傍観者
指先の感覚が無くなってきた。この魔剣、今度は俺の身体を乗っ取るつもりなのか!?
おそらく俺の属性は“雷”、闇の耐性は持っていない。何らかの対策を講じなければ今度は自分が新たな“辻斬り”とされてしまうだろう。
【精神分析】や【ヒプノーシス】を使って、精神にプロテクトを施すか?いや、ここは……!
【虚飾】が、【近接戦闘(刀剣)】rank100に代わりました
すると、魔剣から流れ込んできた黒い障気がピタッと止まり、そのまま一気に元のダインスレイヴの中へと引っ込んでいく。
(刀剣)rank100とは、刀剣技術の向上のみにあらず。全ての刀剣を制御し、自らの身体の一部として扱う達人の極致。植村は人に秘められた技能の最たるをもって、闇からの支配を上回ってみせたのだった。
「おい、大丈夫か?」
そこへやって来たのは、着けていたネクタイを緩めながら電子タバコを吸う風紀委員会の顧問・朝倉シンイチ教諭であった。
植村は暴走が収まった魔剣を彼に差し出し、答える。
「ダインスレイヴは、取り戻しました。ただ、気をつけてください。この魔剣、隙あらば人の身体を乗っ取ろうとしてきます」
朝倉教諭は胸ポケットから六芒星の記された黒皮の手袋を取り出し両手に装着すると、慎重に植村から魔剣を受け取った。
「だいぶ、人の血を吸ってる。そりゃあ、呪いの力も強まるわけだ。よく耐えられたな」
「えっ!?えぇ、まぁ……何とか。はは」
探りを入れるような瞳で俺のことを見つめてくる彼に動揺していると、風紀委員の二人が駆け寄ってきて何とか難を逃れる。
「朝倉顧問!」
「牛久、周防。確か、お前たちには巡回業務を言い渡していたはずだが……これは、どういうことだ?」
「うっ……申し訳ない。いてもたっても、いられず。彼らに協力してもらい、犯人確保に乗り出してしまいました」
「やれやれ。正義感が強いのは良いことだが、今度からはやる前に報告しろ。今回は、たまたま上手くいったから良かったものの、失敗していたら大惨事になっていたかもしれないんだぞ」
至極真っ当なお叱りを受け、シュンとする二人を見て朝倉顧問はポリポリと頭を掻きながら周囲を見回してボヤいた。
「おまけに、派手に暴れやがって。ヒーローショーかよ。目立って、しょうがねぇ」
「や……やはり、気付かれてしまいましたか!?一般客たちに」
「安心しろ。戦闘が激化する前に“人避けの結界”を、ここら一帯に展開させておいた。一般人は寄り付かなくなって、結界内の様子も目視できなくなっていたはずだ」
「おお!さすがは、顧問。感謝いたします!!」
ん、待てよ。と、いうことは……少し前から、戦闘の様子を観察してたってことか?なんか、探りをいれられてたみたいで嫌だな。見てたなら、早く加勢に来て欲しかった。
「だが、そろそろ結界の効果も切れる頃だ。とっとと“猪狩ダイチ”の身柄を拘束して、ずらかるぞ」
牛久くんは黙って頷くと、倒れ込んでいた猪狩くんの体をヒョイっと自身の肩に担ぐ。
「協力者の植村たちは、いかがします?顧問」
「個人的に聞きたいことなら山ほどあるが……今は、解散でいいだろう。見たところ、怪我もしてなさそうだしな」
「……だ、そうじゃ。後の始末はワシらに任せて、おぬしらは勇凛祭に戻ってよいぞ。協力、誠に感謝する!」
そういって、
残された俺は、再びクラウ・ソラスの
「……ユウト、平気!?それ、壊れちゃったの?」
心配そうに近寄ってきたのは、今回の影の立役者・テンだった。正直、俺一人ではもっと苦戦を強いられていたであろうことを考えると、彼女の存在は本当に大きかったといえる。
「あぁ、うん……でも、大丈夫。それより、テンこそ怪我はない?」
「私も、全然……」
その時、何かの気配を感じたのかピタリと動きを止めたテンは持っていたクナイを何もない壁に向かって
すると、そこから人間が浮かび上がってくる。
投げ込まれたクナイは驚くべきことに、全てその人間の指の間でキャッチされていた。
『
「マジか、バレんのかよ……大した感知能力だね」
「
「『
「えっ、なに……厨二病?」
テンよ、悪の組織にそれは言ったらあかん。
てか、『
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