エクストラスキル

 エクストラスキル【王殺し】

 王級悪魔ロードを討伐した者にのみ与えられる特殊スキル。上位種悪魔との戦闘中に危急の事態に陥ることで発動。上位種悪魔(大公級悪魔グランド・デューク王級悪魔ロードまたはそれに追随する強さを持つ悪魔・魔物)に対しての、あらゆる攻撃手段に威力増幅の特効が付与される。




「うおおおおおおっ!!!」




 のち王級悪魔ザガンを討伐していたことによって特殊な悪魔特効スキルを授かっていた事実を知ることなるのだが……この時、俺はまだ自分の身に何が起こったかすら把握が出来ていなかった。

 ただあったのは、このとする強い意志のみだ。




 ギィン!!!




 力強く踏み込んだ植村はついに“ティタノマキア”のエネルギーごと黄金剣クリセイオーの刀身を、手にしていた双剣で斬り裂いてみせた。

 しかし、植村の“凶座相グランド・クロス”も敵の攻撃で威力が相殺されてしまった為か、セーレの身体に傷を付けるまでには至らなかった。




「まだだッ!!」




 折れてしまった黄金剣を投げ捨ててセーレが取った行動は……なんと、まさかの肉弾戦だった。

『メギンギョルズ』によって脚力と腕力が増幅された彼の攻撃は鋭く速く、避けた植村の鼓膜に敵の拳のスウィング音が響き渡るほどであった。


 それは、まるでボクシングのような華麗なフットワークとコンビネーションパンチ。セーレは、ただの秘宝コレクターではなかった。あらゆる武芸に長けた戦士だったのである。




「……雷気招来!」




 ただ、強敵たちとの死戦をくぐり抜けてきた植村もまた勝負所の嗅覚は研ぎ澄まされていた。

 即座に双剣を猫の姿に戻し、全身に雷気を纏って反射神経を格段に向上させる。




【虚飾】が、【近接戦闘(格闘)】rank100に代わりました




 人間でいえば軽くチャンピオンクラスはあるであろうスピードとパワーを誇るセーレの打撃に、超反応でカウンターを合わせていく植村。

 それは、“先即制人撃グングニル”と自ら命名した彼オリジナルの反撃技。魔人化した“猪狩ダイチ”を一方的に追い込んだカウンターアタックは、大公グランド・デューク相手にも有効に機能していた。


 更には、その打撃一つ一つにも【王殺し】の恩恵が乗っかって威力は増加されている。


 数発連続で打撃を打ち込まれたセーレは、堪らずバックステップで安全圏まで距離を取る。

 これ以上のダメージを負うのは危険だと、彼の本能が素早く判断を下させたのだ。


 そして、彼はすがる思いで空間の中に手を入れようとする。いや、正確には自分自身の『アイテムボックス』の中に。




 バンッ!!




 しかし、『アイテムボックス』の中へ手を入れ込む直前で、彼のてのひらに弾丸が撃ち込まれ


 それは、二匹の猫を今度は双銃モードに変えた植村による一撃だった。【虚飾】の代替を【拳銃(射撃)】rank100にチェンジしての白銃モラルタによる精密射撃が見事に彼の手を捉えたのだ。




 ズドンッ




 その手の痛みに気付いた時には、もう遅い。

 続く二射目・黒銃ベガルタの放った弾丸がセーレの心臓部に撃ち込まれた。

 撃つ直前に、しっかりと【目星】rank100を使って敵の急所を看破させていたこともあり、その弾丸はしっかりと大公グランド・デュークの息の根を止めてみせたのだった。


 いかに急所を貫いていたとはいえ、本来ならばその一撃だけでは大公たる彼は倒せていなかったかもしれない。


 しかし、今の“植村ユウト”が放つことで黒銃ベガルタの弾丸は悪魔特効を持つ『王殺しの弾丸』に昇華されていたのだ。





「これで……ようやく……私も……眠りにつけ……る……」





 不思議と最後は幸せそうな笑顔を見せて消滅していくセーレの姿に、植村は少し胸が痛くなった。

 それは、彼の見た目や言動が人間に酷似していたこともあったのかもしれない。

 しかし、やらなければやられていた。そう自分に言い聞かせて、彼は心を立て直したのだった。




 ミッション クリア




「まったく、ヒヤヒヤさせやがって……しかし、よくあそこから立て直したな。一体、何があった?」




 珍しく疲労困憊の表情で近付いてきたのはレイジだった。死霊軍団を召喚するのにも、精神力が疲弊されていくのだろう。そう思うと、本当に助けられたといえる。




「俺も、よく分からないんだ。急に、謎のエクストラスキル?みたいなテキストが表示されて」



「エクストラスキルか……それは、必要な条件を満たすことで入手できる“特殊スキル”のことだ。第二のユニークスキルとも呼ばれてたりするが条件を満たせば誰でも獲得できるもので、ユニークに比べれば性能は低いと言われている。まぁ、条件が厳しければ厳しいほどユニークに匹敵するような有能なエクストラスキルもあるという噂だが」



「相変わらず、そういう知識にはやたらと詳しいよな。お前は」



「ふん、冒険者たるもの当然だ。それで、お前が発現したエクストラスキルとは何だったんだ?一体」



「うーん……多分、悪魔特効スキル。的な?」



「多分って、お前なぁ。さらっと言いやがって……冒険者にとっては喉から手が出るほど、欲しくなるようなスキルじゃないか。それが、本当だとしたら。だが」




 そんな会話を悪友と交わしていると、俺たちのいた階層に仲間の女子たちが転送されてきた。

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