光を避ける者
ギン!ギン!ギンッ!!
神速の“
だが、ついに最後の四撃目がその身に届く。
ブンッ!
「……!?」
確実に命中したと思った。しかし、何かを斬った手応えはなく最後の一撃は空を切る。
振り返って見ると、ルキフグスの身体は透けているようだった。
『【光を避ける者】……我は次元の狭間へと、自由自在にこの身を隠すことが出来る。それ即ち、如何なる攻撃も通用しない無敵の
「次元の狭間……?」
そう。ルキフグスが最初に姿を現した時も、空間に開いた裂け目から。あれも【光を避ける者】の力で、己が身を隠していたのである。
次元の狭間に逃げ込まれれば、この世界から干渉することがほぼ不可能となってしまう。
『これで、貴様に万の一つも勝利の可能性は無くなった……だが、誇りに思うが良い。本来、この力を使うことは我にとっての最大の屈辱なのだから』
「なに……?」
『この力は強すぎる。それゆえ、いかに優秀なニンゲンと対峙しても勝負にならん……これでは、我の力は鈍ってしまう。だから、【光を避ける者】を自発的に封印することにしていたのだ」
全ての攻撃の干渉を許さない完全無敵の防御フィールド、いわば一種のチートスキル。
それを使えば相手に何もさせず、一方的に
純粋に勝利だけを望む殺戮マシーンのような精神の持ち主であれば、躊躇せず最初から次元の狭間を使っていたはずだ。ただルキフグスの思考はニンゲンに近いものであり、戦いにも常に向上心を求めていた。
だからこそチートスキルは使うことなく、純粋な戦闘能力のみで敵を討ち取ることを己の美徳としていたのだった。
『初めてだ。我が、この力を使わざるを得ないところまで追い詰められたのは……屈辱だったぞ』
「……っ!」
ルキフグスが話しているところへ、気配遮断された暗殺剣“
しかし、完全に不意を突いたはずの一撃も【光を避ける者】によって空振りに終わってしまう。
そしてすぐに【光の円輪】によって、目標を失った“
『無駄だ。この【光を避ける者】は一度発動させてしまえば、敵の気配を感知して自動で発動する特性。よって、奇襲の類も通用しない』
(
次元の狭間に隠れられたら、攻撃の手段がなくなる。だとすれば、どうにかして移動される前に足止めするしかない。
【虚飾】が、【威圧】rank100に代わりました
強烈な【威圧】をルキフグスに向けて放つ植村、これで一瞬でも動きが止まってくれれば攻撃を当てるチャンスが生まれる。
しかし、まともに【威圧】を受けてもルキフグスには何の異変も起こらない。そもそも植村と実力の拮抗していた相手に気当たりは通用しなかった。
「くそっ!」
諦めず【魔銃タスラム】の射撃、“巨人拳”や“降竜脚”による打撃など持ちうる全ての攻撃を絶え間なく打ち込んでいく植村だったが、どれ一つとしてルキフグスの体に触れることすらかなわない。
そんな彼の猛攻を反撃もせず黙って受け入れていたルキフグスは、がっかりした声で言った。
『やはり、貴様でも【光を避ける者】は破れないのか……残念だ。せめてもの
「……っ!」
『プロヴィデンス・ノヴァ!!』
ルキフグスが片手を宙に張り上げると、その手首の間を中心にして【光の円輪】が高速で回転を始める。すると、掌の先に光球が生成され次第に膨れ上がっていく。
更には“ネメシスガンド”も再召喚され、四基全ての熱線が創り出された光球へ浴びせられた。
“光”と“火”が混ざり合うようにして、巨大なエネルギー体を創り出す。これが、ルキフグスが使う術式の中でも最大威力を有する“プロヴィデンス・ノヴァ”。
こんなものが直撃したら、“赤い竜”のブレスどころの騒ぎではない。この渋谷の街もろとも、生き残った冒険者たちまで消し去ってしまうだろう。
今の植村なら、その凄まじさが見ただけで理解できた。だからこそ、必ず止めなければならない。
(……けど、止めれたところでどうする?ルキフグス本体をどうにかする術がなければ、根本的な解決にはならない)
植村は覚悟を決めたように、『神剣アガートラーム”を天に掲げた。大刃が元のサイズに戻るが、その“気”はより凝縮されたものとなる。
そして、始まる必殺の詠唱。
「その一念、あまねくを裂き天を断つ。我が一振りは至高なり、我が一振りに斬れぬものなし……夢を
【近接戦闘(刀剣)】がrank100に代わりました
【目星】がrank100に代わりました
【精神分析】がrank100に代わりました
『神剣アガートラーム』の刃が、透明な水晶のような見た目へと変貌していく。
今まさに、互いの“究極の術”と“至高の技”が激突しようとしていた。
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