次元断
「
神剣を振りかぶりながらルキフグスに迫っていく“植村ユウト”。そんな彼に、充填を完了させた“プロヴィデンス・ノヴァ”が放たれる。
それと同時に植村も、渾身の必殺剣を振り下ろす。
「
ザンッ!!
その斬撃は“プロヴィデンス・ノヴァ”の球体を真っ二つに断ち切ってみせたどころか、一緒にルキフグスの体をも斬り裂いてみせた。
一瞬の出来事に、斬られたルキフグスは自身に何が起きたのか即座に理解ができなかったほどだ。
『馬鹿な……【光を避ける者】は、確かに発動していたはず。まさか、次元ごと断ち切ったというのか……!?』
身体を半分に斬られてなおも喋る余力が残されていたのはさすがというべきだったが、もう反撃することも再生することも出来ないほどに“
足先から徐々に光の粒となって消えていく体、ルキフグスは残された意識の中で最後の言葉を残す。
『ニンゲンが、次元を斬るなど……貴様が、まさか……【神殺し】に至る者……なの……か』
ルキフグスが消えると同時に、空中の“プロヴィデンス・ノヴァ”も霧散して無へと帰した。
それと同時に“植村ユウト”も全身の力が抜けて、そのまま空中から地上へと墜落していく。
ルキフグスが撃破されたことによって地上にいた仲間たちも動けるようになり、一斉に彼を受け止めるべく走り出した。
真っ先に植村を受け止めたのは、契約を結んだ
それと同時に宙に浮かぶ「ミッション クリア」のテキスト。
ゆっくりと着地したマルコシアスに、仲間たちが駆け寄っていく。すぐに狼の背中に飛び乗っていった七海が、迅速に植村の容態を確認する。
それを下から様子を伺う鳴海が尋ねた。
「アスカ!植村くんの様子は!?」
「大丈夫!力を使い果たして、寝てるだけ。“
「そうか、良かった……しかし、さっきの一撃。あれは、次元を斬ったということなのか」
「コイツに常識は通用しないから考えるだけムダ、とっくに人間離れしてんだから。とはいえ……さっきのは、さすがに私も驚いたけど」
植村ユウトの大罪スキル【虚飾】とは、単純にスキルのrankを100にするだけのものではない。本質は見栄や嘘、【妄想】を実現させることにあった。
しかし、そこにはどうしても理性のストッパーが働く。そんなものは人間に出来る動きではないという思考、特に人生二周目を経験中の植村にとって特にその足枷は大きかった。
だが多くの強敵たちとの激戦を乗り越え、“
かつては【妄想】rank100まで到達した“想像力”と、数々の経験を経て手に入れた“創造力”。その二つを共鳴させて、人間離れした“次元を斬る刃”を生み出してみせたのである。
そんな中……宝箱と出口の扉が出現し、戦部が叫んだ。
「おい!宝箱が出たぞ。どうする?所有者は、そこで寝てる植村ってことになるんだろ!?この場合」
「ん〜。じゃあ、ホノカ!代わりに、開けておいて」
彼女の指示で周防が宝箱に近付いていくと、七海は植村のことを肩に担いでマルコシアスの背から飛び降りる。
「てか……結構、重っ。ユウト、太った?いや、筋肉がついたのか。一回り、体が大きくなってるし」
「……良かったら、代わりに運びましょうか?私だったら、術を使って簡単に持ち上げられます」
七海が重そうに植村を抱えているのを見て、静かに近寄ってきたのは“夜空マナ”だった。
「あ、ほんと?じゃあ、頼んじゃおうかな。よろしく、夜空さん」
七海は彼女に“植村ユウト”を引き渡そうとすると、彼が小さく「う……ん……」と呟いた。その時、夜空が思わず声を出してしまう。
「兄さん……?」
「えっ……今、なんて?」
「あっ、いえ!何でもありません!!」
七海に詰められ、思わず大きな声をあげる夜空。とてもじゃないが、何でもないようには感じない。
怪しいと思った七海は周囲の仲間たちには聞こえないように配慮しながら、小さな声で質問する。
「あなた。本当は、何で『
「鋭いなぁ。どうやら……これ以上、誤魔化すことはできそうにありませんね」
「ハーレムギルドのサブマスターなんかやってると、女の子の変化に敏感になっちゃってさ〜。まさか、こんなところで役に立つとは思ってなかったけど」
「なるほど。では、正直に白状します……私、“夜空マナ”は“植村ユウト”の腹違いの妹です」
「ええっ!?それって、あなたも“植村ソウイチロウ”の娘……って、こと?」
「はい。お父さんの二番目の妻から生まれたのが、この私になります」
「マジか……それって、ソウイチロウさんも密かにハーレムを築いてたってわけだよね?」
「ハーレムというほどではありませんけど、はい。兄さんには、そのことを打ち明けてはいなかったようなので……いきなり、妹だと名乗り出ても混乱してしまうかと思って黙っていました」
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