LV5「黒薔薇宮殿」
狭い路地で準備を整えている中で、マコトが思わず不安を口にする。
「でも……本当に、僕らだけで大丈夫なのかな?大手ギルドでも偵察隊を送るくらいのダンジョンだよね、レベル5って」
その質問に、真っ先に答えたのは周防さんだった。
「せやけど、レベル5はランダム出現のゲートもあるらしいことが分かってからは、偵察隊の派遣はやめとるらしいけどな。どの大手も」
「ランダム出現……?」
「うん。本来、ゲートっていうのは出現してから誰かに攻略されるまで、定位置で固定されるものなんやけどな?レベル5に限っては一度誰かが失敗してしまうと、その場から消えてしまうらしいねん」
「えっ!?そうなの?」
さすが、元『漆黒の鎌』所属の冒険者。そういう情報はいち早く耳に入れているらしい。
その会話を聞いていたアスカも、同調して話に加わっていく。
「そう。だから、何度か偵察隊が無駄になっちゃったことがあったらしくて。それから、レベル5に挑む時は最初から主力部隊を派遣するって方針に舵を切ってるみたい。もちろん、レベル5の中にも固定で残り続けるゲートもあるはあるみたいなんだけど」
「偵察して中の様子を探れたとしても、次また同じゲートを日本のどこかで発見して攻略に乗り出せる確率なんて極めて低い。そんなこんなで、ぶっつけ本番攻略が主流になったんやけど……それが、余計にレベル5の難易度を跳ね上がるってゆーね」
アスカと周防さんの元同僚コンビが溜め息混じりにボヤいた。ただでさえ最難関といわれているレベル5を何の前情報もなしに攻略しろと言われれば、確かに頭が痛くなる問題だ。
ゲームのように死に戻りして攻略法を編み出すことも不可能。一度きりのチャンスを、必ずモノにしなければならないわけである。
深刻な気分になってきた俺に、意外とあっけらかんとしているコースケが一振りの刀を差し出してきた。
「近接武器、無いんだろ?良かったら、これを使えよ。秘宝に比べりゃ、
「これって……マコトにも、貸してたやつ?」
「おう、『銘刀・残光』だ。俺の作品の中じゃ、一二を争う斬れ味を誇ってる。モブの武器よりは、使えると思うぜ」
「ありがとう、コースケ。ありがたく、使わせてもらうよ」
実剣は使い慣れてないが、これで七星剣術が使えるようになったのは大きい。徒手格闘と銃撃だけでは、どうしても攻撃が単調になってしまうからだ。そんな様子を見ていた三浦が、横槍を入れてくる。
「お、良いじゃないか。俺にも、何か武器を貸してくれ。レベル5にテーザー銃だけで挑むのは、さすがに不安だからな」
「え〜、参ったな。そんなに、持ってきてねーんだけど……こんなもんで、良ければ」
そう言って、彼が後ろのポケットから取り出したのは黒い小型拳銃だった。それを躊躇なく受け取った三浦は、手慣れた様子でスライドを引き素早く銃口を俺に向けて構えた。
「コルトガバメント……いや、少し違うか?」
「そいつは、ただの水鉄砲だよ。俺のユニークスキルで、実銃に進化させたものだ。既存の物に似ているのは、そういった形が俺の中のイメージにあったんだろう」
「なるほどな、悪くない……気に入った!俺が、買い取ろう。売り物なんだろ?」
「別にいいけど、安くないぜ?」
「構わん。貯まった
なんか、殺し屋みたいな会話しとるな。これも一種の厨二病というやつか?知らんけど。
「てか、妙に手慣れてるよな。銃の扱い」
「ミリタリー好きだからな、サバゲーも趣味でやってた……と、言っても格好だけだが。実際に、命中できるかどうかは分からん」
「へ〜。見た目は、サマになってるけど」
「ま!どのみち、俺は後方支援だ。自衛の役割を果たせれば、十分さ」
銃がかっこいいというのは、俺も分かる。
なので、サブ
そんな男の談義に花を咲かせていると、うちの実質的リーダーが声を掛けてきた。
「男子諸君、準備は終わったかね?キミたち待ちなんだけど」
「あっ、はい!終わりました!!」
「おっけー!じゃあ、ギルマス……最初に、ゲートをくぐってもらえる?」
「…………あ、俺か。ギルマス」
「アンタしか、いないだろ」
アスカがギルマスよりギルマスすぎて、自覚を持つのを忘れていた。
そして、俺は黄金色に輝くゲートの前に立つ。
やはり、何か独特な威圧感がある。
みんなの期待を背中に感じて、俺は意を決して一歩を踏み出した。
そして、ゲートをくぐった先にあったのは……。
「こ、ここは……」
一面、黒い薔薇の花が敷き詰められた広大な花壇の後ろに、アラビアンな宮殿が建っていた。
その宮殿もまた、ところどころ黒で装飾されており荘厳と言うよりは何か不気味な雰囲気を漂わせている。
そして、後ろから次々と仲間たちがゲートを通じて、俺のいる場所へと転送されてきた。
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