動物使い
植村の脳裏に浮かんだのは“朝日奈レイ”の【
【虚飾】が、【動物使い】rank100に代わりました
「来い!!」
それは一種の賭けだった。『モラルタ&ベガルタ』は猫の姿をしているが、その正体はれっきとした武器だ。動物という判定が出なければ、植村の【動物使い】は意味をなさない。
「「ニャー!!」」
だが、運は植村に味方した。『モラルタ&ベガルタ』は武器であり動物でもあったようだ。
二匹の猫はセーレの肩から勢いよくジャンプすると、彼の両手へ吸い寄せられるように飛び移ってきた。
万が一の事態に備えて、俺は“
「双剣モード!!」
無事に二匹の猫は、俺の両手の中で双剣へと変化してくれた。そのまま、セーレの放った斬撃を『モラルタ&ベガルタ』で受け止める。
これで、回避の負担が多少は軽減されるだろう。
「一度ならず二度までも、私の秘宝に手を出すとは……略奪者らしい戦い方だね」
「よく言うよ。元々、冒険者から奪った武器なんだろう?」
「正々堂々、決闘で勝ち取った報酬だ。キミたちと一緒にしないでもらいたいね」
【虚飾】が、【近接戦闘(刀剣)】rank100に代わりました
ギン!ギン!ギン!
双剣で斬撃を受け止めることによって、より深く間合いを詰めれるようになった植村は徐々に戦況を有利に進めていく。
『クリセイオーの剣』の効果で押仕込まれてはいたが、セーレ自体の力は脅威に値するほどではない。
いける!武器を手に入れた今なら……!!
「思った以上に、やる……だが!私にも、秘蔵のコレクションは残されている。まだまだね!!」
セーレは黄金剣を振るいながら空いた手を空間に突っ込むと、漆黒の布を取り出して自らの首にマフラーのように巻き始めた。
また新たな秘宝……本当に、無限に所持してるのか!?
メギンギョルズ
レベル4の秘宝。大いなる力をもたらす魔法の帯。身体の一部に巻きつけることで、その者の筋力や精神力を倍増させる。
「さぁ。ここからが、本番だ!」
ギィン!!
「ぐっ!?」
漆黒のマフラーはユラユラと、まるで“そのもの自体がエネルギーの塊”であるかのように揺らめいていた。
そして、そのマフラーを身につけた途端にセーレの斬撃は急激に威力を増した。更には黄金剣自体のパワーも増加しているような圧を感じる。
「気をつけろ、植村!そのマフラーみたいな布、使用者のパワーを上昇させるみたいだぞ!!」
コースケの声が耳に届いて、俺は剣を握る力を強めた。一撃一撃が重く、再びジリジリと押し戻されていく。気を緩めれば、一気に持っていかれそうだ。
いくら(刀剣)rank100にしているとはいえ双剣の扱いに関して言えば、実戦では初心者に等しい。
劣勢になってるのは、そうした練度の問題もあるのかもしれない。
「七星剣術・一つ星……
隙を突いて距離を取った俺が放ったのは、マコトがセーレの
クロスさせた衝撃波がセーレに迫るが、それを防いだのは飛来した二枚の大盾。
それは先程、彼が呼び出した秘宝『アンキーレ・イレブン』の二枚であった。
振り向くと盾を抑えてくれていたレイジの死霊軍団も半壊状態になっていた。俺が時間を掛けすぎてしまったせいで、二枚の盾の拘束が解けてしまったのだ。このまま十一枚全ての盾が戻ってきてしまったら、いよいよ攻め手が無くなってしまうだろう。
打開策を考える俺に、再びコースケの声が通話機能を通して響いてくる。
「ユウト!その盾は、俺が何とかしてやる!!」
「えっ?何とかしてやるったって、どうやって!?」
「ダンジョンポイントを稼ぐ為にも、少しぐらい良いところを見せないとな」
彼の姿を視界に捉えると、弾き落とされた自身の武器『ウォーハンマー』を拾い上げていた。
あの武器で、どうにかできるとは思えないが……。
「ウォーハンマー……オーバードライブ!レゾナンス・クエイク!!」
彼はハンマーを光り輝かせると、そのまま地面に叩きつけた。
オーバードライブ技というのは本来ならば武器の熟練度が高くなければ使うことはできないものなのだが、そもそも『ウォーハンマー』を作成したのは彼自身だ。つまり、生み出した時点でその武器を一番熟知してるといっても過言ではない。
だからこそ、熟練度が足りずとも特例で使うことができたのだ。
そんな彼の武器の“レゾナンス・クエイク”というオーバードライブ技も特殊なものとなっていた。それは、直接的に敵へダメージを与えるものにあらず。
フィールド上の武器に振動を与えて一定時間、全ての機能を停止させる。つまり、武器に攻撃を与えるオーバードライブであった。
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