第20話 火山の欠片

 白金は探索ギルドでシムルヴィーベレと『火山の欠片』の噂を聞きつけた。


「『火山の欠片』?」

「そうです。今、アンソフィータから5人組の探索者パーティが来ているんです。彼らは、『火山の欠片』を探していると耳にしました」

白金は太郎に説明をした。


「へえ、ダンジョンにも特産品があるんだ」

「はい。その探索者もダンジョンに入っているのですが、もし、他の探索者が見つけた場合は買い取るという話です」

「で、それを探しに白金もダンジョンに入ると。大丈夫なのか、ソロでダンジョンなんか入って」

「大丈夫ですよ。対処できない相手や数が多いような場合は、トランクルームに戻ればよいだけですから。いつもと大して変わりません」

「それにしたって、やっぱり心配だよ。ダンジョンだよ。トランクルームに戻れなくなる条件もあるかもしれない。それにそんなに簡単に『火山の欠片』って見つかるのか?」

「問題ありません。どんな状況だろうと、私がトランクルームに戻れない状況などあり得ません。それに情報を検索した結果、火山の欠片を発見する条件というのを見つけましたので」

「お前って、本当にすげえな。その条件って、危なくないんだろうな」

「それは大丈夫です。もの凄く単純なんですよ、その条件。火魔法が使えれば誰でも可能です」

「待て、火魔法って。白金、お前、魔法もいける口なのか。

さすがだな、白金」

「お褒めいただきありがとうございます。情報を取得しましたから。マスターも覚えますか?お教えしますよ」


とりあえず、魔法使いにもなったという白金はダンジョンに行くことにした。


 白金は怪しまれないように、表面上はずっとダンジョンに入っていることにしているが、トランクルーム経由で、朝に出かけて夜に帰って来ていた。自分が行った場所に支店の基を置いてくれば、翌日に同じ場所から始められて便利だ。本来の使い方ではないやり方で支店は活用されている。


 そして、白金が火山の欠片をもって、ダンジョンから出てきた。


『火山の欠片』は、特定の魔物、コカトリス45個体以上を火魔法だけで倒すというのが発現条件だったのだ。その後にコカトリス以外の魔物を倒せば、必ず『火山の欠片』がドロップする。


コカトリスだけを続けてというわけでもなく、間に他の魔物が入っても構わない。不思議な事に途中でダンジョンの外へ出ても問題がない。だが、コカトリスだけは火魔法の系統で仕留めなければならない。1体でも他の方法で倒すとリセットされる。加えて、ダンジョンの外に出ている最中にコカトリスを倒してしまった場合も、リセットされる。周囲の魔の森では希にだが、コカトリスも出現することがある。一体誰がカウンティングしているのだろう。


実際、今まで『火山の欠片』を手に入れた探索者は火魔法を得意としていた魔術師が加わっていたパーティばかりだったのだ。探索ギルドではその点に関しては掴んではいた。しかし、火魔法をもつ魔術師のいるパーティであってもいつも手にすることができるとは限らないのも事実であった。これは、コカトリスを他のメンバーが火魔法以外で倒してしまった場合に、リセットされてしまったからだった。

また、ダンジョン内でのコカトリスの出現率は変動しているため、『火山の欠片』が得やすい時期と得にくい時期が存在するのだ。


ここ数年はコカトリスの出現があまり高くない時期だった。

条件さえ判っていれば、コカトリスを探しだして倒し続け『火山の欠片』を入手できる。


 白金は、アルブム達のパーティがギルドに来るタイミングを見計らってギルドを訪れた。直接交渉するためだ。

『火山の欠片』を採ってきた話をするとアルブムは白金に是非、それを買い取らせて欲しいと言ってきた。

「勿論構いません。ただし、条件があります」


 交渉のため、探索ギルドの会議室を一室借り受けた。その部屋にはシムルヴィーベレのメンバー5名アルブム、ムスティ、カアトス、レプス、ヴルペス、そして白金の合わせて6名だけがいる。ギルドの会議室内での仲介は白金が断った。遮音の魔法を使い、彼らの会話を外に漏れないようにした。


火山の欠片をアルブム達に売る条件として、白金が運ぶポーターを指定し、一緒にアンソフィータに行くことを提示した。


『火山の欠片』は膨大な魔力を含む。これを運べるポーターはそれなりの能力を持っている必要がある。

シムルヴィーベと白金が相対する机の上には、その『火山の欠片』が置かれている。大きさは15センチほど、水晶のような形、色は溶岩のように輝いているかのような赤色だ。話を聞くとアルブム達はそのまま持って移動するつもりだったらしい。白金の様な少年が持ってこれるなら楽勝だろう、ポーターなんて不要だと、ムスティが言ったのを聞いて白金は鼻で笑った。


「持ってみますか?」

ムスティが片手で『火山の欠片』を持ち上げようとして、唸った。持ち上がらない。

「片手でなければ持てるとは思います。持って移動することは確かに可能でしょう。でもポーターがいたほうが遙かに楽です。ご紹介するそのポーターはかなりの能力者です」

「信用しろと言う事か」

「はい。詳しい話は、ポーター当人を交えてお話したいと思いますので、一緒に来ていただけませんか」

「これからか」

「でも構いませんし、日を改めてもらっても良いです。とりあえずこれは僕が持ち帰ります」

白金は両手で『火山の欠片』を持ち上げ、自分のカバンの中に入れた。

話を早くまとめたかったのだろう。パーティのうちアルブムとカアトスが白金に付いていくことにした。行くことが決まると、一言断りを入れて白金は少し会議室を出て行き、しばらくしてから戻ってきた。


「連絡をしてきました。食事を用意して待っているそうです」

マグナには電話が配備されているので、それで連絡をしたとアルブム達は思った。



-_-_-_-_-_-_-_-_*-*_-_-_-_-_-_-_-_-_-


たくさんのフォロー、★、♡ありがとうございます。


なんとPVが11万、★も900を突破しました。

見間違いかと何度も見直してしまいました。

これも読んでくださる皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。

m(_ _)m

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る