第 14 章 アルゴーの船出
進化
一大イベント・勇凛祭を終えて季節は冬を迎えようとしていた頃、俺はとある学生店舗に足を運んでいた。
『式守武器店』。ユニークスキル【鍛冶屋】を持つ式守コースケが経営している武器専門店である。
「これは……確かに、力が失われてるな」
「うん。なんとか、コースケのスキルで直せたりしないかな?」
「う〜ん。一番、手っ取り早いのは『魔剣ダインスレイヴ』を破壊することなんだけどな。それが、力を奪った原因だとしたら」
「今はまた学園の宝物庫に管理されてるから多分、無理。だから、ここに来たってのもあるし」
そう考えたら、猪狩くんから奪い取った時に破壊しておけば良かったのか。さすがに学園の財産となってるものに、手を出すことはできないけど。
「結論から言わせてもらうと、修復は出来ない。俺のスキルで出来るのは、武器を進化させることだけだからな。そんでもって、普通のやり方じゃ“秘宝”は進化させることすらできない」
「普通のやり方ってことは、そうじゃないやり方なら秘宝でも進化させられる!?」
「うっ。まぁ、そうだけど……ご希望は、修復なんじゃないのか?」
俺はテーブルの上に置いた『光剣クラウ・ソラス』を見ながら、自身の本音を語った。
「うちの父親、ずっと海外赴任で家にいなくて……息子なのに、ほとんど面識が無いんだよ。この秘宝は、そんな父親が俺にくれた唯一のプレゼントなんだ。そりゃあ修復できるなら修復したいけど、使えなくなるぐらいなら進化させて、例え形が変わってでも使っていきたいと思ってる」
「……なるほどな。それだけの思い入れが客にあるのなら、答えてやるのが一流の武器屋ってもんか」
「コースケ!」
「答えてやりたいんだが、問題が一つ。秘宝を進化させるには、膨大なダンジョンポイントを支払って“特殊進化”を実行する必要があるんだ」
なるほど。それが、普通じゃないやり方か。ダンジョンポイントが必要というなら、ダンジョンに連れて行ってあげればいいだけなのか……?
「必要なダンジョンポイントは、どれぐらい?」
「ざっと、5万ってとこだ。ダンジョンで言うとレベル的にはLV1なら50回、LV2なら25回、LV3なら10回、LV4なら5回、LV5なら1回……その回数分だけ潜って、更に活躍できれば早く貯まるぐらいの数値。どうだ、無理ゲーだろ?」
確かに、無理ゲーだ。普通の冒険者ならば、まずそれだけの数のゲートをお目にかけること自体が珍しいことだろう。
ただ、俺には『ダンジョン・サーチ』がある。
「つまり、コースケをレベル5のダンジョンに連れて行って、そこそこ活躍させてあげられれば良いわけだ」
「まさか、お前……レベル5のゲートにまで、心当たりがあるってのか?ダンジョンのコーディネーターかよ!?」
「あるっちゃ、ある。見つけたら、一緒に潜ってくれる?」
「それは、もちろん。こっちとしてもタダで経験値稼ぎが出来るのは願ったり叶ったりだ。けど、レベル5となれば、それなりの攻略人員は必要となってくるぞ。そのアテはついてるんだろうな?」
レイドバトルか。知り合いに声を掛けまくれば、10人ぐらいはすぐに集められるだろう。ただし、参加してくれるかどうかが問題なのだが。
「こうみえて、人脈は広い方なんだ。そっちも、なんとかしてみるよ」
「なんとかしてみるって……お前、本当に謎が多い奴だよな」
「えっ!?そ、そうかな……?」
「そうだろ。やたらと強かったり、顔が広かったり、ポンポンとゲートを見つけてきたり……はっ!お前、まさか!!」
「な、なに?」
「
近からずも遠からず。実際に、今の世界ならそういうユニーク持ちがいてもおかしくなさそうだ。
ただ、俺の場合は特典付きのニューゲームぐらいの感じだったけど。
「してないよ、変な妄想を膨らませないでくれ。あ!ちょっと、ニュース見ていい?日課なんだ」
とはいえ、これ以上に追求されても面倒だ。
俺はテレビのアプリを起動させて、立体映像でニュースを見始めた。これで、話題を転換しよう。
実際、冒険者に関わるニュースも多いので、こまめにチェックするようにはしている。
「ニュースの時間を気にする高校生なんて、いないぞ?はっ!やはり、お前……人生何周目かなのかっ!?」
逆効果でした。いっそ、本当のこと話したろか。
『続いてのニュースです。中国・
「ウォン・マクドゥーガル……?」
『研究所の壁には悪魔のシルエットに七つの星があしらわれた黒のカラーペイントが施されており、専門家の間ではテロリスト集団のマーキングではないかという考察が……』
そのニュースを見て、コースケも反応を示す。
「冒険者科学の
テロリスト集団って、まさか……な。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます