閑話 教えて、白金先生

   その1


「そう言えば、今思い出したんだが」


その日の夕食は久しぶりに白金が作った。白金の料理は美味いよな、などと話をしていたところに、ふと思い出したように太郎が尋ねた。

「あの山口一郎Tシャツって、森の中のどこかに埋めたのか?」

「いえ、サルに着せました。森の中に入っていったら、丁度サルがいたものですから」

「サルに着せたのか。そりゃまた運の悪いサルだな」

「たまたま近くにいましたので」

「サルも迷惑だったろうな。てか、よく着せられたな」

「Tシャツの方が大きかったので、問題ありませんでした。威圧をかけたら硬直して動けなくなってましたし」

「そりゃ、そのサルにしてみれば災難だったな。

その上、神殿の呼び出しで、Tシャツに引っ張られてサルが神殿まででかけていったりしてな」

そんな冗談を言って笑った。


 追っ手が森で振り回されたのは、Tシャツを着たサルだった。黒っぽい毛のサルだったので黒いTシャツを着てても、遠目ではそうとは判らなかった。

Tシャツを着せられたサルは森の中で他の魔物に喰われて絶命した。そのときに、Tシャツも破れてしまい反応が消えることになった。



   その2


「Tシャツといって思い出したが、王城から出てきて初めてトランクルームを確認したときの神殿契約の確認とか、山口一郎Tシャツ作ったときは何をどうやったんだ?

あの時、お前の瞳が金色に変わったんだよな」

Tシャツのことで続けて思い出した太郎は、白金に再び尋ねた。

「あれはですね、まず、マスターの鑑定にアクセスして虚空情報アカシックレコードにコネクトしました。少し時間がかかったのは、鑑定のレベルが低かったので、色々と情報を整理したり細分化して検索したりしていたためです。

その結果、鑑定のレベルが少し上がりました。

それで、マスターが神殿契約されているかどうかを鑑定したのです。その結果、契約が成されていない、束縛を受けていないのが判明しました。

次にTシャツですが、形代にすれば良いという情報を得ました。形代の作り方も情報にありましたので、それに則って作っただけです。

作成の際には、マスターの魔力をお借りしました」

「へえー。虚空情報アカシックレコードって、色んな情報が検索できて便利だね。なんかウェキペディアみたいだ」


太郎、実はあまり理解していないのかも知れない。


  その3


「お前にスフェノファでは、外で行動や買い物に気をつけろって言ってたよな。あれって俺に監視とかついてたのか? 」

「いいえ、王城側もそこまでしてませんよ。そんなコストをかけるなら、王城に閉じ込めておいた方が安上がりです。

王都には監視ネットワークが敷かれていると情報にあったからです。マスターのいた世界でいうと、監視カメラでしょうか」

「え、何それ」

「具体的には魔導具を使った物です。分かり易い例えで言えば、小型のドローンが飛び回って、情報収集しているという表現が良いでしょうか。大きさは拳大ぐらいなので、上空からのチェックということもあり普通は監視に気がつかないようです。銀の短剣持ちは多分チェックしているだろうと推測できましたし」

「それで、サイザワさんの買い物の時に自分の物も一緒に買えって言ってたのか。店の中までチェックはなかったのかな」

「それは判りません。聞かれれば店主などは答えるでしょうし。

サイザワさんという方は、お会いしていませんし変わった人のようでしたが、ついでに買いたいと許可を取れば大丈夫かと思いました」

「でも王都で何のためにそんな監視体制とってるのかね」

「警備の一環でもあるでしょうし、不審人物などの洗い出しなどに使っているんじゃ無いでしょうか。もしくは反乱があるようならば事前に察知するためとか。そこまでは調べていません」


  その4


「なあ、白金。トランクルームの明かりとか冷蔵庫とかコンロとか、あれのエネルギーってどうなってるんだ?」

「このトランクルームを成立させているのは、発動の基本はマスターの魔力です」

あっさりと白金が答える。

「ええー!オレの魔力って、でもオレ魔力切れとかなったことないし。1日中トランクルームの中にいたこともあったぞ」

「基本的な部分では、そんなに魔力は使いません。それに、この世界に満ちている魔力マナを吸収しているので、大丈夫です」

太郎は辺りを見回しながら

「へえ、この世界にはマナが満ちてるんだ」

マナと言われて、実はよくわかっていない太郎だった。

「場所によって、濃い薄いはありますけどね。スフェノファは薄かったですね。ダンジョンがあるマグナはとても濃い場所です。

ああ、それとトランクルームの要の部分に魔物を補給してますので、それも使ってます。魔物は全部がエネルギーに変えることができるので、なかなか便利です。獣は使えませんが」

言われて思い出したが、白金は倒した魔物の一部をギルドに納品せずにトランクルームに収納していた。その癖トランクルームがいっぱいになるということは無かった。納品していない魔物って、もしかしてトイレの水とかトイレットペーパーに変わっていたのか、と思う太郎であった。


「それじゃ飲み水もトイレの水も魔物由来なのか」

「いいえ、キチンと上下水道で分かれていますよ。魔力や魔晶石で作られた水が飲み水となっています。飲料可能ですから、大丈夫です。風呂の水も同じです。ただ水洗トイレの水はイメージとしての水になっていますが、何も問題はありません」

にっこり笑う白金の言葉に


(イメージとしての水って何)

ちょっと突っ込めない太郎であった。


 その5 現在のトランクルームのレベル


順番は、レベル:部屋数:1部屋の広さ:設備:支店数

レベル1:1:10畳

レベル2:2:10畳:トイレ

レベル3:3:10畳:風呂:1

レベル4:4:10畳:寝室:1

レベル5:5:15畳:キッチン:2

レベル6:6:15畳:ランドリー:2

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