第5話 仕事に就く ポーターの講習

 馬車のおっちゃんの話や白金しろがねの勧めもあって、太郎は次の日、商業ギルドに向かった。


お金は有限だし、仕事して稼がないとご飯が食べられなくなる。それに真面目に仕事をして、この世界に馴染もうとするところを示しておくことも必要だろうとも考えた。


商業ギルドは様々な商売業種のギルドを総合しており、その業種の一つに荷運びをするポーターがある。


ポーターは荷運びをする仕事を請け負う、運送会社の個人版だ。収納持ちの多くがまずはポーターに登録する。ギルドの仕事で信用がつけば、独立する道もあるという。


収納持ちがそれなりにいるとはいっても、新しいポーターはいつも募集されていると宿屋の女将さんも言っていた。


「もってるスキルを利用して稼ぎのいい仕事した方が良いでしょ」

スキル持ちなら、そのスキルを使った仕事についた方が良いと。


白金がポーターを勧めてきた理由は、トランクルームを使ってポーターの仕事をすればレベルが上がるからということだった。トランクルームは使用するほど、レベルが上がるのだとか。仕事しながらお金になる、レベルも上げられるので一挙両得を狙えるというわけだ。


 商業ギルドは大通りにあって、周囲と比較してもかなり立派な三階建の建物だった。

ここら辺の建物は石造りやレンガ造りのものが多い。


(ギルドって儲かるのかな)

そんな事を思いながら中に入ると、扉の向こうは役所の窓口を彷彿させる作りになっていた。手近な窓口で受け付けてもらいポーター登録をした。


名前は勿論イチローの方だ。万が一、王城があの高校生たちに署名と名前を確認させるようなことがあっても不都合がないようにしておかなければ。


面白いことに意識をすればイチローとこの国の綴で書けた。

さすが、異世界転移特典。ポーターの登録後、仕事をするためには講習を受けてからということになり、これからその講習を開くということで受講することにした。


 内容的にはポーターの仕事の内容の説明、規則されている内容、荷物の配送方法などが中心だ。今回の受講者は数人で、大人は太郎だけだった。


収納のスキル持ちはだいたい1000人に一人というが、その収納サイズは大きく4つに区切られていた。特大・松・竹・梅だ。


梅だと荷馬車の半分以下、竹だと荷馬車1つ分まで、松だと荷馬車2つ分まで、それ以上に大きければ特大になるという。異世界に松竹梅なんてないのだろうから、多分太郎にわかりやすい言葉に言語さんが置き換えているのだろうと予想している。サイズはレベルが上がれば単純に大きくなるということではないらしい。


それでも多少の変動はすることはあるらしいが、突然大きくなるとかはないという。多くのポーターは梅か竹ぐらいで次いで松が数%、特大というのは1000人の収納持ちに一人いるかどうかだという。

特大だと判れば国に召し抱えられるレベルなんだとか。


サイズは自己申告制だが、最初は梅で登録し、仕事を幾つか受けてみて自分の容量を確認してから申告してくれと言われた。


申告した場合は、きちんとそれだけの荷物が入ることをギルドで検証して、ランクを再認定する。


仕事としてのポーターのレベルは別にあり、最初は見習いから始まり、初級、中級、上級に分かれて仕事の熟し具合で進級していくシステムだそうだ。見習いの仕事は街中の雑事が多く、それで地理を覚えたり街の人達に信用を得て問題がなければ初級になる。見習いの仕事は頼まれた荷物を所定の場所に運ぶという個人版の宅急便みたいなものや、買い物の買い出しなどの依頼が中心で場所も登録したギルドの範囲内、ここであれば王都中心に限られる。


初級以上になると商人の荷物の配送の手伝いとかが加わり、王都の外へ行く仕事も請け負えるようになる。


中級以上になると任される荷物がそれなりの値段のものになるらしい。例えばコワレモノみたいに馬車などの運送では万が一がありそうなものだとかを運んだりもする。


上級になると密書や契約書類などを頼まれることもあるという。


まあ、高額とはいえ収納ボックスという魔道具もあり、大量の荷運びはそれで運ばれることもあるそうだ。ただ、魔力の強いものは収納ボックスでは運べないため、ポーターの出番となる。


 仕事の受注については壁に依頼ボードがあって、そこに仕事内容が書かれているカードが掛かっているので、そこから選択することになっているという。そのカードには、依頼の品物、品物の大きさ、受注できるレベルなどが書いてある。その内容で判断して仕事を選ぶのだ。受注のあれこれの手順なんかも説明された。


それから注意事項として、ダンジョンの話も。この世界にはダンジョンがあり、ダンジョンでの荷運びという仕事もあるがあまり人気はないという。自分の身は自分で守れる者でないとなかなか難しいからだ。この点は特別に注意された。生半可な気分でダンジョンについて行くと命を落とすことにもなりかねないぞ、と。


それから収納持ちは国から支給された銀色の腕輪をする義務があると言われた。このブレスレッドは収納されている物品の安全性を第三者に見せるための魔法具だ。収納持ちは密輸などが簡単にできるため、その予防らしい。


国が設定した武器弾薬、麻薬・毒物の類、人の死体などを入れた場合に赤く光るようになる仕組みがあるという。商業ギルドでポーターに登録するともらえるようになっているといって、太郎も講習が終わった後でこの腕輪を渡され右腕に着けた。

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