、今回の昼は出る前に作ったサンドイッチなのだが。


-_-_-_-_-_-_-_-_*-*_-_-_-_-_-_-_-_-_-


せっかく書いた分を消してしまったりと、少々トラブルが続きました。

しばらくは、前のようにコンスタントに更新できそうもありません。


しばらくの間、不定期になりますが、続けていきたいと思います。

見捨てずお読みいただければ嬉しいです。

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