報酬
「ユウトくん!大丈夫?」
真っ先に駆け寄ってきてくれた月森さんが俺のことを心配してくれる。さりげない行動だが、嬉しい。
「うん、何とかね。危なかったけど」
「良かった……これで、クリアできたのかな?」
「“ミッションクリア”の表示が出たから、そうだと思うんだけど……」
キョロキョロとフロアを見回すと、ポン!と宝箱が出現して俺は安堵した。ようやく、クリアを実感できる。そこに意気揚々と走って行って、朝比奈さんが笑顔で手を振った。
「ねーねー!開けていい!?」
「ははっ、良いよ〜」
「ありがとー!開けまーす!!」
まるで、小学生の男子みたいにはしゃいでるな。
でも、今回の影の立役者は彼女といっても過言ではない。敵の戦力を減らして、こちらの戦力にしてくれたのだ。その恩恵は大きかった。
宝箱なんて、何回でも開けさせてあげよう。
「えっ?何も、無いんだけど!どういうこと!?」
宝箱に頭を突っ込んでまで中身をチェックする朝日奈さんの報告を聞き、仲間たちも宝箱の周りに集まると確かに中身はスッカラカンの状態だった。
何かのバグかと困惑していると、新たなテキスト表示が宙に浮かぶ。
クリセイオーの剣
モラルタ&ベガルタ
グシスナウタル
アンキーレ・イレブン
メギンギョルズ
以上の秘宝を獲得しました
「これは……」
隣にいたコースケも、俺と同じことに気付いたようで先に口を開いた。
「なるほどな。あいつの使用した
「『アイテムボックス』の中には、まだまだ秘宝が残ってそうな雰囲気だったけど……手に入れられるのは、使われた秘宝だけか。それでも、十分だけど」
さすがは、レベル5の報酬だ。まさか、一気に五つの秘宝が手に入るとは。元々は
すると、レイジがチクリと一言。
「待てよ。だとすると、もっとユウトが敵の秘宝を引き出していたら報酬も増えていたんじゃないか?」
「うっ。あ、あのなぁ……あれ以上、新しい武器を出されてたらマジで危なかったんだぞ!?無茶、言うなよな」
「ふはは、冗談だ。しかし……思ったより、手強かったな。お前の決め技が破られるのを、初めて目にするところだったぞ」
元来、セーレの実力は適正な大公級だった。
しかし、幾多の冒険者を退け強力な秘宝を奪取していったことで、その総合力は王級に匹敵するほどまでに成長していた。
だからこそ、あそこまで苦戦を強いられたのだろう。
正直、エクストラスキルが発動しなかったら負けていたかもしれない。自分ではそれなりの強さに到達していたと思っていたが、この先の戦いを見据えるのなら更なるレベルアップが必要になりそうだ。
レベル6のダンジョン。そして新たな
出口の扉も出現して、アスカがパンと手を叩く。
「一人も
彼女の言葉にみんなが笑顔で頷くと、俺たちは全員が無事に現実世界へと帰って行った。
扉を抜けた先は、ネオ・カブキタウンの裏路地だった。入口の場所とは少し違ったところだったが、幸いにも周りに人はおらず助かった。
周囲を警戒しながら、神坂さんは軽く溜め息を吐いた。
「さっきまでハッピーな気分だったのに、戻って来る場所がムードなさすぎ」
それは、そう。ゲートって
「以上!これにて、配信を終了いたしまーす!!これから、色々なコンテンツを配信していく予定なので気になった方はチャンネル登録、いいねボタン、メンバーシップ加入よろしくおねがいしま〜す」
最後に自撮りで手を振り、投げキッスでライブ配信を終わらせる雪鐘さん。プロだ、プロがいる。
その様子を見て、委員長がボソッと呟く。
「そっか、ずっと撮られてたの忘れてた……急に、恥ずかしくなってきたんだけど。どうしよう」
「大丈夫、大丈夫!“本を持ってる子、可愛い”って、視聴者も言ってたよ?明智さん」
「ええっ!それは、それで照れるというか……なんというか」
てか、さらっと言ってたけど様々なコンテンツって何だ?変な動画を撮らされたりするんだろうか。
でも、これからギルドを正式に立ち上げるとなると配信は貴重な収入源となるだろう。ある程度のサービス精神も必要なのかもしれない。
「反応は、どうだった?俺たちの最初の攻略配信」
「上々も上々!最終的には視聴者数1万を超えてたし、チャット欄も良いコメントが多かった。アーカイブも残す予定だから噂が広がってくれれば、再生数も稼げるかも……スパチャもいくつか、貰ったからね」
「ま、マジか……」
確かに、うちのギルドは可愛い子が揃ってる。
これは、ひとえに女性陣のおかげといえるだろう。おまけに、みんなが強いというオマケ付き。
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