首脳会議
次の日から早速、俺は行動を開始した。
帰ってすぐに『ダンジョン・サーチ』をチェックしたところ、二週間後の都内近郊にレベル5のゲートが出現するという予報を確認した。
バトルミッションらしいのだが、入手できる秘宝の欄が“詳細不明”とされていた。高レベル帯のゲートだと今までも、ちょくちょくそうした表示が現れていたので何か特別なパターンで秘宝が手に入るのかもしれない。何にせよ、今回はお宝が目的ではない。
第一目的は、コースケにダンジョンポイントを稼がせることにある。俺の
そういった
そういった意味では、俺が潜在的に一番頼りにしている冒険者なのかもしれない。
「レベル5か……
「初陣?」
「『アルゴナウタイ』のメンバーを招集して、ギルドとして挑む最初のダンジョン……に、しようと思ったんだけど。どうかな?」
「あぁ!良いかも。どのみち、それぐらいの
がっつりとしたハンバーグ定食をナイフとフォークで切り分けて、小さな口に運んでいくアスカ。
しっかり、紙のエプロンを装着してるのも愛らしい。
「優秀な人材が揃ってるから、大丈夫だとは思うけど。ただレベル5となると、最低でも二桁の人数は欲しい……せっかくだし、スカウトしたい人材にも一気に声を掛けてみようか」
「了解。その人選は、俺の独断で決めちゃって大丈夫?」
「ギルドマスターだし、良いんじゃない?分かってると思うけど、無所属の子限定ね。基本的に、ギルドの掛け持ちは協会が許してないから」
「うん。無所属の中で、心当たりのある子を誘ってみるよ」
「おっけー。じゃあ、既存のギルメンには私から声を掛けとくか。えっと〜!神坂さん、雪鐘さん、サクラ、上泉くん、月森さん……だっけ?」
「そうそう。俺らを含めて、7人だから……最低でも、あと3人は必要ってことか」
前衛が多めにいるから、後衛を厚くしたいな。
それに、雪鐘さんは“ストリーマー”だから実際の戦力にはカウントできないわけで……ん、そうだ!
「せっかくだから、ダンジョン攻略のライブ配信もやってみるのはどう?」
「おっ、いいね〜!初配信がレベル5だなんて、話題性は抜群でしょ。あとは、なるべく雪鐘さんあたりに事前告知を拡散させてもらって……『アルゴナウタイ』のアカウントも、立ち上げないとか」
「なんか、一気に盛り上がってきたね」
「うんうん。ずっと水面下で進んでたから、こうやって現実的に行動を開始するとなると、いよいよ実感が湧いてくるよね。まぁ、正式には申請できてないんだけどプレオープンみたいな感じでアリっしょ!」
俺の光剣を直す目的で始めたわけだけど、なんか急にワクワクする一大イベントになってきた。オンラインゲームじゃなく現実世界にギルドを立ち上げるって、こういう気分なのか。
期待に胸を膨らませながら目の前にある“ふわとろオムライス”を頬張っていると、アスカが話を変えてきた。
「そういえば、ユウトさぁ」
「ん、なに?」
「『フギン・ムニン』の子と、仲良いの?」
「へっ!?ごほっ、ごほ……!」
あまりに唐突な質問を浴びて、オムライスが変なところに入ってしまった。彼女は、冷静に俺の前へ水の入ったコップを差し出すと。
「後夜祭の時、一緒にいなかった?なんか急にゲリラライブが始まったと思ったら、最後にユウトが出てきてアイドルを連れ去っていったから驚いちゃったよ」
そういや、アスカも天馬先輩と後夜祭を回るとか言ってたな。あれだけ騒ぎになってれば、そりゃ見られてるか。ここは、素直に説明しておこう。
「いやぁ、実は冒険者友達なんだよね。お忍びで、勇凛祭を案内することになってたんだけど。まさか、あそこで歌い出すとは俺も思ってなくてさ〜」
「マジ?『フギン・ムニン』とも面識があったとはね……それで、ただ案内してあげただけ?」
「も、もちろんだよ。それ以外に、することないし」
いや、言えない。その後、自分の寮に連れ込んで一夜を共にしたなんて。共にしたと言っても、ただただ一緒のベッドで眠っただけで何もやましいことはしてないのだけれど。
それを説明して、信じてもらえる可能性の方が少ないだろう。あらぬ誤解は受けたくない。
そう。結局、あの後は俺が悶々とした気分で眠れないまま朝を迎えて、普通に彼女を送り出した。
冷静に考えればまだテンは中学生だし、変なことは出来やしない。単純に俺の
「ふーん。そっか〜」
明らかに怪しんでる感じだけど、ここで弁明したら余計にドツボに入りそうなのでやめておく。
そっちこそ、天馬先輩とは何か進展したのか……と聞いてやりたくはなったが、そんな勇気はなかった。これが、嫉妬の気持ちというヤツなのだろうか。
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