攻略法

【虚飾】が、【射撃(拳銃)】rank100に代わりました



 バシュ!バシュ!!



 高い天井ギリギリを飛行するペガサスに『マナ・ブラスター』で攻撃するも、その素早い動きで全てを避けられてしまう。

【虚飾】効果で此方こちらの命中精度も遥かに上昇してるはずなのだが、セーレの騎乗技術が優れているのかペガサスの危険察知能力が高いのか、どちらにせよ遠距離攻撃の手段が少ない俺たちにとっては非常に厄介な相手であった。




「天空轟く稲妻よ、我らが敵に降り注げ!サンダー・ストーム!!」




 ペガサスにまたがったセーレは右手の黄金剣を天高く掲げて叫ぶと、彼らが辿った軌跡からランダムで稲妻が落とされていく。




「全員、回避ッ!!」




 ドゴンッ!ドゴンッ!!ドゴンッ!!!




 俺たちのいた床に強烈な落雷が何発も衝突しては、地面をえぐり取るほどの爆発を引き起こす。


 俺は自動回避で何とか、直撃をまぬがれる。


 三浦も、すぐに敵の軌道上から稲妻が落ちてくるシステムに気付き安全地帯を確保していた。




「うあああああっ!!!」



「コースケ!!」




 しかし、逃げ遅れたコースケが爆風に巻き込まれて吹き飛ばされてしまった。致命傷には至らなかったようだが、苦しそうに地面にうずくまっている。


 そこに一機のドローンが近付いていくと、緑色のビームのようなものを当て始めた。すると、みるみるうちに彼の火傷や痛みが治まる様子を見せた。




「ジッとしてて!今、この子の治癒光線ヒールビームで治してあげてるところだから!!」



「あ……朝日奈か。あ、ありがとう……うぅ」




 回復行為に気付いたのか空中を旋回していたセーレは突然に舵を切って、ペガサスを急降下させると倒れたコースケに向かって剣を構えた。




「させるか!!」




 ギィン!!




 瞬時にコースケの前に立ち塞がった俺は、『銘刀残光』で急降下によるセーレの強烈な斬撃を受け止めた。その瞬間、俺の刀は脆くも崩れ去ってしまう。

 無理もない。おそらくは、あの黄金剣も秘宝なのだろう。対して、こちらは元は玩具オモチャというヒトが作った武器……むしろ、ここまで良く耐えてくれたといえるだろう。




 クリセイオーのつるぎ

 レベル5の秘宝。妖精王の力を秘めた黄金剣。

 周囲のマナを吸収して、斬れ味を増すことが出来る。また、周囲の術式の威力を上昇させる効果も併せ持つ。




 植村の刀を破壊したセーレは少し上昇すると今度は白猫モラルタだけを拳銃化させ、空いていた左手に握り中距離射撃による追撃を行ってきた。




 パン!パン!パン!




 最初の二発は躱せたものの、最後の一発が脇腹に命中してしまう。疲労による体力低下が、回避運動についていけなかったのだ。




「う……ぐぅ!!」




 焼けるように痛い。今すぐ、この場にうずくまりたいほどに。しかし、そんなことをすれば命は無い。

“死にたくない”というアドレナリンだけが、何とか俺をこの場に立たせていた。


 そこへ、割り込んできたのは『グシスナウタル』。

 いまや完全に“朝日奈レイ”の新たな手足ドローンとなった機動兵器は八面六臂はちめんろっぴの活躍でセーレに牽制射撃を行うと、彼を再び上空へと後退させることに成功したのだった。


 しかも、その間にコースケの治療を終えた一機が此方こちらへと飛んで来て、今度は俺に治癒光線ヒールビームを照射してくれる。

 すると、皮膚にめり込んでいた弾丸が機械に吸い出されるように抽出され傷も塞がると、痛みまでも治っていく。原理は全く分からなかったが、おかげでまた万全な状態で戦うことが出来そうだ。


 とはいえ、俺は久々に恐怖に近い緊張感を覚えていた。実際にダメージを受けたことも大きいが、純粋に相手が強いのもあるだろう。さすがは悪魔序列二位の大公グランド・デュークといったところだ。


 実際、どうする?こっちは、武器を失って七星剣術も使えない。空中戦では、まともに戦えるすべが無い。まずは、地上戦に引き込む必要があるだろう。


 俺が敵の動向を伺っていると、セーレは再び黄金剣を天に構える。それを見て、俺と三浦はすぐにまた稲妻攻撃がやってくることを察知した。

 俺らのように少しでもゲームをかじってきた人間ならばゲームなどで散々、体に染み付いている。敵の予備動作を覚えて、次に来る攻撃を予測して回避行動を取るという定石が。

 それは、このゲームのようなリアルな世界のモンスターが相手であっても変わらなかったようだ。




「式守、部屋の隅へ移動しろ!そこなら、稲妻の落ちてこない安全圏だ!!」



「わ、わかった!!」




 三浦の助言で部屋の隅へと避難する二人。敵の稲妻攻撃はペガサスの飛行経路をなぞるようにして落ちていく。部屋の隅ならば大きな翼が邪魔をして、そもそも経由することが出来ない安全地帯というわけだ。

 そういうところでは、三浦の頭の回転は本当に早い。委員長の【最適解】にも負けずとも劣らずといった感じだ。


 感心してる場合ではない。俺は、自動回避で落雷を避けながら『マナ・ブラスター』にありったけの雷気を込めた。行動パターンが読めたところで、反撃できなければ勝利することができない。

 密かに朝日奈さんと通話を交わし、起死回生の策を最速でミーティングする。

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