指揮官
周囲を高速で旋回する朝日奈のドローンを、まるで虫でも捕まえるように片手でキャッチするとそのまま一機を握り潰して、残る一機を鎌で真っ二つに切り裂いてみせるバズヴ。
「うそ……機械の動きも、先読みできんの?」
いつも明るく笑顔を絶やさない朝日奈も大切なドローンを破壊されたことに、ショックを隠せない様子だった。普段のダンジョンならば外に出ることで復元してくれるのだが、このダンジョンではアイテムの損失は補填されない。
「このっ!!」
そこへ、壁を強く蹴った反動を利用して神坂が強烈な飛び蹴りをバズヴへ見舞おうとするも当たる直前で彼女の足首は掴まれ、大きくスイングされながら地面へと投げ飛ばされてしまう。
「ナオ!!」
あわや地上に激突する直前の神坂を救ったのは、月森の伸ばした『ハスター・リボン』だった。
瞬時に彼女の腰にリボンを巻きつけ引き寄せながら、衝撃を緩めたのである。
「オオオオオオン!!」
すると、フロア中に獣の咆哮が響き渡る。
馬車から飛び降りたモリガンが、マルコシアスに二本の槍を突き刺したのだ。背中に杭を打ち込むように自らの武器を押しつけるたび、悲痛の叫びをあげていたのだった。
その横を馬を駆けて通り過ぎていくマッハは今度は炎の弓を作り出して、次々と七海と龍宝に向かって火の矢を放っていく。
「くっ!」
連続使用ではすぐに次の奇跡を発動できないサクラを守るようにして、七海がライフルで襲いかかってくる矢を撃ち落としている。
そんな様子を見守っていた男性陣は、透明な床越しで
その中でも三浦は一層、深刻な表情で呟く。
「まずいな。このまま、乱戦状態が続くようだと……全滅も、ありえるぞ」
「えっ!?」
「
「必然的に、戦える人が戦えない人を守ってあげなくちゃいけなくなるのか……」
「そうなると、防戦一方。相手の良いように攻められて、ジリ貧となってしまうだろう」
冷静に戦況を分析するレイジに、コースケが突っかかっていく。
「そんなクールに語ってる場合かよ!俺たちで、何か助けてやれることはないのか!?」
「いや。そろそろ、動き出してくれるだろう。この戦況を打破してくれるキーマンが、な」
三浦がそう言った瞬間、“明智ハルカ”は【最適解】による脳内のトライ&エラーを終えた。
この戦況をひっくり返す最短ルートを導き出し、グループ通話を使って各個人に指示を始める。
「上泉さん!ワンちゃんにくっついてる赤髪の敵を引き離せる!?」
「了解!あの子を助けてあげればいいんだね!?」
「うん!お願い!!」
気を溜めた脚力で高く跳躍した上泉は、マルコシアスの身体に傷つけないような角度を狙ってモリガンに向けて二本の剣を振るった。
「七星剣術・一つ星……
バツの字に折り重なった衝撃波が向かってくると、モリガンはマルコシアスに突き刺していた二本槍を抜き、その斬撃を迎え撃って切り裂く。
その
そのまま追撃して、二人は激しい剣戟を繰り広げていく。モリガンの二本の槍と、上泉の大太刀と小太刀が火花を散らす。
その様子を見て、明智は次に龍宝へと指示を与えた。
「龍宝さん!ワンちゃんの怪我を治してあげられる!?」
「はい、できます!任せてください!!」
七海がマッハの猛攻を迎撃してる間に負傷したマルコシアスに近づき“癒しの光”を当て、治療を開始する龍宝。
それと同時に明智は手にしていた『ヘプタメロンの魔導書』を開き、とある精霊を召喚する。
「明智ハルカが命じる!水の底より現れ出でよ、蒼き
魔法陣が彼女の足元に展開され、召喚されたのは魚のヒレや鱗などが全身に付いた青い美麗な馬だった。明智がケルピーに指示を飛ばすと、
その途中でマッハの放つ火の矢に当たるも、ケルピーの身体に刺さった火の矢の方が逆に消え去っていく。ケルピーの全身には水気が纏われており、一切の火属性攻撃を受け付けなかった。
「七海さん!その精霊を使ってください……あなたなら、乗りこなせるはずです!!」
「なるほど、そういうことね……ありがと!「シルエット・ワン、“
七海アスカの【七変化】、“
バイクであろうと、車であろうと、ヘリであろうと、動物であろうと、精霊であろうと……それが乗れるものならば、全てのものにその効果は適用されるのだ。
ふわりと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます